色んな意味で落ちてしまいます?
ふふっ、やった。 神様は私の味方をしてくれた。
大塚さんよりも西園寺さんよりも私の順番が先。絶対に絶対に先手必勝で颯ちゃんは私が手に入れるんだから。そのために恥ずかしいけど必死にこのイベントにエントリーしたんだから。
絶対に負けられない。勝つのは幼馴染の私、春風環奈なんだから。
「恵梨香、お前を愛している!!!!」
って、すごい。藤堂君。広瀬さんを屋上に呼んで大胆に告白。
知らなかった。そんなのもありなんだ。ありなら、わ、私もやっちゃおっかな。颯ちゃんに。
って、あ、あれ、も、もしかして藤堂君、広瀬さんにキスしようとしてる!?
そんなのも、そんなのもありなの?
なら、私だって。絶対に私だって。
グラウンドもこれでもかと盛り上がっているしね。それはそうだよね。あんな情熱的な告白見せられたらね。うん。私だって絶対。
でも、やばいよ。本当に緊張してきた。今が一番初めの藤堂君の番だから私はその5組後。
もうすぐ準備だし、心臓がもうバクバクと。空手の全国大会よりも確実に緊張しちゃってるよ私。
颯ちゃんとキス。颯ちゃんとお付き合い。そして颯ちゃんと結婚。
さっき文化祭のお店でいっぱい買っちゃったけど、もう何も喉を通らないよ。
でも、やっぱりさすがに屋上に颯ちゃんを呼ぶのは止めておこうかな......。うん。昔、私のせいであんなことがあったし、絶対に駄目。何を考えているのよ私。
ただ、本当にあの時の颯ちゃんがいたから私。本当にかっこよかった。
その前から既に好きだったけど。特にあのことがあってから、もう私は颯ちゃんでなければ絶対に駄目になったの。やっぱりだけど。身体が勝手に動いたとか言って、屋上から落ちる私を助ける為に飛び降りた颯ちゃんみたいな人、他にいないもん。
だから予定どおり、正々堂々とあの屋上からグラウンドの颯ちゃんに向かって告白しよう。
まぁ、よく考えたらあれ、普通に危ないよね。屋上のあんな狭い舞台に二人もって......。
さすがに大きなテレビ番組さんなんだし、そこら辺はしっかりと丈夫にしているのかな。
って、あれ?
色々と私がそんなことを考えている間に
恵梨香ちゃん、藤堂くんのことを振り払うよう......に?
「え!?」
う、嘘。遠くからだからわかりずらいけど、確かにあれは舞台の手すりが.....外れて
「だ、駄目!!!!」
そして気がつけば、私の目には一瞬のうちにして今まさに屋上の舞台から落ちていく広瀬さんの姿。
う、嘘っ
同時にそんな広瀬さんに向かって手を伸ばす藤堂君が見えるも明らかに届いていない。
そして、私と同じ様に異変にいち早く気づいたであろうグラウンドの校舎近くにいた先生の何人かが落ちてくる彼女に向かって走り出した姿も見えるけど、間に合う訳が....ない。
あ、あんな高さ奇跡でも起きない限り.....。
い、嫌っ、こんなの死......
って......。
そんな中、あろうことか、私の目には屋上から彼女が落ちていく姿が映ったすぐ後に、藤堂君ではないもう一人の人間が勢いよくすぐに視界にフェードインする。
「え?」
それも彼女と同じく屋上から落ちる様に.....。
そして、彼女を追いかけるように.......
「う、嘘.......」
既に私の視界には、今まさに落ちている最中の広瀬さんを抱きしめるようにして同時に落ちていく一人の男性の姿が映りこんでいる......。
彼女のことを守る様に背中から落ちていく一人の男の姿が.....。
そして数秒も経たないうちに.......
バサバサッバキバキといった大きな音と共に二人の姿が私の視界から消えて......




