ヨルノマチ
世界が息をしていないみたいだ。
沈黙に覆われた闇夜を眺めながら、私はふと詩的な感想を抱く。
無風の夏の夜は暑苦しく、せめてそよ風でもいいから吹いてくれと願う。
早く冬にならないか。
そんなことを考えながら、1人公園に向かった。
公園の敷地に入ると、真ん中でぐちゃぐちゃになった肉塊が落ちていた。
自分の身長とほとんど同じサイズだ。
縦も横も、大体同じ。
ピンク色の屑肉。
骨や目玉、血液も多少混じってる。
生ゴミみたいな臭いを漂わせ、気泡みたいにぷくぷく煙を吐いている。
こいつは私が夜に隠していた醜い顔だ。
私が見たくないと、見せたくないと思っていた、醜い顔。
こいつはどう頑張っても死んでくれないし消えてくれない。
「いつまでそこに居座る気だ、私」
呟いても何も変わることはない。
ただ臭い煙を吐き出すだけ。
生ゴミのような、腐った臭い。
吐き気がする。
これが自分の本当の姿だと知られることも嫌だが、自分こそがそれを知っているという事実にまず吐き気がする。
いつになったら消えてくれるんだ。
いつまでもここに居座るな。
早く出て行け。
その下に、お前は何があるのかわかっているのか。
小さい頃からそこに吐き溜めた。
嫌な物全部ぶちまけて、そこに押し込んだ。
ぶくぶくぶくぶくと成長して、今やこの有様。
私はタンを吐き捨ててその場を後にする。
今日も星空が見えない。
月明かりにすら見放された街を、自宅に向かって引き返す。
あぁ、今日も終わりがやってきた。