詩小説へのはるかな道 第53話 古書店の跡継ぎ
原詩:跡継ぎは猫 ー 絵本のような詩
街角に住む一匹の猫
友だちの雀と遊びながら 古書店の前で日向ぼっこ
本の匂いが漂う店先は 猫にとって小さな楽園
ある日 古書店の主が猫に言う
「この店の跡継ぎにならんかね」
猫は驚きながらも 店の奥へ
並んだ本棚 積み重なる古書 そして静かな空気
猫はそのすべてを 宝物のように受け止めた
主は頑固で 誰にも心を開かない
客が来ても 短い言葉で本を渡すだけ
猫は静かに寄り添って 見上げて「にゃー」とご挨拶
そんな仕草が 主の心をほどいてく
雀は窓辺で歌い 店に柔らかな音を添えていた
やがて 偽りの跡継ぎを名乗る犬 登場
「この店は俺のものだ」と吠えては 棚を荒らしだす
主はとまどい 猫は引っかき 雀はつつく
「跡継ぎは猫じゃ」「僕が跡継ぎ」「わたしは跡継ぎの友だち」
犬は去り 店には再び静けさが
季節が巡り 春の光が店先を照らす
猫は看板の上に座り 雀は隣で鳴いている
老人は微笑みながら お客さんに声をかける
「どうぞ ゆっくり見ていってください」
その言葉は 猫と雀がもたらした 新しい風のよう
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詩小説: 古書店の跡継ぎ
街角に住む青年は、仕事を終えると毎日、その古書店に通った。
安い給料なので、多くの本を買うことはできなかったが、選び抜いて月に数冊は購入した。
本の匂いが漂う店先は、青年にとって小さな楽園だった。
ある日、古書店の主が青年に声をかけた。
「おまえは、この店の跡継ぎになるのだ」
主には身寄りがなく、何か月も彼のことを観察していた。
青年は驚きながらも、店の奥へと招かれた。
埃をかぶった棚、積み重なる古書、そして静かな空気。
青年はそのすべてを、まるで宝物のように受け止めた。
彼もまた身寄りがなく、戸惑うことなく会社を辞めた。
主は頑固で、誰にも心を開かない老人だった。
客が来ても、短い言葉で本を渡すだけ。
青年は、ただ静かに寄り添い、丁寧に本の整理を続けた。
その仕事ぶりに、老人の心は少しずつほどけていった。
その古書店には、世に知られていないはずの小さな秘密があった。
三十年以上昔、今では世界的に高名な作家が客として通っていた。
彼は百部限定の自費出版をし、そのうちの五冊に署名して主に渡した。
「僕が有名になったときには高くなるだろう。出世払いだ」
それまでに溜まったかなりの付けの代わりにしたのだった。
主は売ることなく、今もその五冊を大事に保管している。
男は突然やってきた。
「XXの自費出版本があるんだろう。いくらでもいいから売ってくれ」
男は息を荒げ、札束を机に叩きつけた。
「これだけあれば十分だろう。あの五冊を渡せ」
老人は黙って青年を見た。
青年は棚の奥に眠る箱を思い浮かべた。
そこには、署名された五冊の本が静かに眠っている。
「売るんですか?」青年は問うた。
老人は首を振った。
「金のためにあるのではない。XXが自らの才能にかけた誓いの証だ」
男は苛立ち、声を荒げた。
「誓いの証? くだらない。世の中は値段で決まるんだ」
青年は一歩前に出た。
「値段で決まらないものもある。あなたには見えないだけだ」
男は青年の瞳を見返したが、そこに映るのは静かな光だった。
やがて男は札束を掴み直し、舌打ちをして店を出ていった。
老人は深く息をつき、青年に微笑んだ。
「おまえがいてくれてよかった。私の人生の大切な宝物なのだ」
青年は頷いた。
「この店に置いておきたかったのです。大切な宝物として受け継ぐのですから」
入口から春の風が吹き込んだ。
五冊の本は、未来へ続く灯火のように、静かにそこに在り続けた。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:古書店の跡継ぎ
街角に
通いし青年
本を選び
匂いに包む
小さな楽園
老人の
声は静かに
跡継ぎと
埃の棚へ
導かれたり
孤独同士
寄り添う心は
ほどけゆき
短き言葉
やさしき灯火
秘められし
五冊の署名
三十年
誓いの証
箱に眠れる
札束を
叩きつけし男
値を叫ぶ
青年の瞳
静けさを返す
「値段では
決まらぬものも
あるのだ」と
光を宿す
未来の継承
春の風
棚を揺らして
影三つ
灯火となり
時を越えゆく
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




