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ウノお兄様とゲーム後半の冒険パートについて話し合っていると長男のセイスと長女のシエテがやって来ました。まだ6歳ですが、見かけは王国人の12歳くらいで中身はもっと成熟しています。ひと月ほど前に次代を支える彼らにもゲームの話をしておいたのです。
「お母様、アイン様はゲエムではごう慢な性格をされているとのことでしたが、王都に送ったスパイによりますとどちらかというと人みしりで大人しい方であるようです。」
なるほど、周りにチヤホヤされなければ性格も変わりますわよね。お顔のヤケドを隠すために私が毎年お贈りしている昆虫の頭をモチーフにした仮面が都会育ちの若者たちには不気味すぎてツヴァイとドレイにすらやや距離を置かれているそうです。
「ヒュンフェ様はお目が不自由なためかお化粧とファッションがイマイチでお気の毒でしたので腕の良い侍女を数人おそばに送り込んでおきました。」
「伯父上、北の山地の民族は全てわが国の支配下に入りました。来週からクワトロ父上が選んで下さった生物学者と地質学者を率いて古代竜の探索を開始いたします。」
北の山地の古代竜ねえ。確かにゲームでは後足で立ち上がった巨大爬虫類が聖女ヒュンフェの放った巨大な矢に貫かれて浄化されるスチルがありました。でも、思い出してみるとヒュンフェ自身はそのスチルに入ってなかったんですよね。だから、普通の大トカゲを普通の矢で殺しても同じ感じの絵になるんじゃないでしょうか。
しばらくして北の山地でコモドドラゴンよりひと回り大きい爬虫類が見つかりまして、オオモドドラゴンと命名しました。オオモドドラゴンの生息地の標高はかなり高く、赤道直下でも相当に寒いです。そのためか、卵の中の胚の成長が低温のため止まっても温めると再開するという特性があり、気候によってはふ化までに何十年もかかることがあるそうです。
セイスのチームは山頂付近の、万年雪に半ば埋まった洞窟の中から氷漬けになったオオモドドラゴンの卵をいくつか採集して来ました。どうやら現在はミニ氷河期らしく、地元民によれば少なくとも過去500年は万年雪が消えていないそうですから、これらの卵から生まれるオオモドドラゴンは古代竜と呼んでも差し支えないでしょう。卵を温かい場所に移して、ふ化寸前まで育てたところでまた氷詰めで保存しておきます。必要な時に再び温めてふ化させれば、数日間は皮膚が柔らかいですから非力なヒュンフェの射た矢でも十分殺せるでしょう。その後、浄化作用のあると言われているローズマリーやタイムなどの香草をたっぷり使ってローストすれば美味しく頂けて一石二鳥ですね。これで後半の冒険パートもなんとかなりそうですわ。