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ー送らない手紙、送るべき手紙編ー

ある一室にて男が二人、対面で座っている。


夕飯、風呂、風呂上がりの一杯を済ました気の抜けたU木に若造(O原)が質問の雨を降らす。


O原「なぜ空手を?」


U木父「子供の頃、戦隊物のヒーローの強さに憧れてな、手近にあったのが空手だった」


O原「結構長く続いたんですね」


U木父「いつの間にかのめり込んで、大きな大会にも出れる様になってたなぁ」


O原「大会に…、空手しててモテたりはしなかったんですか?」


U木父「だといいが…それはなかった」


O原「じゃあ、彼女は奥さん以外いなかったと」


U木父「…まあな、いや、ノーコメントで」


U木の回答に思わず表情を緩め、質問を続ける。


O原「そうっすか、…奥さんとはいつ知り合ったんですか?」


U木父「確か空手の大会で、一目惚れだった。彼女は対戦相手の応援してたけどな」


O原「それから何かアクションを起こしたんですか?」


U木父「いや、そのときは何も。その対戦相手にライバル視されただけ、その大会の後に引っ越しも決まってたし。」


O原「そっからどうしたんですか?」


U木父「…、今になって思うと照れくさいんだが、引っ越してから結構悶々としてた。当時飼ってたメスに彼女の名前なんか付けたりして気を紛らわせたりしてたなぁ…」


思わず苦笑いし、O原は続きをせがむ。


O原「ははは、その後はどうしたんですか?」


U木父「そうこうしてるうちに夏休みになった。」


O原「それで?」


U木父「妹が家にボーイフレンドを連れてきた」


U木が酒に酔っているのかもと少し疑う。


O原「はぁ…、妹さんいるんですね」


U木父「華奢で背も低かったが何となく品があってなぁ…まあ兄としては問題ないと思った」


O原「…」


U木父「第一印象が凄かった。庭で猫を名前言いならがら、いじってると声かけられてた」


O原「何と?」


U木父「「はじめまして、猫かわいいですね。メスですか?」と聞かれた、「メスっす」と答えたら、「何か由来でも?…まさか彼女の名前とかですか?」て、そのとき、たぶん≪えっ≫顔してたんだろうな」


表情を緩めつつ、U木に話の続きをせがむ。


O原「でしょうね。それから?それからどうしたんですか?」


U木父「口ごもってたら、男が妹に呼ばれてなんとかその場は切り抜けられた。いちよう妹には感謝しといたよ」


O原「いちよう?」


U木父「男呼んだの妹だし」


O原「ああ、確かに」


U木父「それから、男の話をよく聞くようになった。最近ここに越してきたとか、ケンカしてたカップルの仲裁に入ってケンカは収めたとか」


O原「なんか信用できそうな人っぽいですね。」


U木父「だろ?で、また家に来たとき声を掛けてみた「カップルのケンカの仲裁をしたんだって?」と、そしたら」


O原「そしたら?」


U木父「「したにはしたんだけど、逆に女性の方に付きまとわれるはめになりました」と言われた」


O原「ははは…熱い人なんですね。」


U木父「だよな。だから、おどけた感じで言ってみた「そう言えば、前にここに来たとき、聞かれた猫の名前…図星だったな」て、そしたら、急に真剣な顔して「重症ですね…よかったら話聞きますよ」と言われた」


O原「へぇー」


U木父「で、「真剣に話を聞くんで今日の19時にこの番号に掛けて下さい」て、男の家の電話番号を書いたメモを渡された」


O原「へぇー、それでそれで」


U木父「時間になって電話を掛けてみたら、1コールもせずに相手が出て、挨拶もそこそこにこう言われた「実は前に1人、同じような症状の人を治しました」と、「どうやって?」と聞いたら「僕をその相手だと思って口説いて下さい」て」


U木の話を聞き、キョトンとなる。


O原「???」


U木父「ふっ、たぶん俺もそんな顔してと思うよ。そんな俺を置き去りにして電話の主は話を続けた「相手の名前は?」なんか流れで名前を言っちまった」


O原「…」


U木父「でも疑問に思って聞いてみた。「なぜそんなことする?」と、そしたら「お兄さんは恋愛に幻想を抱きすぎです。僕がその幻想を見事に打ち砕きます」と、矢継ぎ早にこう続けた「明日も同じ時間に電話して下さい。もちろん今度掛けるときはその相手の名前でお願いします。家のものにもその名前で電話が来たら電話を回すように言っておきますから、じゃあ、よろしくお願いします」と言って電話切られた」


苦笑いしつつO原がコメントをする。


O原「マジでやったことあるみたいですね」


U木父「その日は混乱しっぱなしだった。でも、正直引っ越してばかりで頼るダチもいなかったし、冗談だと結論付けて興味本位で次の日も電話してみた。」


O原「おぉー、で」


U木父「電話に出たのは母親らしい人で「はい、熊田(彼女の名字)です。」て、でた。」


O原「マジで」


U木父「まあ、名字は同じ可能性もあるから続けて「U木です。桜子(彼女の名前)さんいますか?」と言ったら「少々、お待ちください」と言われて、すぐに男が出た「桜子です」て」


O原「…変なゾーンに入りそうですね。」


U木父「そう思った…黙ってたら相手は「気の利いた一言をお兄さん」て、とりあえず電話の子機を持って自室に走った」


O原「で?」


U木父「自室のカギ、窓のカーテンを閉めて、安全を確認して言った。」


O原「…」


U木父「元気かい、ハニー」


O原「…」


U木父「「5点」」


思わず、笑いながらO原がコメントする。


O原「査定甘いっすね」


U木父「…もうやめていい?何か精神的に死にそう。」


O原「ここでほったらかしにされたら僕も悶え死にしそうです。」


U木父「わかったよ。そしたら「あなたの思いはそんなものなんですか?」と言われたから、「違う、会えたら抱きしめてキスする位の思いは…ホントに」で…、「思いは分かりました。でも行動よりも言葉で言って…好きと言って」明らかに声色が変わってた」


O原「…」


U木父「で、なんやかんあって今度は直接会うことになった。」



~なんやかんや~


「好きだ。」


「誰が好きなの?」


「桜子が好きだ!」


「どの位、好き?」


「日本一桜子を愛してる!!」


「日本を出れば浮気するのね」


「一生涯君のそばにいる。君を離さない。」


「ホントに?」


「ホントに!」


「何に誓える?」


「神に誓って」


「どうせ無宗教なのに?」


「…桜子の澄んだ瞳に誓って」


「…、今度は実際に会って口説いてくれませんか?」


「えぇー、マジで?」


「じゃあ、明日19時に丘の上の公園でお願いします。待ってます。」


「あ、はい。」


~なんやかんや終わり~



U木父「約束の時間に公園に行ったら彼がいた。で、開口一番「じゃあ、口説いて下さい」て」


O原「…」


U木父「さすがに戸惑った、男だし」


O原「確かに」


U木父「それを察してか、「ダメですか、じゃあ着替えてきますんで待ってて下さい」て」


O原「?」


U木父「聞いたよ。「何にすんの?」と、そしたら「女装ですよ。あっち向いててください。」」


O原「…凄いっすね、本格的?ですね」


U木父「ああ、驚いた。とりあえず待ってたら「お待たせしました、お兄さん」振り返ると彼女がいた」


O原「え?彼女?誰ですか?」


U木父「これ嫁の話だろ?」


O原「大会で一目惚れした、奥さんですか?」


U木父「ああ、ポカンとしてたら、「口説いてくれないんですか?昨日の意気込みは?」」


O原「…」


U木父「正直、言葉が出なかった。そしたら「この日を今までずっと待ってたのになぁ…」と言われた」


O原「…」


U木父「意を決して、彼女を抱きしめた」


O原「…」


U木父「しばし沈黙の後、「にゃ~ん」…甘い声だった。その後、なんか吹き出して笑ったなぁ。で、今にいたるって感じだな。」


O原は思わず膝を叩いて立ち上がり、感想をもらす。


O原「凄っ!!!」


U木父「そうか?」


O原「そうですよ。」


U木父「…最近元気ないみたいだけど、元気出たみたいだな。」


O原「…はい。」


O原を座らせて、真剣な表情でO原に尋ねた。


U木父「で、奈津と何があった?」


O原「特には…」


U木父「本当か?」


O原「…実は、奈津さんが勉強に集中したいからと会ってくれなくなりまして、電話なんかも少しし辛くなり、メッセージでのやり取りも頻繫には出来なくて、少し寂しく思っているだけです」


U木父「そうか…」


O原「でも、そうですよね」


U木父「何が?」


O原「口に出せば少しは気が晴れるのでしょうか?」


期待するような目でO原が見てくるが、バッサリと提案を断る。


U木父「…、そんな話は聞いてはやらん」


O原「そうですか…」


U木父「話さなかったが…、思いを紛らわす為にもう一つ試していたことがあった」


O原「なんですか?」


U木父「手紙だ」


O原「手紙」


U木父「まあ、送りはしなかったが、気持ちは少しは晴れた。話ししたこともない相手からいきなり手紙を送られても気味が悪いしな」


O原「…」


U木父「でも、奈津は君の想いのこもった手紙は読むと思うよ」


O原「そうですかね」


表情を緩め、U木が言葉を発する。


U木父「ああ、間違いない、彼女の父親が保証するよ」


U木の目を見て、頭を下げ、謝辞を述べる。


O原「分かりました、一度試してみます。ありがとうございます」


U木父「ああ」


帰り際、O原はU木母(桜子)に挨拶をして帰った。

今度話をしても聞きに来ても良いかという話と一緒に…




※U木奈津は一人暮らしをし、勉学に励んでいます。O原から手紙は口にはしませんが大事に保管しているようです。後、小型犬を飼ったそうですが、名前は教えてくれません。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


他にもスピンオフが何作品かあります。


面白いと思って頂けましたら、下にある評価やブックマークで表して貰いますと励みになります。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。

作者ページを見て頂きますとなんとなんと!?簡単に見つかります(笑



ではでは別のお話でお会いできる事を楽しみにしております。

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