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赤い靴 履いちゃだめ。  作者: 佐々木
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二話


夕焼けの中。一人で歩く私は、なんだか何か大切なものを見失ってしまったくらいに、心に大きな穴が開いたみたいに、寂しかった。



「ただいま。」



返事なんて帰ってくるはずない。



靴を脱ぎ棄て、リビングの電気をつけた。



「ただいま、お父さん、お母さん。」



写真が返事なんてするはずない。でも。こうやって挨拶するのは私の日課。




「ごはん……。」



いっか。別におなかがすいてるわけじゃないし。



私は何も考えたくなくて、ただソファーに倒れこんだ。



「引っ越しかぁ。」



不意にテーブルにあった資料が目に入った。お父さんとお母さんが事故で亡くなってから、そろそろ1年。今までは思い出の詰まったこの家にとどまっていたけど、中学三年生が一人で住むにはだいぶ広い。親戚の家が近くにあるから、面倒は見てもらっていたけど。




「高校決めたらにしようかな。」



引っ越しというよりは、寮とか、親戚の家にお世話になるかもしれない。


それはそれでいいかな。なんて思っちゃったりして。




頭でぐるぐる考えているうちに、私はそのまま眠ってしまった。
















「…!い、ず……。」



何か声が聞こえる。



「お……、……も!」




とぎれとぎれで聞き取りにくい。



「起きろ!出雲!」



「っはっ」



急に聞こえた声に私は驚いて、自分の目を開けた。



「春樹?」



目の前には春樹。何か焦ってるようだけど、何かあったのだろうか。



「出雲、やっと起きたか。」



「何?」



そういえば、私は自分の家のソファーで寝ていたはず。なぜ今春樹が目の前にいるのだろうか。



「夢?」



そう考えるのが一番早かった。なんだ。私は夢でも春樹のことを考えていたのか。



「夢、だったらいいけどな。」



それでも春樹の深刻そうな顔は変わらない。



「えい。」



私はどうせ夢だろうと思い、春樹の頬をつねった。それも思いっきり。



「痛って!何すんだよ。」



あれ……?



「夢じゃない?」



春樹は少し涙目になりながら、


「お前さ、そういうのは自分の顔で確かめるもんだぞ。」


と言った。



「ごめん、ごめん。」



私が適当に誤っても、そういう問題じゃなんてこぼしている。




私は上半身を持ち上げ、周りの状況を確認した。



暗い。下は、冷たいタイル。壁は、掲示物で埋め尽くされている。天井は、細く、蛍光灯が付いている。少し右には、「職員室」の文字。




どうして私はこんなにも冷静なのだろうか。




「学校……。」



私が知っている場所でこの条件が備わっているのは、学校ぐらいだった。



「多分な。」



私たちは、今。おそらく学校の廊下にいる。春樹も周りをきょろきょろと見渡し、険しそうな顔で言った。



「なんでここにいるの?」



「俺もわからない。ただ、目が覚めたら、ここにいたんだ。


それで、出雲が俺の近くに倒れてた。」



私はこの状況にゾッとした。


生まれてこの方幽霊とか、オカルトなんて信じてこなかったけど、この不思議な状況に私は恐怖を感じていた。




〔全校生徒のみなさん、おはようございます。〕




!!



急に廊下中に響いたのは、無機質な放送の声。



どうやらここは本当に学校みたいだ。




〔目が覚めた生徒から、至急、昇降口に集合してください。〕




それだけ言うと、放送はプツリと切れてしまった。



「昇降口。」



もし、ここが私たちの学校なら、昇降口は職員室、つまり私たちの現在地からそう遠くない。



「春樹、行く?」



春樹もまだ状況が呑み込めないようで。



「出雲、俺から離れるな。」



急に発された春樹の一言は、少しおびえていて。


でも、頼りになる。そんな一言だった。









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