序章
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「カラン」
木刀の落ちる音が響く。
何が起きたのか理解できない。
首筋には冷たく硬い木刀の感触。
「さあ、約束を守ってもらおうか。」
女はそう言って神々しく、
嗤った。
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―30分前―
「せいっ」
「む、甘い。」
繰り出される突きによる連撃。完全な死角からの攻撃はしかし、ひらりとかわされ、腹への一撃をお見舞いされる。
「グフッ」
宙を舞い、ドシャアと落ちる体。そのまま少年の意識はフェードアウトしていった。
儂―司之森鋭刃は此処、「千刃村」の道場にて、剣術を指南している。
その名も「夢幻流」
日本7大流派の一つであり、かつて「最強」と謳われた流派だ。その特殊性から、「絶対に習得できない流派」と言われている。
それもその筈、何せ夢幻流には型が無いのだ。求められるのは、驚異的な身体能力と、知覚速度、そして柔軟性だ。
まあ、その話は追々しておこう。
今日の稽古を終えて、弟子を帰す。家に帰って携帯を見ると、
「ピロン♪」
む、メールか。どれどれ・・・差出人不明だな。誰からだろう?
「おめでとうございます!あなたは厳正なる審査の結果、神の使いとして、『第2世界魔王討伐会』の実行役に選ばれました!
尚、このメールを見て1秒後に振り向けば、後ろに『居る』ので、気をつけましょう!」
ふむ。よく分からないが、そういうことか。
ゆっくり後ろを振り向く。そのまましゃがみこむと、頭上に空を切る音がした。回し蹴りをしつつ、バックステップで襲撃者との距離をとる。
「へぇ、この速度に反応してくるか。さすがは『元』世界最強の剣士だね。」
そこに居たのは、クールビューティと言う言葉が良く似合う長身細身の女だ。一切の気配、殺気を断っていた。
それよりも今、聞き捨てなら無いことを聞いた。
「すまない。自分で言うのもなんだが、儂は一度も負けた覚えはないぞ。それよりも名を名乗れ。」
「剣神」
間髪入れずに女はそう言った。
「神はなんでも知っているんだよ。過去のことも、未来のことも。」
ほう、「なんでも」か。
「この奇怪なメールとお前が現れたことは、何か関係があるのか?」
「書いてあるでしょ、『実行役』を迎えにきたんだ。」
「儂か?」
「それ以外に誰がいるの?」
そのまま見つめ合う。
「返事は?」
「断る。」
間髪入れずに言ってやった。
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