大塚華怜は観察をします
やっぱりおかしい。
風間颯太........。
「颯ちゃん! 私ね。こう見えてドリアにはうるさいんだよ!」
「そ、そうか」
「ハンバーグドリア!ハンバーグドリア!」
ありえない。絶対にありえないんだけれども。
どうしても、あいつのことが気になってしかたがない。
そんなこと。現実的にあるはずのないことだとはわかっているんだけれど。
どうしても........
何か、ぱっと見ではわかりづらいんだけど。戻ってきてからはあか抜けた感じもする?
今も教室の片隅に座る彼を観察してみると、例えば髪とかも。
さりげなくワックスとかも使っているわね。
去年同じクラスだったから一応は知っているけど、あの頃はもっと頭とかもボサボサで身なりにだらしない感じだった。
それが今は全体的に清潔感というか何というか......。
さっき隣を通りかかった時も何かいい匂いがしたわよ。
それに、何と言ってもあの時のことがひっかかってしまう。
あのカフェ『santa monica』でのことが.......。
あれは間違いなく私がいつも蓮也と食べていた《《いつもの》》裏メニュー
あの言い訳も、ものすごく怪しい。怪しすぎる......。
というか、昔から思っていたけど。
何で春風さん程の可愛い子がいつも彼と一緒に?
しかもあの感じで二人は付き合ってはいないってこれまたどういうこと?
ま、まぁそれは今はどうでもいいし置いておくとして.......
やっぱりおかしいわ。あのセットは私達の........
「颯ちゃん! パフェもあるよね!」
「お、おう。あったと思う。うん。あった」
雰囲気も、どうにも以前に比べて落ち着きすぎている感じがするのよね。
まぁ、同じクラスはクラスでも今までほとんど絡んだこともないし確証はないんだけど。
それに、やっぱりどうも........
あいつが戻って来てから、蓮也の様子がおかしくなった。
あの頃の蓮也に戻ってしまったのよ。
まぁ、告白されて付き合い始めた当初は、蓮也はかっこいいし。正直すっごいタイプな男だったから性格は私の方でどうにか矯正しようと思っていた。
でも、どうにもならなかった......。
もう我慢の限界だった。
だから仕方なく......別れを切り出した。
すると蓮也は意外にもものすごく必死に私と別れるのは嫌だと拒んでくれた。
そこからの彼は変わった.......。
それはもう、ものすごく変わった.......。
優しくて思いやりがあっていつも私のことを一番に考えてくれて.....。
本当に幸せだった。
私もそんな彼に精一杯尽くそうと自然に思う事ができた。
でも、そんな彼が急に消えた......。
確かに.....消えてしまった。
そしてそんな中、彼がちょうど戻ってきた。
ありえない。絶対にありえない。
そんなことは私が一番わかっている。
でも、どうしても......
って、あれは......。
西園寺 紗弥加?
ふと、廊下の方の窓を見ると黒髪の美少女がゆっくりと私の目には映る。
ゆっくりと彼、風間颯太を凝視しながら通り過ぎていく彼女が。
言っては悪いけど、あの彼女が何で彼の様な男を?
何の関わりもないわよね。
でも確かに彼女は今、彼のことを......
やっぱり色々とおかしい......。
一体、何がどうなっているの......?
ねぇ、あなたは誰なの.....?
風間颯太