転生道中その1
受験終わったのでまた再開します。
う、うーん
何か色々あったような…
色々…はっ!
「此処は何処だ?」
「時之洞穴よ。」
「いたのか…。」
起き上がろうとして体の節々が痛いのに気付く。
「痛いんだが。」
と、文句を言うと
「?」
何言ってんだコイツ?みたいな反応をされた。
―殴りたい。
湧き上がる殺意と痛みを我慢し、起き上がって辺りを見回す。
―そこは洞穴というか洞窟だった。
壁面は、ごつごつしている。所々に七色に光る鉱石が顔を出しており、何とも言えない“神々しさ”が漂っている。
そして自分の目の前には、言葉にできない程大きな湖。
「あの湖は何だ?」
「世界の事象を記録する、『追憶の湖』よ。本当はここには来たくなかったのよ。だって…」
―水面にさざ波が立つ。
「珍しいわね。人間がココに来るなんて。ようやく貴女のような野蛮人にも娶ってくれる殿方ができたのかしら。ねえディア?」
ディアが苦々しい顔になった。
―今気付いたのだが、実はこの女神、結構美人なのではないだろうか?
まあ、行動がアレだから残念感が強いけど。
そんなことを考えている儂を尻目に二人の”和気藹々”とした雰囲気になっている。止めたほうがいいな。
「まあまあ落ち着いて。して、そちらの方は?」
「記憶神よ。」
「あっ、今名乗ろうとしたのにぃ。」
「ウルサイわね。」
「へえー。貴女オジサマ系が好きなの?あ、どうも。『記憶神』のシュネでーす♪」
…近い。何とも言えない良い匂いが、鼻孔をくすぐる。
「ねえ。彼に色目を使うのはやめてくれないかしら。」
「凄惨な顔になっているヨ?」
はぁ、と嘆息してディアは、
「勘違いしているようだが、彼は『勇者』候補だ。本当に手を出さないでくれ。」
「へえー400年ぶりだねぇー、『勇者』なんて。今回はディアちゃんが選んできたんだ。じゃあ、私も何か上げないとダメ?」
「その為にここに来たんだろう?」
「現金だなぁ。」
一つ、気になったことがあったので聞いてみる。
「勇者ってなんだ?」
途端に辺りがシーンとなる。
「…教えてなかったの?」
「それどころじゃなくてな。」
「あきれた。私が教えろと。」
「すまないな。」
はぁ、とため息をついてシュネは口を開く。
「『勇者』っていうのは『魔王』を倒す者が必ず持つ職業の事よ。あなたが今から行く世界には、どんな者にでも最低1つは職業という自分の役割のようなものを与えられるわ。その世界に住む住人たちは基本的に、それに従う。『兵士』であれば軍へ、『鍛冶師』であれば奉公へ。」
「勇者であれば、強くなって魔王退治へ。ってことか。」
「そうね。ただ『勇者』の力は強大なの。人一人一人が持つ許容量からあふれるほどにね。だから私たち神々は、別の世界の人間を『転生』というプロセスを経て、器をリセットし、知識や経験、習得した技術というアドバンテージを持った人間に勇者やそれに準じる力を与えるのよ。」
…なるほど。自分が選ばれた理由はそれか。
「おいシュネ。」
「ディアちゃんなあに~?」
「それで、何を渡すんだ?視たところ鋭刃の許容量は相当なものだぞ。」
「う~ん、職業、『未来観測者』とか、『先導者』を渡そうと思っていたんだけど…あ!」
記憶神シュネはこちらを見てにやりと笑い、
「私の眼を上げるよ」
「っ!シュネ、それは…」
「いい加減うんざりしてたんだよね、あの世界に魔王が生まれてから。定期報告は義務付けられるし、「いやそれはその前かr…」あれの責任取らされて神格は下げられるし、悪魔も天使もゆうこと聞かないし、肝心の勇者は魔王を倒しきれないし…。だから、ほんとはあの世界の『守護霊』になるはずだった司之森鋭刃、貴方に託したい。たとえそれが禁忌に触れることになっても。」
それは覚悟。
世界が創られたその日から今日まで、あらゆるものの記憶を見てきた者としての責任の取り方なんだろう。もっとも、見た目のゆるっとした感じは隠せないが。
「分かった。どうすればいい?」
「こっちに来て目を合わせる。それだけでいいわ。」
「…こうか?」
「ええ。じゃあ、行くわよ…
その瞬間、何かが抜き取られる。
と、思った瞬間、膨大な量の情報が頭の中に流れ込んできた。