53.ささやかな宴
それか三日ほど経った夜、邸内で使用人たちも含めささやかに宴が催された。エドモンドは王としてではなくあくまで家族の、コーネリアスやアレクシスの父としてふるまいたかった。だから宴は大きなものではなく、ホームパーティーほどの小さな規模で行われた。
相変わらず使用人やオリバーは嵐のような忙しさではあったが、仕事に追われていても皆笑顔であった。コーネリアスとエドモンドの顛末をエドモンドが邸内の人間に明らかにしたからだ。
アメリアもその場にいたが、飾らない言葉でコーネリアスと接することを誓うエドモンドに、ようやく溜飲が下がったところである。
立食式のパーティーで、アメリアはあれこれとごちそうをつまんでは舌鼓を打っていた。コーネリアスはエドモンドと話し込んでいるし、アレクシスは調子の取り戻したルルを見るなりパーティーに紛れて姿をくらませてしまった。
「まったく、ルルもアレクシス殿下も好きよね。そのうちテーブルの下から出てきそうな気がするわ」
呆れ顔のアメリアの後ろで、ルルがテーブルクロスの下からちょろんと尻尾を出したことに気づくのは、その次の日になってからだった。
「よう、アメリア嬢。楽しんでるようで何よりだ」
「オリバーさん。もう厨房の方はいいんですか?」
オリバーがシャンパン片手にアメリアに話しかけてくる。先程まで馬車馬のように動き回っていた姿を見ているから、今の少しキザな態度も取り繕いではないかとアメリアは思った。
「今は交代時間だよ。みんな飲みたい食べたいが強すぎてな、俺が一番細切れで穴埋めに入ってるんだ」
「それはまあなんと。お忙しいことで」
「いいんだよ。それより、コーネリアスのこと、ありがとうな」
オリバーはグラスを持ったまま軽くお辞儀をする。
「あいつ、まさかあんなに元気になって、しかも陛下との仲も改善していきそうでさ。一人の友人として、君に感謝してもしきれない」
「そんな、私はちゃんと自分の務めを果たしたまでですよ」
「そういう仕事熱心なところも、コーネリアスは気に入ったんだろうよ」
からかうようなオリバーの物言いにアメリアが笑ったところで、オリバーはすっと身を引いて奥の人物に場を譲る。
「さて、やきもちを妬かれてしまう前にお邪魔虫は退散するとしますよ」
「どういう……? っ、コーネリアス様?!」
オリバーが身を引いて譲った場所へ、コーネリアスが歩いてくる。ハッとするアメリアに、コーネリアスははにかみながらもアメリアの前に立つ。
「その、アメリア。時間はあるだろうか」
「ええ。もちろんですよコーネリアス様」
「少し話がしたいのだ。庭園まで来てくれるだろうか」
コーネリアスに頷き、アメリアは連れられるままに庭園に出ていく。星の出る夜はあの日約束を交わした日を思い出す。きらきらと星が瞬く中、コーネリアスは言った。
「久しぶりに、散策でもどうだろうか」
アメリアはこくりと頷き、コーネリアスの隣を歩いた。いつか眺めた草花も、今は夜の静けさに頭を垂れている。バラの植え込みのそばに来れば、ほのかに風に乗ってバラの香りが鼻をくすぐった。
「このバラ一つとっても、あなたに教えられたことはたくさんある」
「ついこの前のことですけど、なんだか遠い昔のことのように感じられますね」
「それだけここにいた時間が充実していたということだ」
星空の下、今までここで過ごしてきた思い出を振り返っていく。よく覚えていることから、細やかな気づきまで、一つ一つアメリアはコーネリアスと話していった。




