野生の勘です?
「颯ちゃん! ほら、見て見て!アザラシさんだよ!! 可愛いー」
「おー、確かに可愛いな」
「ねぇねぇ、今度はオオサンショウウオさんを見にいこっか。人気なんだって!」
「ははっ、そうだな。てか、環奈はしゃぎすぎだろ」
「ふふ、だって楽しいんだもん。颯ちゃんと一緒に水族館!」
そう。俺達二人は今、水族館にいる。
京都水族館に。
とりあえず、まず環奈の機嫌が好調になってくれて良かった。
本当に良かった。
で何故、俺達があんなに必死に目指していた下鴨神社にいないのかと言うと......。
まぁ、一度は俺も神社のあの入口の赤くて大きな鳥居の所までは行ったんだけど......。
何故か急に慌てた様子で中から走って来た環奈が、何か嫌な予感がするから別の場所に行こうと言ってすぐまたバスへ乗って今ここに。
正直、よくわからないけれど。昔から何故か環奈は野生の勘?と言うやつが働くのだろうか。
割と突然こういうことを言いだして俺を困惑させてくれた記憶がある。
ただ、意外にもこの勘が当たっていたことが何度もあったことも事実で、結構色々な場面で助けられていた記憶もある。
そして、俺も今日は直感的に素直に環奈の言う事を聞いておいた方が良い気がして今ここに。
特に、華怜と紗弥加とあんなことがあった後だしな.......。
おい、アザラシ......。お前はいいな。そんな気持ちよさそうにプカプカと。
悩みなんて全くなさそう。
俺なんてもう完全にあいつ等にバレてしまって......。
一体何が悪かった。なんであそこまで.......
やっぱり自分でも知らない間に色々としでかして?
しかもあの感じ。まぁこっちは俺の勘違いかもしれないし、その可能性の方が高いんだけど。あいつ等、俺のこと.....。
特に華怜はもう.......。
「ふふっ、そう言えば、昔も一緒に颯ちゃんと水族館に行ったことあったよね。覚えてる? もー、あの時、颯ちゃん迷子になっちゃってさ」
「って、ん? いやいや、覚えているけどあの時迷子になったの環奈だろ。間違いなく環奈」
「あ、ありゃ? そうだったっけ?」
そう。俺と環奈は本当に昔から家族ぐるみの付き合い。
もはや家族みたいなものと言っても過言ではない。
だからこそちょっと今の環奈がやっぱり心配になったりもする。
まぁ、今は自分の事でいっぱいいっぱいだけどな。
でも、確かこの前に環奈のおばさんも言ってたっけ。
『もう少し環奈にも浮いた話があってもいいのにねー。顔も性格も悪くないと思うんだけど颯太くんはどう思う?』とか何とかかんとか。
と言うか、結構頻繁にそういうことを聞いてくる。
まぁ実際、おばさんの言う通りに本当にそれはそうだと思う。
環奈は普通に可愛いし、性格も良い。
なのに何でこいつ彼氏いなんだ? 何度も思うが何でだ?
てか、あれ? ん?
ちょっと待て.......。
も、もしかして俺のせい.......?
今、考え直したら、まぁ最近はちょっと色々あって自分でもだいぶと改善されたとは思っているけど。俺って元々かなり内向的な性格ではあったし。
今日だってもしかして環奈に気を使われて呼び出された.......?
そう言えば実際にさっき先生にも一人班の皆に見捨てられたと勘違いされて......。
あれ? そ、そういうこと?
「でも、本当に楽しいなー。こ、これってデートみたいかも......。そ、颯ちゃんはどう思う?」
じゃあやっぱり俺のせい......?
「あれ? そ、颯ちゃん? 聞いてる? え? どうしたの。おーい」
だから遠回しにおばさんも頻繁に........。
「もう! また自分の世界なの? コラ!颯ちゃん!!!」
そして一方、本来彼らがいるはずであった下鴨神社では.......




