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あたたかい手
大好きだった。ありがとう。
「ニャー」
「どうしたの?」
さようなら。
大好きだった。この色とりどりの部屋も、ふわふわな布団も。そのあたたかい手も。
ふり向かないよ。
ふり向いてしまったら、ここにいたくなるから。
側にいたくなるから。
そろそろさようならだから、ここにはいれないの。
声も出せない。
いたいと言ってしまいそうだから。
「ニャー?」
最後に話しかけてくれた声。
忘れないよ、忘れない。
元気な姿のままでいさせてね。
夢の中でまた会いましょう。
大好きなその、あたたかい手と。




