44.国王の茶会
コーネリアス、アレクシスを伴ってエドモンドが会場に現れる。準備を終えて待っていたオリバーとアメリアは静かに並んで三人を出迎えた。
使用人とオリバーが三人の椅子をひき、アメリアは一礼してハーブティー作りに取り掛かる。いくら作り慣れているとはいえ、国王の面前でお茶を淹れるなどなかなかない体験だ。緊張こそしても、アメリアはコーネリアスのことを思えば奮い立てる。
蒸らしたハーブから心地よい香りが立ちのぼり、三人の鼻をくすぐる。
「アメリア、このお茶には何を入れているのかな」
アレクシスが尋ねるとアメリアは静かに返事をして答える。
「ラベンダーに、摘みたてのミントを加えております。安眠や不安を和らげる効果をもたらすハーブの一種です」
「ほう」
エドモンドは短い相づちのみだ。コーネリアスは緊張しているのか口数も少ない。アメリアはそっとコーネリアスにしかわからないように自分の手を握って見せる。それを見てハッとしたのか、コーネリアスもテーブルの下でそっと自分の手を握った。
三人にハーブティーを配り、アメリアも席につく。茶会では人の話を聞くと聞いていたエドモンドは押し黙ったままハーブティーを口にした。
「……うむ。悪くない」
「光栄です、陛下」
やっと口にした言葉に謝意を見せるアメリアだが、内心なかなか話し出さないエドモンドにイラついていた。
(人の話を聞く前に自分から場を温めるもんでしょうが。国王だからってなんでも言うこと聞くと思ったら大間違いなんだから!)
「父様。茶会を開いたってことは、話したいことや聞きたいことがある、ってことだよね」
そんな中、アレクシスが茶会の意図を聞き出そうと声を上げる。エドモンドはアレクシスの言葉にしばし黙っていたが、やがて静かに口を開いた。
「わしが茶会を始めたのは、ウィルマ……お前たちの母がきっかけだったことはわかるな」
「はい、父上」
「知っております、父様」
口々に答えるコーネリアスとアレクシスにエドモンドは頷く。
「生前、ウィルマはよく言っていた。人の話によく耳を傾け、自分の思いもよく話せと。そのために茶会は最適な場だと。わしは今日ここでお前たちに話さねばならぬことがある」
エドモンドの言葉に、コーネリアスもアレクシスも真面目な顔をして聞いている。
もちろんアメリアも、これからエドモンドがどんな言葉を述べるのか固唾を飲んでみまもっていた。
「アレクシス。お前の体調が最近改善していること、嬉しく思う。元々病弱だったお前がこの地で元気になっていることがわしは喜ばしい」
「父様……それは、ここにいるアメリアのおかげです。彼女が僕の元気が出ない原因を解明し、対処してくれたからです」
「ほう。ならばヒーラー、いや、アメリアよ。アレクシスに活力を取り戻してくれたこと、感謝する」
「もったいないお言葉、感謝いたします」
(もっと先に言うことがあるでしょうが!)
表には出さなくても、アメリアはコーネリアスのことに触れないエドモンドに苛立ちを感じ始めていた。
そういうコーネリアスは自分のことに先に触れられないことにしょんぼりしているのか視線を下げ何度も手を握ることを繰り返している。
「コーネリアス」
エドモンドがコーネリアスを呼んだ。びくりと肩を跳ねさせるコーネリアスに、エドモンドは何か言いたげに口をもごつかせる。
「お前は……そうだな。傷を治したのなら、なによりだ。これからも励むように」
「はい、父上」
たったそれだけにさすがにアメリアも言葉を失ってしまう。アレクシスには喜ばしいとまで言えるのに、どうしてコーネリアスにはろくな言葉すらかけないのだろう。
ずっとコーネリアスからアメリアは聞いていた。ただ見てほしいと。認めてほしいと。
アメリアは怒りに拳をぎゅっと握りしめる。テーブルの下に隠れて見えないが、わなわなと体が震えているのは、よく見ている者がいれば気づくだろう。
「……父上。それだけ、ですか」
アメリアが口を開こうとして、先にコーネリアスがエドモンドに言った。




