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第14話 魔法サブスクリプション

 魔法は、大きく分けて4つの種類がある。


 ひとつは、始原魔法。

 魔力任せに理をねじ曲げ、強引に超常を発生させる魔法である。

 魔法に分類されるが、その本質は超能力の類に近い。

 事実「発火」や「発雷」、「瞬間移動」や「透視」「念動力」など古き時代では「超能力」と見なされていたものが魔法と見なされ、現在では一般化されている。


 もうひとつは、精霊魔法。現代で魔法と言えばこれのこと。

 始原魔法が魔力任せなのに対して、こちらは精霊任せに超常を発生させる。

 使える魔法は精霊の属性次第だが、始原魔法よりも多種多様で利便性に優れる。

 その上、理の反逆率――どれほどの理をねじ曲げたかを数値化したもの――を抑えられ、比例して魔力疲労も最小限のものとなる。

 そのため、魔力の弱い者でも使える。


 三つ目は、召喚魔法。

 魔物や魔法生物、英霊などを使役する魔法。


 使役するのに煩雑な儀式が必要となるが、一度、主従関係を結べば魔力の弱い者でも使えるため、魔法職に限らず使役しているものは少なくない。


 反面、ペットを飼っているようなものなので、当然、維持費がかかる。


 大型の肉食の魔獣を使役している人の場合、個人でライオンを飼っているようなものなので――場合によってはそれ以上か――年間の食費が半端ないとか。


 ぼくら学生で使役している人はほとんどいない。

 いても、せいぜい、偵察や索敵のための小型の飛行魔獣くらい。



 最後は、神聖魔法。

 魔法で唯一回復効果のある魔法だ。

 習得は簡単で、神聖教会にある女神像の前で、欲しい魔法をお願いするだけ。

 女神様がその人の人となりを見て、魔法を与えるのだとか。

 善人にしか魔法は与えられないと言われているけど、詳細は定かではない。

 ぼくを虐めた女子のひとりが使っていたから、実はそうじゃないのかも。

 使用に魔力の強弱は関係なく、単純に使用回数で与えられるらしい。

 らしい、というのは、ぼくが神聖教会に行ったことがないからだ。

 魔力無関係で回復できるのだから習得しない手はないのに、何故か、セシルちゃんに禁じられ「行ったら家族の縁を切る」とまで言われてしまったのだ。なぞである。




「まずは魔法プログラムを入れないとね~♪」


 学校の裏庭にあるダンジョン――通称「裏庭ダンジョン」について早々、ぼくはるんるん気分でM/Mを起動させると、インターネットを繋げ、とあるウエブサイトを開いた。


「なにをしておるのだ?」


 セシルちゃん妖精が後ろから覗き込んでくる。

 開いたウエブサイトのホーム画面にはこうある。――「マーリンの杖」。

 国内最大級の魔法プログラム販売サイトの名前だ。


 魔法プログラムの作成者はプロアマ合わせると星の数ほどいて、出来上がった魔法プログラムをこのようなサイトに持ち寄って販売しているのである。


 人気作成者の魔法プログラムは万単位で売れ、軽く億を稼ぐこともある。


「精霊魔法用の魔法プログラムをM/Mに入れようと思って」


 しかし、最低級の魔法プログラムでも、渋沢さんが何枚も必要な値段設定である。

 低級の魔法でも、もはや渋沢さんが10枚いても足らないくらい。

 これではあまりに魔法職が不遇だ。

 お金を集まるまで、永遠とヒノキの棒で戦わなければならない。


 そこで、頭のいい人が考えたのが「魔法プログラム・サブスクリプション」だ。


「知らないの? 月定額で低級と最低級の魔法プロブラムが使い放題になるんだよ?」


「知っておるが……いらんぞ? あるから」


「――は?」


「というか、低級の魔法プログラムくらい自分で組めば良かろう?」


 何気なくセシルちゃんが言うのに、ぼくは一瞬言葉を失い、口をパクパクさせた。

 ややあってから、ごきゅん、と唾を飲み込んで、


「そういうのって匠のお仕事では?」


「ある面ではな。魔力の弱いものに強力な魔法を行使させよう、と思ったら、ハゲ散らかすほどの労力が必要となる。だが、わしらは超高濃度魔力がある」


「うん?」


「理など折り紙のように何とでもできる暴虐の超高濃度魔力があるから、そもそも魔力の増幅も強化も輻射も必要ない。ただプログラム通りに魔力を流すだけで、たいていの魔法は発動する。なんならプログラムがなくて発動できる。酷く疲れるがな」


「――まじで?」


「あとでプログラムの組み方を教えてやろう。なんなら新しいプログラムの書き方も教えてやろうか? オリジナルの魔法なんて男の子は萌えるもんぢゃろ?」


「上手くいくとは思えないけど……」


「ま~た、そんなことを言う!」


 セシルちゃん妖精は、折檻する代わりに、ぺちぺちとぼくの額を叩いた。


「何事も試しぢゃ。まずは低級の魔法プログラムを試してみよ。使ってみて、改善点があったら直せば良い。拙速であろうと何事も第一歩が大事ぢゃぞ」


「わかった~」


 ぼくの生返事に、セシルちゃん妖精はも一つぺちぃんと返す。

 まったく痛くはないが、なかなか心に染みる一撃だ。


「いくつかインストールしておく。試してみよ」


「また人のM/Mに勝手に……」


 ぴこぉん、と電子音。M/Mの画面に「インストール完了」という通知文。

 M/Mの表示画面にまた見知らぬアプリのアイコンが増えていた。

 セシルちゃんのデフォルメ顔が、親指を立てて、ウィンクしているアイコンだ。


「無能オークと罵られたぼくが、まさか魔法を使えるようになるとは……」


 キーボード操作でアプリを起動し、表示された魔法プログラムを選ぶ。


 ……正直、面倒臭い。


 今時の冒険者のM/Mは音声認識か、もしくはコンタクトレンズ型ディスプレー――『バロール』に表示される画面を指で触れるだけで操作が認識される仕組みが一般的なのに、ぼくのM/Mのなんとローテクなことか。未だにキーボードって……昭和か!


「ぱんぴ~」


 呼ぶと、近くで穴掘りしていたぱんぴ~がとことことやってきた。

 ちなみに何故穴掘りしていたかといえば「無性に掘りたかったから」だそうな。


「呼んだか~?」


 やってきたぱんぴ~はすでに一戦やらかしたみたいに土埃で汚れていた。


「やるぞ」


「お~!」


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