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秋恋詩

作者: 葛城 壱

詩とも小説とも違うような短文です。

一人称で書くのは初めてで文がおかしかったりしたらスイマセン…。

サクサクと足元で落ち葉が鳴る。

見上げれば、もう残り少ない葉をぶら下げた落葉樹が枝を広げている。

夕暮れの空に赤と黄の葉が風に揺れている。

サクサク…

踏み締める落ち葉の音に何故か笑いが浮かんでくる。

秋だなぁ、と僕は空を見上げたまま呟く。あくまでも独り言のように。

そうねぇ、と君が同じように空を見上げて返してくる。

学校の帰り道、近くの児童公園で寄り道している。

何をするでもなく、ただ二人で並んで公園を一周しているだけ。

けれど、今の僕にはそれだけで充分満足できる。

僕はねぇ秋が好きなんだよ、ぽつりと呟く。

なんで、と君が聞く。

…秋はね、眠りに着くまでの準備期間だから静かで切ないと思うから、だよ。

はらはらと落ちる葉を手で受け止め、僕は語る。

春の桜の散る様の方が綺麗なのに心惹かれるのに、落ち葉が散る様は…こう、切なさを掻き立ててね、好きなんだよ。あと、変かもしれないけど秋になるとポカンと胸に喪失感があってなんかホッとするんだ。

君は何も言わずに、ただ俯く。

何か、他に言わなければと思うのに口下手な僕の口から言葉は出てこない。

サクサク……

二人で並んで落ち葉の上を歩き続ける。

私、秋は嫌い。

君が不意にそう口にした。顔は俯いたままで。

秋はなんか悲しい気持ちになるから嫌いなの、と突き放すように。

ごめん、と考えるよりも早く口からその言葉がでてきた。

君は首を振っていいの、と言う。貴方が謝る必要はない、と。

顔を上げる君とは逆に今度は僕が俯く。

それに、と君が明るい声で付け加える。


それに、私…貴方のおかげで少し秋が好きになれたから…。


顔を上げて君を見ると笑っていた。楽しそうに秋の木々を見上げて笑っていた。

それはよかった、と僕が返す。

君は照れ臭そうにはにかむと、僕の手を自分の手とつながらせた。暖かい感触に僕が驚く。

冷たい風が吹き、落ち葉が流れる。

寒くなってきたね、もう帰ろうか、君が首に巻いたマフラーを押さえて言う。

そうだね、帰ろうか、遠慮がちに手を握り返しながら僕が返事をする。

サクサク…

落ち葉を踏み締め、僕たちは公園を出た。

一歩近づいた二人の距離に嬉しくて僕は願う。出来るだけ長く君と手を繋いでいたい、と。



夕暮れに赤く染まった町に、手を繋いだ二人の影がくっきりと伸びていた。

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