神の証明
儂が断ると女神は急に慌て始めた。
「どうして?異世界に転生して人生やり直せるんだよ!祝福も貰えるから俺TUEEEEだってできるし!剣の神髄にだって行けちゃうかもだよ!魔法だってあるし!」
「すまない、興味がない。」
「はぁ?」
「そもそも、だ。儂は神なんて信じないし、異世界云々なんて以ての外だ。新手の暗殺なら早いとこ帰れ。」
ジッと見つめ合う。
「神ってことを証明したら?」
「お前の言う事でもなんでもできる範囲内でやってやる。」
女は暫しの熟考の後、
「わかったわ。証明する。」
…ふむ。帰らなかったか。ならば、
「分かった。そういえばさっき『剣神』と言っていたな。おぬしの力量を見極めてやる。木刀を使った1対1でどうかな?」
「…いいの?」
「どういうことだ?」
「瞬殺しちゃうよ。」
…舐めているが、大人だからな。寛大な心で許してやるとしよう。
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深夜の道場にて。
「じゃあルールは
・1対1
・使うのは木刀のみだが、体術も有。
・勝敗はどちらかが負けを認めるまで。
・開始に合図は無し
でいいんだね?」
「ああ。」
剣の勝負をすることにした。本当は剣術だけにしようかと思ったが、出会った時を思い出し、体術も有にしてやった。
木刀を持つ。深呼吸。木刀は下段に構えて、腰を低く落とし、抜刀術の構え。
対する女の方は、至って自然体。しかし、一見すれば殺気も何もないが、儂には分かる。
―この女、隙がない。
常に全方位に張り巡らされた意識、正眼の構えをしないことからもまるで夢幻流を知り尽くしているような気がする。ならば…
「行動の視認速度、反応速度を上回る速さで繰り出す。ただそれだけだ!」
一足で懐に入る。すれ違いざまに抜刀…と思わせ、後ろから、
―夢幻流、即製抜刀術『神閃』
背後から放った一閃はきまった…かのように見えた。
―神速の剣技。
まさに神懸った一刀。
全く此方を見ることなく、背後の攻撃を剣だけで受け止め、明後日の方向に木刀を弾き飛ばす。そのまま振り向きざまに全く視認できない速度で一振り。
―首筋には木刀が当てられていた。