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その⑨ ~ 想い出の箱 ~
柔らかな木漏れ日の中、青年と彼女がベンチに二人
青年の膝の上には綺麗な箱がありました、、、
それはなぁに?
尋ねた彼女に、青年は優しく答えました。
「想い出の箱」だよ、、、、、
青年がそっと箱の蓋を開けると、
彼の囁きが聞こえて来ました。
「昔彼女に恋したは
花霞みに萌える春の山
小鳥さえずる春の頃
昔彼女を愛したは
風吹く小川のせせらぎよ
川面波立つ夏の頃
昔彼女に恋したは
茜色の空の下
りんどうの花咲く秋の頃
昔彼女を愛したは
寒く凍える樹氷の日
雪の花舞い散る冬の頃」
彼女がそっと囁きました、、、、、
箱に鍵を掛けなくちゃ、
こぼれ落ちてしまいそう、、、、、
また見たいときに、二人で見ましょうょ
「想い出」もあなたと見れば
きっと未来につながるわ、、、、、
青年は箱に鍵を掛け、
そっと彼女に手渡しました、、、、、
悲しいこと辛いこと、嬉しいこと幸せのこと、
「想い出の箱」ありますか?
鍵を預かってくれる人、
一緒に覗いてくれる人、
そばにいてくれたらいいですよね、、、、、