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1.

「ーー公爵令嬢フィーア、ーー婚約破棄ーー、極北修道院に生涯幽閉とする。」


 あまりのテンプレに気恥ずかしくて全文を書けませんでしたわ。なるべく簡潔にご説明いたしますね。私フィーアの長年の婚約者だったアイン王太子殿下が義妹のヒュンフェに惚れ込んで、私の罪を色々並べ立て、婚約を破棄し、王国の最北端にある修道院に幽閉する決定をされたのです。後から入場された国王陛下は眉を少しひそめられましたがアイン様の言葉を否定する事もなく、私の処分はあっさり決まったのでした。


 しかし!皆様方のご想像の通り私は前世持ちの転生者でして、この婚約破棄騒動が前世で私が死ぬ直前にやっていた乙女ゲームの内容に沿ったものである事を神様に知らされていました。


『我の手違いで死なせてしまったそなたの最も大きな心残りが例の乙女ゲームだったゆえにそれを元にした世界を作ってそこに転生させてやることにした。そなたの最推しだった悪役令嬢になれるのだぞ。嬉しいだろう?』


 そう、確かに私の最推しはゲーム制作会社に恨まれているとしか思えない、悲惨な運命をたどる悪役令嬢でした。悪役令嬢フィーアの末路はヒロインのヒュンフェがどのヒーローを選ぶかによって決まっています。王太子アインのルートでは極北の修道院に幽閉されて30歳を前に病死し、宰相の息子ツヴァイのルートでは宰相家の私兵に慰み者にされた末に娼館に送られて変態の客に殺され、大神官長の息子ドレイのルートでは魔女として聖騎士たちに拷問されて火あぶりになります。どのルートでも悪役令嬢は同じ日に生まれた王太子の婚約者で、断罪は18歳の誕生日パーティの日に起こります。


 悪役令嬢がハッピーエンドになる隠しルートがあるのではないかと私は何度も何度もそのゲームを繰り返しましたが、とうとう見つけることができませんでした。メインの攻略対象者すら3人しかいない安物ゲームに隠しルートを期待する方が無理だったのでしょうね。でも、いくらそれが心残りだったといってもゲームの世界に生まれ変わりたかったわけではありませんし、最推しだからといって本人になりたかったのでもないのですけどね。他の世界、あるいは別の登場人物に変えてもらえませんかと神様におうかがいしましたが一度決まってしまったことはダメだそうです。事前に意見を聞いて欲しかったです。


『あ、それから我も知らなかったのだが、ゲームを元にして世界を作ると、ルートを選ぶ事はできるんだけど、その大筋は変更がきかないらしいんだ。強制力ってやつね。だから、いちばん長生きできる王太子ルートを選んで何とか変えられる設定は変えておいたから。それじゃがんばってね。』


 神様はそそくさと姿を消し、次の瞬間私は赤ん坊になって産婆の腕の中でぎゃあぎゃあ泣いていたのでした。生まれたばかりだというのに自分の余命を知らされているなんてひどすぎます。でも、涙が枯れるまで泣きわめいた後、私は心を切り替えて人生を30年余計にプレゼントされたのだと思い直しました。

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