ギリギリセーフです?
それにしても、何であんなことがあった翌日に限って
彼女と一緒に日直なんだ......。
おかしいだろ。
後はこの黒板を綺麗にして職員室に日誌を届けるだけで、もう家に帰れる。
あと少しの辛抱。というか、本来ならもう帰れているはずなんだが......
「あんたってさ。何でずっと休んでたの? 別に休んでたことを責めるとかじゃなくてさー、単純に気になるんだよねー。結構長かったじゃん」
華怜........。
さっきから俺に対する彼女からの質問攻めが半端じゃない。
他にはもう誰もいない教室に二人、必要以上に近い距離からそう何度も.......
一向に、肌の綺麗な色白のギャルが俺から視線を外そうとしてくれない。
「まぁ、色々」
とりあえず、さすがにもうボロを出すつもりはない。
出すつもりはないが、明らかにおかしい。
正直な話、華怜と俺は去年も同じクラスだった。
だったが、ほとんど話したことなんてなかった。というか、皆無に近かった......。
なのに今日のこれは。
やっぱり昨日の.......。
いや、それしか思い浮かばない。
残念ながら。
「じゃあ逆に何でもう一度学校に来ようと思えたの? 絶対に何かきっかけがあったはずだよね」
「いや、別に。まぁ強いていうならば出席日数の都合上そろそろ来なくちゃ留年かなって」
「それって理由になってない気がするんだけど」
「そうか?」
まぁ、そうなるよな。
ただ止めろ。止めてくれ。その目を細める仕草.......
わかるけど止めろ。
「とりあえず悪い。大塚さん。ちょっとそろそろ俺、帰らないと」
「ん? 何かあんの?」
「ふっ、それも色々かな。あ、日誌は俺が職員室に届けておくから」
最近わかったことは下手に嘘をつくよりは適当な言葉で質問を終わらせる方が絶対に良いと言うこと。
何故か一番聞かれるかもしれない思っていた昨日のカフェでのことは何も言ってこないし、ボロが出る前にとにかく早く帰りたい。
華怜はただでさえ勘が鋭いからな......。
さすがに入れ替わりまではバレないだろうが、今こんな状況になっているのは既にイエローカードと言っても過言ではない。
それぐらいに思っておかないと本当に何が起こるかはわからないからな。
用心に越したことはない。
昨日のアレは本当にちょっと想定外だった......
でも何だ?さっきまた彼女の眉がピクッとしたような気が.......
いや、気のせいか。
どこにひっかかった。
「ふーん、そっ、ありがとね」
「いや、全然」
そして案外ここはあっさりと帰してくれる華怜。
正直、リズムがあんまりつかめない。
華怜ってこんな感じだったっけか。ん?
「あ、いや。やっぱり私が持ってく。職員室に用あるし。鍵も閉めとくから先に帰っておいていいよ」
「え、あ、いいの?」
「うん。実は教室でもまだちょっとやりたいことあってさ。とりあえず一旦職員室行くから私のその貴重品入っている方の鞄だけ取ってくれない?」
やりたいこと? まぁ帰らせてくれるのならいいか。
「わかった。で、貴重品入っている方の鞄ってどっち?」
俺の目の前には2つの鞄.......。
「えーっと、そっち。その大阪行ったときに買ってくれた方」
あー、こっちか。
そういや華怜。今もこれ使ってるんだ......。
確か華怜の誕生日に大阪にデートに行った時に、貯めていたバイト代で買って......って
あ、あれ......?
「ど、どっちだ? 大阪? ちょっとわからない......」
あ、あ、危ねぇ.....。
マジか。嘘だろ。
そして彼女の方へ視線を向けると、そこにはいかにも険しい表情で俺のことをじっと見つめてくる彼女。
今度は無言で俺のことをじっと......。
「いや、どっちかな? 本当にわからない。大阪?」
これ、信じがたいけどやっぱり華怜は実際に今......
「そっち」
とりあえずその言葉と共に指を指された方の鞄を俺は手に取り彼女へ渡す。
そしてそれを受け取るやいなや静かに彼女は教室を後にした。
何とも言えない表情を俺に向けながら.......。
これは多分.......まずい?
でも一応、今回は何もボロは出していなかったよ......な?
いや、でも本当にそれにしてもこれは......