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戴冠から4年、私は13歳になりました。子供たちはスクスクと育っております。ウノお兄様と夫たちはバリバリと働いてノルテ国は経済的にも文化的にも見違えるように発展しました。周辺国の領で本国を捨ててノルテ国の傘下に入るところも出てきました。飛び地でない限りは受け入れて、とりあえず植民地としてわが国の軍隊の保護下に入れた上で、住民全員が生活習慣をノルテ風に改め3年経ったら市民権を与えるということにしました。ただ、サカサマタタビは暖かい地方でしか栽培できませんので、南の方に領土を広げるのは難しいでしょうね。まあ、あまり領土を広げすぎると防衛も内政も大変になりますからほどほどにしておくのが良いでしょう。
日々の多忙な生活で忘れがちですが、南の国境を接する王国のアイン王太子殿下との婚約は継続しています。私はノルテ人的には働き盛りの成年女性ですが、王国的に見ればまだデビュタント前の子供なんですよね。王国の貴族は13歳から15歳までの3年間、王立学園に通わねばなりません。シナリオでは王立学園の在学中に悪役令嬢フィーアのわがままざんまいが初めて家族以外の人々に知られて悪評が広がり、アイン様に嫌われ始めます。3年目には2歳年下の義妹ヒュンフェが入学し、明るく無邪気な彼女にアイン様は想いを寄せるのです。
3年間というのはノルテ人にとってはすっごく長い時間です。子供達が可愛い盛りの時期に学園の寮に入って家を留守にするなど考えられません。そこで、王立学園に働きかけてノルテ国との国境の街に分校を作らせました。校舎の建築の費用を出して周辺各国から優秀な教師陣を招くと言ったら向こうは飛びつきました。
それでも国境の街まで普通に馬車で行ったら何時間もかかってしまいますから、鉄道を作りました。公害のもととなる蒸気機関はありませんので動力はチョコバードです。さるシリーズものの有名ゲームからパクったと思われる大きな黄色い飛べない鳥です。乙女ゲームの中では山岳地帯で馬に代わる乗り物として使われていましたが、サカサマタタビを食べさせるとトリップ状態になってすごい勢いで走り続けることができるのです。
チョコバードに車両を直接けん引させるのは速度の調節が難しいですし、悪天候の時にかわいそうです。クワトロが開発したのは、先頭車両に据え付けた回し車の上でチョコバードを走らせて、そのエネルギーを推進力に使うシステムでした。車両を止めている間や下り坂では回し車が発電機につながって電池が充電される仕組みになっています。ハイブリッド車みたいなものですね。これで通学時間が片道1時間半に短縮できました。
私とウノお兄様は通学ですが、3ヶ月交代くらいでノルテ女性を何人か女子寮に住まわせることにしました。悪役令嬢には取り巻きが必要ですからね。皆様すでに後継を産み終えてらして、ちょっとしたバカンスとして好評ですわ。もちろん彼女らのパートナーは男子寮に滞在しています。王国人との色恋ざたに巻き込まれるのを避けるために、表向きはきょうだいではなく婚約者同士ということになっております。




