転生…?
「じゃあ、転生の儀式を行うから、とりあえずちゃんとした服に着替えて、貴方の一番大切なものを
持ってきなさい。」
一番大切なもの、か。恐らく女神ーディアの言っているのはアレなんだろうな。でも何の為に?
「分かった。10分後に戻る。」
「あ、あとこの家の中で一番古い物はどれかしら?」
「テレビだ。」
そう言って鋭刃が指したのは、アンテナがV字になったダイヤル式の白黒テレビ。
その保存状態はとてもよく、今でもはっきり画面も映るほどだ。
「4K放送があるこの時代にこんな遺物が…」
憐憫のまなざしでじっと見つめられる。
ーなんだろう、褒められておらん気がする。
「ま、まあとにかくそれが一番古いのじゃから、よろしくな。」
「え、ええ。」
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―10分後―
「何その恰好…?」
「何って…軍服だが。」
―そう。儂は旧帝国海軍少佐時代の純白の礼装に身を固め、腰に右には九四式自動拳銃、左には我が家に代々伝わる刀『始幻』を吊るしている。
「確かに、少し物々しいか?でも動きやすいし『ちゃんとした服』だが?」
ディアは半ば諦め気味に嘆息し、
「もういいわ…。とりあえず転生の説明をさせてもらうわ。今からこのテレビに神技:『時ノ洞穴』を施すわ。」
「ふむ。して、転生先の情報は?」
ディアは少し考え、
「それは道中で話すわ。」
「そうか。って、ん?」
「じゃあ行くわよ!」
「え、ちょ!」
―ちょっと待って、という前にディアはテレビに銀白色の魔方陣を描いた。
それは空間にとどまらず、次元さえも超越して歪み、
ふわり、と体が浮いたと思ったら、次の瞬間儂は真っ暗な闇の中にいた。
―ああ、あの女神に投げられたのか。と気づいた事が酷く昔の事のように思えた。