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赤い靴 履いちゃだめ。  作者: 佐々木
3/4

一話



「おはよー。」



朝。


私はいつも通り学校に行き、いつも通り挨拶をした。



あぁ、神様。



この退屈な日常はどうやったら非日常になるのですか?




「おーい、三神ミカミ。」



三神。それは私の苗字。




三神とか言うくせして、神にかかわったことなんて今まで一度もないし、神を信じてもいない。


だって、この世界には神なんて存在していない。これは私が15年間生きてきて確信をもって言えるただ一つのことだ。


神なんて。



「三神、三神出雲!」



「うっるさい!」



そう、私は苗字だけじゃない。名前である出雲イズモでさえ、神に関係しているのだ。



「うるさいってなんだよ。お前進路は決めたのかよ。」



さっきからしつこく声をかけてきていたのは、碓氷春樹ウスイ ハルキ



「あー、進路ねぇ。」



何を隠そう幼馴染だ。



小さい頃から一緒にいて、いじめられてた春樹は私が守ってた。



それなのに。



「お前な、そろそろまじめに考えろよ。もう9月だぞ。」



「あ……あの!」



「ん?何か用?」



「えと、春樹君!


昼休み、花壇のところに来てくれないかな?」



「あー、うん、いいぜ。」


「あ、ありがとう!」




なんだこれ。



何でこいつはかわいい女の子にモテやがる。



私のモテキはきっと生まれた瞬間だ。そこで使い果たしてしまった。




「告白?」


厭味ったらしく聞く。



「多分な。」


苦笑いしながら春樹は答える。


「付き合うの?」


「別に。」



そう、コイツは誰に告白されても決して付き合わない。


理由は私でもわからない。



「付き合っちゃえばいいのに。」



私は何気なくその一言を漏らした。



が、



「は?」



春樹は予想外の反応を示した。



「だってさ、あの子、3組の子でしょ?


可愛いし、人気あるんじゃないの?」



私は心ではやばいと思いながらもへらへらといった。





「……出雲、それ本気で言ってる?」



「え?」



私は一瞬戸惑ったが、



「まぁね。」



とごまかした。



「あっそ。」



春樹はそれだけ言うと自分の席に戻ってしまった。



何に対してあんなにもイラついていたのか、私にはまったく理解できなかった。













「それは、あんたが悪いわね。」



午前中の授業にまったく集中できなかった私は、昼休み、こうして友達の高坂咲良コウサカ サクラと弁当を食べていた。



無愛想な私にとって唯一といっていいほどの友達。




「えー、私なんかした?」



今朝の春樹との一軒を相談していた。



「あんたほんと鈍感すぎ。


大体ね、春樹君見てたらすぐにわかるって。」




「何が?」




はぁー、と大きなため息を咲良につかれた。



私が口をとがらせていると、



きゃぁぁぁと外の方から女子の悲鳴が聞こえた。



「何々?」



咲良は興味深々そうに窓の外を見た。



「あちゃー。」



そして手を額に当てた。



「何してんの?」


「あんたがもたもたしてるからよ、


自業自得。」



咲良が指をさした先には、花壇。



そしてそのそばにいる春樹。


そのそばにいる朝の女の子、とその友達。



「春樹、またふったの?」



「その逆。」



逆ってことは、



「OKしたんだ。」



何か私の胸に大きな塊がのしかかったみたいだ。



「ま、あんたたちは運命なんだから、安心しなさい。」


「何が?」



運命。



そんなのこの世にはない、あってたまるか。













その日は、一言も春樹と会話をせず、


いつもなら一緒の帰り道も、



春樹はあの子とかえっていた。




隣に誰もいない。



春樹がいない。



そんな私の前を、一匹の黒猫が通った。




後ろには、春樹とあの子が夕焼けの中、私には見せない笑顔で笑って歩いてた。





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