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第21話 火の玉洞窟

「これでよし、――なにさ?」


 準備万端、さあ出発という段で振り返ると、悪い顔をしたナビ妖精が待ち構えていた。


「読めたぞい、身バレは不味いからの~♪」


 ししししっ、と意地悪に笑うナビ妖精……いや、セシルちゃん妖精。


「何の話さ?」


「だって、ここは――」


 セシルちゃん妖精は上昇し、広大な空間を表すように両手を一杯に広げた。


「『火の玉洞窟』ではないか!!」


「そうだよ? 火の微精霊集めには最適なところだ」


「それだけではあるまい?」


 ししししっ、とまた意地悪に笑って、


「わしはちゃ~んと聞いておったぞ?」


「……なにを?」


「ここなんぢゃろ? クラスメイトどもが魔王退治に挑むというダンジョンは」


「ソ、ソウダッタカナ?」


 あははは~、と笑い飛ばすつもりが、からからのから笑いにしかならない。


「確か、学校の近くにも火属性の魔物が生息するダンジョンはあったはずだが? な~ぜ、わざわざ徒歩20分も歩いてここに来たかの~? M/Mで場所まで検索してのぉ~?」


「――ぐぅ!」


「暗躍か? 暗躍するのか?」


 ぼくの周りを、セシルちゃん妖精がからかうようにくるくると回る。

 鬱陶しいから捕まえようとしたら妙なことを言ってきた。


「はぃ?」


「のけ者にされた恨み辛みを晴らすのぢゃろ? 身バレせぬように装備まで変えての」


「ち、違うってば!」


「では、あれか? クラスメイト共のピンチに颯爽と現れて、快刀乱麻を断つ大活躍で、クラスメイト共をぎゃふんさせるのだな? よいぞよいぞ、わし好みの展開ぢゃ!」


「いや、それもやらんつーの……ってか、なんでそんなに楽しそう?」


 実は、暗躍とか大好きなんだろうか? セシルちゃんの好みはそのときどきのテレビに影響されるからな、大方、暗躍もののドラマか映画でも見たか?


「ひ孫の大活躍が見れるのだ、楽しくないわけがなかろう? あと、お主を馬鹿にしていた連中のぎゃふん顔が拝めるかもしれんのだ、こんなに心躍ることはない!」


「は、はぁ……」


 意外にまともな理由だった。……いや、まともか?


「まあ、とにかくクラスメイトの活躍を見物がてら火の微精霊を集めよう、ってだけだよ。装備を変えるのは、見つかったら気まずいから、そんだけさ」


「とかいいつつ、実は~」


 にや~、とセシルちゃん妖精は愛らしい顔をJKを見つけた変質者のように歪めた。


「ないない、本当にそれだけだよ」


「まあそういうことにしておいてやろう。わしはサプライズが大好きだかな」


 くくくっ、と陰惨に笑いながらセシルちゃん妖精はは洞窟の奥へと飛んでいく。


「……いや、だからやらん、つーの」


 ぼくの叫びは、ただ洞窟の壁に虚しく響き渡っただけだった。




 小高い丘から周りを見渡せば、灰色の地底世界が延々と続いている。

 なぜ、太陽も月もない地下世界で、灰色が見えるのか。


 なぜなら、魔王「サンライズ・ウィルオウィプス」の御体が、この地底世界の果ての果てで、仮初めの太陽となって輝いているからだ。


 本来、地底ダンジョンは高レベル冒険者泣かせの高難易度に指定されるものだが、ここ『火の玉洞窟』が地底ダンジョンでありながら「E」の上位に甘んじるのは、このためだ。


 地上の山間部と遜色ない、山あり谷ありの起伏に富む――真っ暗闇だったら絶望しかない――地底世界を余すことなく、魔王そのものが照らし出しているのである。


 そのため、魔王討伐なら、この地底世界を照らす光源を目指せば良いし、魔王と出会いたくなければ光源から逃げれば良い。地形は丸見えなので、どちらもさほど難しくはない。


「み~っけ、と……」


 もちろん、クラスメイト捜しだって、お茶の子さいさいだ。

 光源である魔王を目指して、足早に進む一団が見える。

 先頭は、騎士鎧姿のビーちゃん、あとに陽キャ軍団、後衛、最後にサポーター。

 地形が丸見えなので、平坦な地形を選んでどんどん進んでいく。


「随分、急いておるな?」


「う~ん……」


 人差し指と親指で丸を作り、覗いてみる。指の間に魔力でレンズを張った望遠鏡だ。

 魔力レンズ越しにサポーターのひとりが転けるのが見えた。

 他のサポーターが駆け寄り、助け起こすが、一団は彼らを置き去りにして行ってしまう。


「そういえば、タイムトライアルに挑戦するみたいなこと言ってたような……」


「なんとまあ、学生の身分で魔王に挑むだけでも相応な冒険だというのに……、けったいなことぢゃな。過ぎたる栄誉は身を滅ぼすぞことを、まだ知らんと見える」


「ぼくらも行こう。このままでは見失ってしまいそうだ」


 小高い丘の向こうに一団が消えると、ぼくの場所からは見えなくなってしまった。

 急いで丘を下り、後を追う。

 クラスメイトに倣って平坦な道を進めば、追跡は簡単……なはずだった。


「お客さんぢゃ」


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