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星影ロンリーハート  作者: CoconaKid
第七章 その事を知っても気持ちは変わらなかった
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 外では、プリンセスが表庭に入って毛づくろいをしていた。

 二人が一緒に出てきたのを見ると、動作を止めてじっと見つめている。


 そして「ニャー」と口を縦に大きく開けて何か喋ったみたいに鳴いた。


「また、後でな」


 将之はプリンセスに挨拶をしてケムヨを車まで引っ張っていった。


「ちょっと、一体どうしたのよ。なんかあったの?」


 どことなく張り切った様子の将之にケムヨは首を傾げた。


「あったけど、気にしないことにした。俺は俺だし、ケムヨはケムヨだから」

「えっ? 一体何のこと?」

「いいから、早く車に乗れよ」


 ケムヨは圧倒されて、言われるままに車に乗り込んだ。


 将之は一度息を吐いて気持ちを調え、前後左右を確かめてから車を動かす。

 ここまでケムヨは勢いで付き合ってしまったが、少し走ったところで聞いてみた。


「あのさ、いつ星を一緒に見るって約束したっけ?」

「料理とワインをご馳走になった日だよ。あの時ワインを飲みながら一緒に星をみようって話になって、ケムヨもわかったって言ったじゃないか。忘れたのか?」


「えっ? そんな話になったっけ? でもどこで見るのよ?」

「俺んちのバルコニーだよ」


「えー! 将之の家。うそ、私そんなこと約束していない」

「おい、今更なんてこと言うんだ。まあいい、とにかくそういうことで、今日はワインも用意してあるんだ。つべこべ言わずに来い」


「来いって言われても、もう無理やり連れて来られてるし、拒否権ないじゃないの」

「いつも自分から酒飲めって俺を誘ってる奴が、俺の誘いは断るつもりか?」


「私、いつ酒飲めって誘ったのよ。いつも将之が強引に来てるだけじゃない」

「じゃあ、だったらケムヨも強引に来たらいいじゃないか。いつもの酒に対する俺のお礼だ。それくらいしたっていいだろ」


「えっ?」


 ケムヨはこれが厚意でやってることなのかと思うと、それ以上は何も言えなくなった。


 言い争いも心なしか楽しく感じる。

 まあいいかと最後には投げやりになっていた。


「今日は晴れてるから、星が見える。天の川も見えるだろうか」


 将之がポツリと言った。


「天の川か。見えるといいよね」

「ああ」


 ケムヨはまだ薄明るい空を車の窓から見つめる。

 どれだけの星がこの空にあるのだろうと想像すると、とてつもない宇宙空間の大きさになんだか恐れをなしてしまいそうだった。


 沢山の星がある。

 それと同じようにこの地球上にも沢山の人間がいる。


 それなのに、ケムヨはこのとき将之という一人の男の側にいた。


 宇宙空間を想像した後では、こんなに大きな世界の大勢の中からその一人と出会って一緒に居る事がなんだか奇跡にも思えてくる。


 運転する将之の横顔をそっと見てみた。

 相変わらず神経質そうに前をしっかり見据えて運転している。


 でもその表情がなんだか男らしく頼もしい。


「なんだよ、文句でもあるのか?」

「なんでいつも突っかかるのよ。かっこいいなって見てただけじゃない」


 ケムヨは冗談でも言うように軽く言ってみた。


「えっ?」


 突然のケムヨの言葉に将之はハンドルを握る手の力が抜けて、弾みでがくっとハンドルが横に動いた。

 すぐ元の位置に戻したが、その時車が道を外れるようにぶれた。


「ちょっと、しっかり運転してよ」


 ケムヨはひやっとしてしまう。


「ご、ごめん。大丈夫か。すまなかった。ちゃんと運転するから心配しないでくれ」


 いつも以上に将之が焦っている。

 こんな慌てた将之を見た事がないと、ケムヨは不思議な顔をした。


 それから将之は自分のマンションにつくまで黙り込んで一層慎重に運転していた。

 着いて車を停めた時、将之が異様に汗を掻いていたのでケムヨは驚く。


「どうしたの、将之? 気分でも悪いの」

「いや、その、事故を起こしそうになったから、なんか怖くなってしまって」


「全然大丈夫だったけど。そんなに気を遣ってくれてたの?」

「当たり前だろ。大切な人を隣に乗せてるんだから」


 以前にも同じことを言われたが、ここまで気を遣われると、なんだか自然と笑みがこぼれた。


「ありがとうね」


 ケムヨの言葉で将之は落ち着き、車から降りると早く来いとせかす。

 またいつもの将之に戻っていた。


 ケムヨは、言われた通りその後ろを着いていった。

 将之の背中が妙に広く頼もしく見える。


 駐車場がマンションの近くにないために、少し離れた道路沿いの脇に車を置いて、二人は都会のビルに囲まれた街の中を歩いていた。


 所々に街路樹が植えられ、暗くなりかけたこの時は、街灯の光に照らされて淡くぼやっと立っていた。

 見知らぬ景色がなんだか楽しい気分にさせてくれる。


 そう思ったのは将之が側にいるからだろうか。


 何を馬鹿なことを考えているんだと頭では思ったが、体は正直に心地いいと安らぎ、自然と小走りに将之を追いかけ、ケムヨは将之と肩を並べて一緒に歩いていた。

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