表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/105

ハッタリは結構大事です

この話の投稿にあたって14話と15話の内容を一部変更しました。


 「もっと声張れって!まだまだ出せるだろうが!お前、バイト舐めてる?」


 これ以上出したら、常識的にもはや他の客に.....

 まぁ言うこと聞かないとうるさいし、一応は出すけど。


 「お会計15,000円でございます!!!」

 「バカ!おまえ練習だからってふざけてんのか。そんな大声だすやつあるかボケ!しかも15,000円ってどんだけ食ったらそんなにいくんだよ。あ? 団体客か? 何人で来て、何を食べてその金額になったか設定を言ってみろ。おい、言ってみろよ。」


 いや、お前がもっと声出せって言ったんだろうが。しかも設定を言え? 何だよそれ。

 中村.......。なんでちょっと歳が上なぐらいでそんなに威張ってるんだ。

 大学生がそんなに偉いのかよ。

 というか、なんでこんなに俺に理不尽なんだよ。一体俺が何をした。


 ついさっきまで広瀬さんがレジを教えてくれていたが、急にこの人が代わると言いだして今、この状況。

 何か今日何度かあったなこんな状況.......。


 はぁ

 正直、しんどい。

 初日にはいなかったからわからなかったけど、こんな奴もいるのかよ.......


 「おい、ちゃんと聞いてんのか新入り。新入りはもっと.....」


 もっと......?

 ん? 何故か、言葉の途中で突然無言になり一人で静かにどこかへ消えていく中村。

 やっぱり意味がわからないな。この人。

 方向的にトイレか?


 って、客が来た。


 「いらっしゃいませ!」

 「おう。 広瀬恵梨香どこ?」


 見る限り4人ほどいるのだろうか。

 見た目的にすごく悪そうな連中が入ってきたかと思えば、開口一番で広瀬さんのことを探す一番前の男。


 「ちなみに広瀬とはどのような関係で」


 俺は笑顔をつくってそう質問をする。

 

 「いいから出せって言ってんだよ!オラァ!!!」


 やっぱり。

 何か広瀬さんがボソッと言ってたっけ。最近しつこくて柄の悪い男がたまに来てめんどくさいって。

 絶対にこいつ等だし、怒鳴り声が半端なくうるさい。


 まぁ、彼女を呼んでもいいけど。

 幸い視界にはいないし、ここで広瀬さんを素直に出した場合、俺は間違いなく彼女に嫌われてしまう。

 そして嫌われてしまうと今後のバイトに大きな支障が出る。

 かなりの支障が。だからそれは得策ではない。


 それに、もしここで俺が彼女をすんなりと出して何かやばいことが起こってみろ。

 完全に俺の責任になってしまうからな。

 やっぱり断るしかない。

 まず、こんな状況でこいつ等の言う事を聞くのはかなり男としてださい気がするしな。


 こいつ等が怖くないわけではないが、幸いここはファミレスで他の人の目もある。

 大丈夫だ。

 そもそも見た目こんな感じで悪そうでも雰囲気はそこまでだしな。


 俺はあくまで勘のレベルでしかないが、今までの経験上、割と自分よりも強い奴は感覚でわかる.....気がする。

 こいつ等は4人合わせても環奈以下だ。

 まぁ、確実に俺以上ではあるが.......


 「すみません。広瀬は本日出勤していません」

 「あ? 嘘つくなコラァ! さっき窓の外から恵梨香がいることは確認してんだよ! マジで殺すぞお前。早く出せって言ってんだよ!」


 あぁ、火に油を注いでしまった。嘘はやっぱまずいか。

 というか、すでに胸倉を掴まれて......。


 「とりあえず、今は彼女は休憩中ですので。用件は自分が聞きます。なんでしょうか」


 さすがにここでは殴られはしないだろうけど。

 早く店長来てくれないかな.......。

 って、そう言えばさっき店長。

 晩御飯買いに行くってどっか外に行ったな。

 くっ、まかないはさすがに飽きたとかいうやつか。

 

 どうする。


 「だから早く恵梨香を出せって!!!」

 「すみません。休憩中なので無理です」


 まぁ、毅然とした態度で断るぐらいしかできない。

 いや、もうひとつだけあるか。


 「お前マジで痛い目見ねぇとわからないみたいだな。変な正義感だしてっと大怪我するぜ。オイ!!!!」


 そして俺は、その怒鳴り声と共にさらに胸倉をきつく掴んでくる目の前の男の右手首をグッとおもいっきり握りこむ


 「とりあえず、もう止めましょうよ。ここで騒がれると他の人の迷惑ですし。これ以上騒ぐのであれば呼びますよ。広瀬さんではなく()()を」

 「ぐっ......テメェ。な、なんだよこの力」


 そう。俺は弱い。単純な格闘ではこいつには勝てないだろう。ただ、()()だけは強い。

 単純な握力だけならまだ俺よりも強い奴を見たことがない。

 まぁ、ほとんど普段この握力が役立つことはないけどな......。


 ただ、こういう周りに人目があって、()()とかにビビりそうな中途半端な奴らが相手なら有効的.......なはず。

 現に以前にもこんなことが1回だけあった。

 まぁあの時はもっと別の方法ではあったけど、確か()()と一緒にいた時。


 とりあえずあいつは容姿と顔面が強そうだからな。それっぽい言葉と共に乗り切った。

 要ははったりだ。 

 あの時はとにかく華怜の前だったし、カッコ悪いところは見せられなかったから何とか知恵を振り絞ってな。


 そして逆に今の俺は容姿と顔面はお世辞でも強そうとは言えないがこの握力がある。


 陽キャは意外とはったりの世界だ。

 俺はあいつになってはったりがどれだけ大事かということも学んだ。

 どうなるかはわからないが、こいつ等に殴られても普通に環奈の蹴りに比べれば全然だろう。

 今回も賭けではあるがこうなった以上仕方がない。


 「おい、これ以上彼女にしつこくするのであれば本当に警察を呼ぶぞ。まぁ単純な客として来るのであれば別だけどな」

 「テ、テメェ.....。客にこんなことして....」


 俺はとりあえず利き腕の右手であれば、驚かれるのかもしれないが、りんごぐらいなら簡単にぐしゃぐしゃに握り潰せる。まぁ小さい頃から親に()()()()()()を手伝わされていたっていうのもあるのだろうがな。

 そして、そんなことを考えながらその利き腕にいっそう力を込める俺。


 「なら、もう広瀬さんはいいですかね。休憩中なんで。あと俺の利き腕はこっちの手ではなく()()なんで。そこのところだけお願いします」


 これも()()()()だ。思いっきり俺は()()()

 

 って、ぐっ、地味に蹴り入れてきやがった。

 でも、これぐらいなら一発ならまだ無表情で耐えられる.....はず。


 「あのー、それ暴力ですよね。もう警察呼びますね。すみませーん。傷害事件です。誰か警察呼んでください」


 かなり痛いが俺は痛みをギリギリのところで顔に出さない。

 出しては駄目だ。


 「ちょ、マジでやばいって行くぞおい。テメェ覚えとけよ!顔覚えたからな!」


 そして実際に警察を呼ぼうとしたことにビビったのか。さっきまでごちゃごちゃと俺にヤジをとばしていた俺の目の前の男の取り巻きたちがそう言って店外へと出て行く。


 「テメェマジで顔覚えたから覚悟しておけよ。マジで次あったら殺すからな」

 「まぁ、別にいいですけど。この店の防犯カメラもあなた達の顔を覚えている。テメェこそ、これ以上()()()()()()とこのままこの手潰すぞおい。」

 「くっ......テメェ」


 そして手を握っていた男もいつの間にか俺の右手を振り払い店外へと。

 というか、俺が振り払わせた。


 ふっ、やっぱり俺の勘は当たった。

 というか当たって良かった。


 最悪の場合大けがだからな。

 次あったら殺す? いやいや絶対嫌。 いいわけがない。

 まぁ、あの様子なら大丈夫だろうとは思うけれど.....


 いや、一気に後から不安と後悔が俺に襲ってくる。

 今思えば、あいつの場合は元々強そうだから大丈夫だったけど。

 俺は容姿的にはお世辞にも強そうとは.....。

 しかもそれなのに最後に()()()()であんな調子に乗ったセリフを俺は.......

 くっ.....好きな()()()()()()()がつい。

 

 いや、待てよ。逆にそれがギャップになって......

 それにあの言葉は確か()西()()

 前の時もだけどもしかして運よく通じてないかも。


 ま、まぁとりあえずもう何でもいいか。

 この場所での危機は何とか去ったしな。


 何とか今回もはったりが生きた。


 って、そう言えばどこ行ったあのウザい大学生野郎の中村は。

 うんこにしても長すぎるだろ。


 「へぇー、そうなんですか。ありがとうございます」

 「おう、まぁ俺にかかればな。あんなんは余裕よ。余裕」


 すると今度はバックヤードの方から広瀬さんと中村?の声?


 「すみません。何かすっごい怒鳴り声が聞こえてもしかしてあいつ等かもって思うと怖くてー。恵梨香、ずっとここに隠れちゃってました。本当にすみません。だから何が起こってたかは全然わからないんですけど、でも4()()も相手に本当にすごいですー」

 「あぁ、良いよ。良いよ。あいつ等みたいな奴。俺、何だかんだで慣れているしな。まぁ余裕だよ。余裕。で、今度飯でもどう?」

 

 確実に中村の声だ.......。

 あいつ.......。


 「すみません。お会計お願いします」

 「あ、はい。すみません。お会計が........」




 って、な、何で。




 「お会計が?」


 か、()()!?


 「は、850円でございます」


 しかも一人.......?


 でも目の前にいるのは、確かに間違いなく大塚華怜。

 見覚えのある財布を片手に俺のことをじっと凝視してくる......。

 過去に俺がプレゼントしたであろう財布を持ちながらじっと......。


 「へぇー、風間ってこういうところでバイトしてるんだ。意外」

 「ま、まぁ社会勉強も兼ねて」


 い、いや別にまぁ別に華怜がファミレスにいることは全然おかしくはないけど。

 ファミレスとかに一人でくるタイプではなかった気が.......。


 それに、ならもしかしてさっきの.......


 「それにさっきのこともすっごく意外。あんたって意外に男らしいみたいね。それに久しぶりに聞いたわ。()()()の言葉。確か関西の方言だっけ」


 「へ......?」


 あっ.......


 「な、なんのことか? わからない......な」

 「ふーん、そう。まぁ、今日のところはまぁいいけどね。じゃあね。()()


 これは......  


 「お......い、いや、俺は風間」

 「はいはい」


 そう言って店外へと消えていく彼女。



 い、いやちょっとこれは.......。

 ()()って確かに彼女は今

 真剣に.....え?

 


 「やっほー! 来たよー。そうちゃん。あ、レジしているんだ! ふふ、でもまずは案内してもらおうっかな。ほら、そうちゃん、ボーっとしてないで案内!」

 「あ、あぁ」


 すると今度は空手が終わったのだろうか。本当に環奈が来た。

 彼女と綺麗に入れ違いで......

 いや、でも.......


 「あ!そういえばさっき大塚さんとすれ違ったんだよー!でも大丈夫かなー。大塚さん。何かブツブツと言いながら真剣な顔で私に気づかずに通りすぎて行っちゃった」


 「へ、へぇ......」


 ブ、ブツブツと真剣な顔で.......?



 「こちらのお席に.......」

 「うん。注文はもちろんハンバーグドリア!」

 「かしこまりました.......」

 「うんうん。美味しくしてね!」


 とりあえず、注文を届けなければと俺は厨房の方へ。


 すると今度は彼女、広瀬恵梨香が前から歩いてくる。

 まぁ、今はもう彼女のことはどうでもいい。それどころではない。


 静かにすれ違........



 「ねぇ風見くん、さっきはありがと。ふふっ、ちなみにさっき言ってた()()()()ってどういう意味? また今度詳しく教えて」 



 え?

 俺の耳元ではそう言って、小さく囁く彼女の声........。

 

 そして振り向くともう、俺とは静かに反対方向へ向かって歩いて行く彼女の後ろ姿。


 「くっそ、どうやったら恵梨香を落とせるんだよ。飯ぐらい良いだろうが。飯ぐらい。恩知らずが」


 そして何故か悔しそうな顔で独り言を言っている中村の姿も......。

 お、恩知らず? いや、そもそもお前........



 いや、そ、それにしてもちょっと色々と.......え?

 

 頭の整理がちょっと........

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 前のが駄目なわけじゃないけど、今回の方がもっといい。 ドラマとか映画になりそうなドキドキ展開 無理せず自分のペースで、これからも楽しみにしてます。
[良い点] 前の記憶に無い展開よりこっちの方が色々ヤキモキして面白かったです(≧∇≦)b次回も楽しみです(≧∇≦)b
[良い点] 書き直したやつも面白いです。 [気になる点] ない。 [一言] 次楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ