17.ルルとオリバー 野次馬共
そういう仲睦まじさを遠目から見ているのがオリバーである。
「中々いい雰囲気……これはなんだかんだ言って二人とも脈ありなんじゃないか?」
バラの茂みの影からアメリアとコーネリアスをのぞき見て、悪く言えば野次馬である。侍従も遠ざけて二人きりでいるのだから、ちょっと面目がなくて居心地が悪いのも事実である。
とはいえ、親友の恋模様にやきもきするお節介なところもオリバーにはある。
「あいつが誰かに恋するなんて初めてだしな……縁談にも眉一つ動かさないくらいだったのに、アメリア様が来てからはまるで見違えるように生き生きしだして」
ブツブツと独り言を言うオリバーの横にやってきた黒猫がしかたなさそうに相づちを打った。
「だよね~、全然らしくないよ」
「うんうん……って猫?!」
相づちを打った相手を見てオリバーは飛び上がる。そこにいたのは黒猫、もといアメリアの使い魔のルルだ。普段は正体を隠して歩き回っているのだが、さすがにアメリアとコーネリアスの様子に口を出さずにはいられなくなったようである。
「猫じゃなくてルル。アメリアの使い魔。まあ、言葉を喋れる猫だと思ってればいいよ」
オリバーは使い魔を見たのは初めてだったが、本来使い魔を持つのは魔法使いである。ヒーラーであるアメリアに使い魔がいるなんて初耳だった。
「そ、そうか。ヒーラーなのに使い魔持ちとは、まるで魔法使いだ」
そのわりにすぐに状況を受け入れるのだから、オリバーの柔軟性は高い。
「ヒーラーだって治癒魔法使いとも呼べるでしょ。あんまり詮索しないの」
ルルはしたり顔で言うとオリバーの肩に乗りアメリア達の様子を窺った。
「ちょ、何乗って」
「全く、僕に最近全然構わないと思ったらあの王子さまにかかりきりなんだもん。ちょっと退屈だよね。人間もそう思うでしょ?」
「そ、そうなのか。ところで俺にはオリバーって名前が」
いきなりそんな事をいいながらもオリバーを人間呼びするルルに、オリバーは名乗ろうとする。
「さっきのお返し。びっくりしたからって言ってもいきなり種族名だけで呼ばれるの、ちょっと嫌なんだから。僕だって立派な女の子なんだからね」
突然現れたと思ったらふてぶてしく言われてさすがにオリバーも不服そうな顔をする。
「悪かったな。でもとっさに見て女の子かどうかなんてわからないぞ? ましてや猫だし」
「人間みたいに派手に男女の差がないからね。で、人間」
「オリバーだって」
やいのやいの言い合いながらも二人が気になるのはアメリア達のことである。ルルを肩に乗せたまま、オリバーとルルは二人して談笑するアメリアとコーネリアスの様子を窺う。
アメリアの話に感心した様子でいるコーネリアスや、コーネリアスの言葉に笑みをこぼすアメリアを見て、二人は顔を見合わせる。
「あんな顔……」
「しなかったよね……」
オリバーはコーネリアスのことを、ルルはアメリアのことを思い浮かべながら同じことを口にする。
コーネリアスはもっと硬い表情でむすっとしていたのに、今は穏やかな表情で優しくアメリアに接している。オリバーだって見た事がない顔をしている。なんとも驚きである。
アメリアもいつもは仕事は仕事と割り切っているのに、そういうときには見せない顔で笑っている。いつも仕事中に浮かべるのは邪悪な笑みだというのに。
ルルも驚きである。
「なあ、ルル。どう思うよ」
「オリバーはどうしたいか決めてる?」
顔を見合わせたまま、オリバーとルルは同時に言った。
「応援したいに決まってる」
「応援しなきゃ、こんなの」
二人の親しげな姿を見て、オリバーとルルは確信する。
「なら、決まりだな」
「僕からもアメリアに言っておくよ。お幸せにってね」
「まだ早くないか?」
「こういうのは口にしてると本当になるっていうでしょ。おまじないの基礎だよ」
使い魔らしくルルは宣うと、オリバーの肩の上で喉を鳴らす。
「とにかく、何かしらいい雰囲気、俺たちでも作っていかないとな」




