美女二人と贅沢な時間です?
俺は今、お気に入りのカフェのお洒落なテラスの青空の下、2人の美女と
とても贅沢な時間を満喫している........
贅沢すぎて、それはもう自分の中のキャパが破裂しそうなぐらいに.......
「ねぇねぇ、大塚さんはよくここに来るの?」
「まぁ来てたかな.......。春風さんも?」
「いや、私は今日が初めてだよ! ね、颯ちゃん」
そして環奈。すまないがちょっと口を閉じて欲しい。
美味しいものを食べると椅子の下で足をバタバタするその恒例の仕草についてはもう今日は何も言わない。
こ、ここの椅子は頑丈そうだしな......
だからまぁとにかく口を閉じてくれ。
いつもなら甘酸っぱいスムージーの味が全くもう俺の舌を潤さないんだ.......。
「初めてでそれ、食べてるの?」
「ん? そうだよ。颯ちゃんが頼んでくれたの。超美味しいよね」
「へぇー.......」
そして華怜、何だその目は........。止めてくれ。
俺は目の前に座る華怜のその目の意味を知っている。
知っているからこそ、じっと俺のことを深くみつめてくる華怜に俺は目が合わせられないんだ。
だってそれは俺があいつと入れ替わった直後に浮気を問いただしてきた時の目。
あの当時は当然俺も何のことかわからなかったし、何の後ろめたさも感じなかったから割と毅然な態度でいることができたけれど。
今はそれなりに後ろめたさが......ある
決して悪いことをしたわけではないが後ろめたさが......。
それにしても何で今日に限ってこんなに天気が良い。もうほぼ夕方にも関わらず快晴も快晴じゃないか。
昨日まで雨続きだったくせに、一切そんな気配もない。
ま、まぁどうしようもないことを嘆いても仕方がない。
もう雨には期待しないし、できない。
そ、それに、まぁバレるわけがない。
そう。やはり普通ならありえないんだから。
華怜はこう見えて頭もいい。そんな非現実なことを考える様な女じゃない。
でも、頭が悪くないからこそ........
絶対に華怜は目の前にあるこの俺のいつもの裏メニューセットを......
「色々と颯ちゃんがネットで調べてくれたんだよね。私、初めてだけどもうこれからここに通う気満々だよ!」
か、環奈........。
お前は本当に。悪気が一切ないのはわかっているけど真剣にちょっと
「そうなんだ.......。でも、ここネットでもほとんど情報出てないはずなんだけど。それにそれ、ここの裏メニューだし。メニューにも載ってないはずなんだけど。どういうこと?」
「え? 裏メニュー? ネットにも情報がない? ん、どういうこと? 颯ちゃん?」
くっ、やはり......
し、仕方がないけどこれしかない。当たって砕けろだ
「えーっと、あ、そうそう。ネットじゃない。そう本当は妹から聞いたんだ。この裏メニューの存在もさ。妹にあんまり他の人には言わないで欲しいって言われてたからつい環奈にも嘘をな。良く考えたら環奈には意味のない変な嘘だったな。ふっ、悪い悪い」
「へぇー、香奈ちゃんに教えてもらったんだー。そういうことか。納得!」
か、かなり苦しい、自分でもあまり良く意味のわからない言い訳だったが、何故か納得してくれた?
さ、さすが環奈。こういうところがお前の良いところだ。
か、勝った?
一応別にこの言い訳に関しては華怜も何も言ってこない様。
ま、まぁ今の俺の言葉に心なしか何故か華怜の眉がぴくっと動いた様な気がしたが、まぁ気のせいか。
気のせいにしておこう。
「でも、本当に美味しいね。颯ちゃん。ほら、あーん」
「い、いやなんだよ。環奈。やめ、止めろ」
で、お前は本当にやめろ。環奈。
今日はちょっと色々と地雷すぎるぞ、おい。
「ま、そんなわけ.....ないか。ないよね。私ちょっとどうかしちゃってるわね」
え?
そして、そう言って俺の目の前には静かに俺達と同じベジタブルタルトを口に含む華怜。
正直、こんな悲し気な華怜の表情を見たのは初めてかもしれない。
だってここで逢う彼女はいつも笑っていたから。
本当に綺麗な笑顔で.......
華怜.......。
一体、あいつと何があった.......。
さすがに俺はそんな華怜を前にして環奈と一緒に笑う事はできなかった.....。
さすがにもう別人とは言え、彼女の彼氏をしていたことがある身としては.......。
そして後日、風間颯太としてこの俺がこの華怜とひと悶着起こすことを
当然この時は知る訳もない。
大塚華怜はとてつもなく勘の鋭い女。
それはここにいる俺が一番よく知っていたはずだ......