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第40話 ぱんぴ~狂想曲

「ぱんぴ~、遊んでこい! ――《1000ぱんぴ~》!」


 直後、校庭にカボチャがにょきっと生えた。その数、千個。


 そして、カボチャは突然に跳ね上がり、体を生やし、手を生やし、足を生やして、カボチャパンツにキャミソール、ぼろぼろのマントという出で立ちで、地面に降り立った。


「「「「ぱんぴ~! なのだ!」」」」


 その数、ざっと千体。

 手の平サイズのちっちゃなスコップを持って、出現こそ異様ではあるが、一見すると、無害で、無邪気で、無防備なちびっ子の集団以上でも以下でもない。

 ――だが。


「「「「「「「や~ってやるのだ~」」」」」」」


 わ~っ、と愛くるしい鬨の声を幾重にも重ね、スコップを伝説の剣のように掲げて、ぱんぴ~たちは恐れを知らない戦士のように、魔王と、その側近に、突撃! 突撃! 突撃!


「「「「「「わ~っ!」」」」」」


 魔王どころか側近の腕の一振りで何体ものぱんぴ~が土塊に還った。


「「「「怯むな、なのだ~!」」」


 多くの犠牲を払って、ようやくスコップの一撃を加えるものの、何らかの痛痒を与えた様子はない。逆襲を受け、またひとりの勇者が土塊に還る。


「「「「「「突撃~! 突撃~! なのだ~!」」」」」」


 ただの嫌がらせ以外の何ものでもないように見えた。


 ところが、ぱんぴ~たちに群がられた側近が1体、また1体と戦場から姿を消していった。


 地面に掘られた穴にでも、すとんと落ちたかのように消えたのだ。

 だが、実際はそうじゃない。


 彼らは消えてなどいなかった。彼らは、彼らのいた場所に、まだいた。


 ただし、そこに生前の面影は微塵もない。ある者は内臓をばら撒かれ、ある者は首を掻ききられ、ある者は四肢を分断されて、人知れず息絶えていた。


 もちろん、ぱんぴ~たちの仕業だ。


 スコップの一撃は、確かに側近の皮膚さえ破ることはできなかった。


 しかし、一撃でダメなら二撃、二撃でダメなら三撃……、と同じ箇所にダメージを与え続ければ、かすり傷くらいはできる。そうなれば、もう占めたものだ。


 かすり傷を抉り、砂場で穴を掘るかのように皮膚を裂き、肉を千切り――その果てに、骨があれば骨を砕き、内臓があれば内臓を潰し、確実に命を掴み、その緒を断ち切る。


 いくら犠牲になろうと、ぱんぴ~たちは怯まない。


 愚直に、愚昧に、スコップを突き立て、ミノタウロスだった肉塊をこさえていく。


 ――そうして。


 見る間に、側近は数を減らし、魔王と数体を残すのみとなった。


「「「「「魔王をやるのだ~!」」」」」


 わ~っ、と可愛らしい鬨の声を上げて、未だに数百を残すぱんぴ~たちは魔王をもスコップの餌食にしようと殺到した。


 しかし魔王も伊達に魔王ではない。


 戦斧を失おうと凶悪な膂力は健在で、鉄筋の柱のような腕をただ一振りするだけでぱんぴ~たちを一撃で粉砕し、鋼の硬度を持つ体毛と筋肉はいくつものスコップをへし折った。


 圧倒的な数を無為とする圧倒的な戦闘力。ぱんぴ~たちに、もはや打つ手はない。


「「「「わ~っ!」」」


 ……はずだった。


「「「「いまなのだ~!」」」」


 今やすっかり数を減らしたぱんぴ~たちが無謀にも魔王に躍りかかる。


 決死の覚悟による捨て身……のようだが、実際はそれほど悲壮なものはない。


 きゃっきゃと笑いながら、魔王の足にしがみつくぱんぴ~、

 母親にするように魔王の腕に抱きつくぱんぴ~、

 抱っこするように魔王に飛び掛かるぱんぴ~、ぱんぴ~、ぱんぴ~。


 一見、じゃれているだけのようだが……応対する魔王は必死だった。


 腕を振るい、足を蹴上げ、身を捩り、纏わり付くぱんぴ~を、何としてでも引き剥がそうとしている。


 それもそのはず。ぱんぴ~たちは別に魔王が好きでじゃれているわけではないからだ。


 飛び掛かりながらも、そのスコップでしっかりと魔王の眼球を狙い、その手で魔王の口をこじ開けようとねじ込み、その自重で魔王を押し倒そうとする。


 どれか一つでも敵えば魔王とて側近と同じ末路を辿るのは明白だ。


 そして、その時は、刻々と近づいてきていた。


 ぶふぉ、ぶふぉ、と魔王は苦しげに息を継ぎ、力なく腕を振るい、残ったぱんぴ~をふるい落とす。ようやく自由を取り戻すが、息を吸って吐くまでの一時だけだ。


 振り落としたぱんぴ~たちが元気に立ち上がり、また躍りかかろうという気配を滲ませる。


 魔王は牛面でありながらそれとわかるほどに鼻白んだ。


 口腔から泡を吹き、威容を誇っていた体躯は今や猫のように丸まり、鉄骨のような腕は力なくだらんと垂れ、全身は土埃と血糊で汚れていないところは1カ所もない。


 流石の魔王も体力の限界といった様子だ。


 次にぱんぴ~に襲われたら、いくらも抵抗できないだろう。


「……お?」


 不意に、魔王と目が合った。


 嫌な予感がした。無能オーク時代に培われた予知にも等しい予感だ。


 案の定、魔王は口腔の泡ぶくを一舐めすると、一息ぼくに向かって駆け出した。


 賢しい奴だ。パンぴ~の魔法の根源がぼくの魔力であることに気がついたか?


 と、魔王は1体のぱんぴ~を掴み、ぼくに投げつけてみた。


「わあああああ~!」


 回避――は、可哀想なので、ちゃんと受け止めてやる。

 それが、致命的な隙となった。


 魔王の小岩ほどの拳骨に1本だけ長い無駄毛を見つけた――直後。


 ごぉぉぉぉん! と鐘を突くかのような衝撃。


「痛っ!」


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