一応、希望の光が見えました?
「ちょ、え、ちょ.......」
お、おいこんなところで真剣に何を........。
本当に何を。お、お前等のせいで周りまでざわついてきたぞ、おい。
「はぁ? 何なの? 実際はずっと前から私と彼は付き合っていたから! てか、西園寺さんには関係ないわよね?」
「一体何を言っているのかしら。大塚さん、あなたが付き合っていたのは藤堂蓮也でしょ? 頭がおかしくなっちゃったのかしら? こちらこそ関係のない彼を巻き込んであげないで欲しいんだけど」
今、俺の目には白塗りに着物の舞妓さんと制服をものすごくお洒落に着崩したギャルが口論をしている光景.......。
人は多いが落ち着いた雰囲気のこの祇園で二人の美女がマジ喧嘩?
ど、どこからどうみても、目立ってしまう異常な光景だ。
目立たない訳がない。
出会って数分後にはこうなってしまって、もう俺にはとてもではないけど止められる様な状態じゃない.......。な、情けないけどこれは無理だ。止めようとはした。したけど無理だった。
「何も知らない人が私たちの関係に口を挟まないでよ。マジうざいから! ほんと関係ないじゃん」
「いや、関係あるわよ。だって私は彼に何度も告白されているんだもの。そして私に告白してきた男が他の女と歩いている。これは問題でしょ?黙ってはおけないわ!」
「はい? あんたに何度も告白していたのは彼じゃなくて蓮也でしょ? 私知っているんだから。あいつが何度もあんたに手を出そうとしていたこと! あんたこそ頭おかしいんじゃないの?」
や、止めてくれ。本当に止めてくれ......。そんな大きな声で。
なんでそんなに二人ともヒートアップして。
しかも言っていることが両方とも何か色々と間違っている気が......と言うか間違ってるよな。おい。
それに特に紗弥加、今のお前、お前らしくなさすぎるだろ。
どんな時でも冷静沈着なはずのお前が何で......。
まぁ百歩譲って、いや譲らなくても紗弥加が俺達の入れ替わりに気づいていることも、もうわかる。もうあの漫画の時点で確信するべきだったが、どっちにしろもう完全に......。
ただ、だからって何で今ここでこうやって紗弥加は華怜と言い争いをしている。
何で。
こ、この感じではまるで紗弥加まで俺のこと......
「え? 紗弥加ちゃんは何を言っているの? な、何で大塚さんとこんなに?」
「さ、さやちゃんらしくないよ。どうしよ。二人とも完全に周りがもう見えてないよ。どうしよ。ねぇどうしよ茜ちゃん。おかしいよ 二人ともおかしいよ」
そ、そうだよ。まずおかしいんだよこの状況。
この通り、もう紗弥加の友達で同じく白塗りの二人も完全にこの光景にポカンとした表情で......。
って、あれ? ん?
今、二人とも完全に周りが見えてないって聞こえてきた?
た、確かに......。
俺の手も完全に華怜の手からは離れている。
あ、あれ? これ、これいけるぞ。おい。
二人には悪いけど、こっちは命がかかっているんだ。
申し訳ないけど、申し訳ないけどさすがにここはもう行かせてもらう。
今しかもうチャンスはない。
現に俺がここまで離れても気がついていない。
い、いけるぞ。後はこのままそこの角をゆーっくりと曲がって.......
二人の姿が見えなくなって.......。
い、いけた。まさかの本当にいけた。
しかもこんな良いタイミングで緑のバス、いわゆる市バスがあっちの方でもう発車しようと......。
「の、乗ります!」
全力ダッシュ.....も、だ、駄目か。閉ま......って開いた。開いたぞ。
これは完全に待ってくれてる。
マジか。いつもならこういう場合に間に合わないのが俺。
どうした。急に運が。運がまわってきた。
「ふぅ.....ありがとうございます」
ま、間にあった。
もう既にあの状況下で色々と変なことに巻き込まれてしまった気がするけど。
今はとりあえず、あそこから離れられて環奈のところに行けることに感謝しなければならない。
良かった。時間的にもこのバスに乗れたことによってギリギリなんとかなる。
まさかの目的地方面に進むバスだ。
どうした。何で本当にこんなに急に俺に運が?
いや、本当に助かったから何でもいいんだけど。
現にバスの扉も閉ま......
あれ? え? 何で閉まらない。俺、乗ったぞ?
いや、早く閉め......
「はぁ....はぁ.....ふふっ、運転手さん。ありがとうございます!」
「はーい。足元気をつけてねー。扉が閉まりまーす」
え!?
と、扉は閉まったけど。な、何で。
てか、バスが待ってくれたのはそういう......こと?
「もーう、風見くんって意外に足速いんだね。あ、いや、ふふっ、風間くんだったんだっけ。今まで間違ってたみたい。ごめんね! てか、間違ってたんだから言ってよー。」
いやどういうこと?
な、何で広瀬さん?
しかも、何でそんなに極自然に俺の隣の席に当たり前の様に一緒に座って........?
え? しかも何で一人?
ど、どういうこと?
ち、ちょっとまた頭が........。
「で、風間くんはどこに行くつもりかな? ふふっ、そんなに慌てて一人でさ」
「え?」




