嵐の前触れです?
「ねぇ、颯ちゃん。まさか、あの広瀬さん目当てでバイトを始めたなんてこと......」
「な、ないって。なんでそんな思考になるんだよ」
「ほんとかなー」
とりあえず、学校が終わった俺はまたいつもの様に環奈と下校中。
「というか、何でこのままこっちについて来ようとするんだよ。環奈.......」
「何? 私についてこられて不都合なことでもあるの? 颯ちゃん」
「い、いやそういうことじゃなくて空手は大丈夫かって言ってんの」
ま、また目が怖いって環奈.....。
一体今日はどうした。本当に様子がおかしいぞ。
「大丈夫、大丈夫。なんせ今日は颯ちゃんの働きぶりをしーっかりと見ておいてあげないといけないからね」
「な、なんだよそれ。本当に大丈夫なのか? いや、大丈夫なら別にいいのはいいんだけど......。一応俺は22時までいるぞ」
さすがにサボるのは環奈的に.......
「むぅ......じ、じゃあまた終わったら行くよ。結構ギリギリになっちゃうかもしれないけど」
「お、おう。その方が良いと思うぞ」
うん。絶対にその方が良い。
サボりなんて絶対にあの人が許してくれないだろ.......。絶対。
「と、ところで颯ちゃんはやっぱりさ。お、お胸が大きい方が好きなのかな......? ち、違うよね。そ、颯ちゃんはそんなことないよね.....」
ん?
い、いきなり何だよその質問......。
「そ、颯ちゃん?」
「い、いや、いきなり何言ってんだ。環奈。意味が、意味がわからん」
本当に何だよ......。今日の環奈。
色々といつもと.......
「わ、私だって一応はあるんだよ。一応は.......」
し、しかもそんな膨らませた頬を赤くしてまた何だよ.......。
き、聞いてないから。いきなり変なこと言うのやめろ。
いきなり.......。
もしかして誰かに何か言われたのか?
まぁ確かに環奈の胸は......アレかもしれないけど。
あと胸で思いだしてしまったけど.......。
あの時の華怜の.......い、いや思いだすな。
ほ、本来あれは俺が見てはいけないものだ。うん。忘れろ。忘れろ俺。
「ふふっ、颯ちゃん。今、心の中で何て言った? あと何か変なこと考えてない?」
「え?いや、な、何も、何も言ってないし、か、考えてないです......」
う、うん。今日はもう、そっと、そっとしておこう。
でないと真剣に俺の命が危ないかもしれない。冗談抜きで。
「って、環奈。後ろから車だ」
「ん? わかったって、うわっ、すっごい車」
その環奈の言う通りに後ろからはすっごい車。
黒塗りのいかにもな高級車がゆっくりと走ってくる。
「颯ちゃん!もしかしてリムジン!?」
「いや、リムジンではなさそうだけど。絶対に高い.......」
一体どんな人が乗っているのだろうか。
こんないかにもな車、初めて見た......。
どこかの社長?
俺は興味本位で、ゆっくりと隣を通り過ぎていくその高そうなく車のサイドガラスの中をさりげなく覗き込む。
って........
俺はまさかの、その覗き込んでいた先の中にいた人物と目が合ってしまう。
しかも、それは見知った人物だった。
さ、西園寺........。
良いところのお嬢様だとは噂で聞いていたけど、ガチじゃん......。
すげぇ.......
「ね、ねぇ颯ちゃん! やっぱり中に乗っているは社長かな? 社長! も、もしかしてさらに上の総理大臣とか........」
「ははっ、どうだろうな......」
まぁ、総理大臣はない。うん。ない。
でもとりあえず、西園寺の家の車で一応は環奈の機嫌が戻ってくれたみたい.......。良かった......のか?
へぇー、でもそれにしても高そうな車だったな。
そしてそんなことを考えながら俺は環奈と別れ、バイト先のファミレスへと向かうのだった。