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第一話 極めてテンプレ的な流れで(ry

 7月19日 個人チャット


システム:刹那さんが入室しました。

システム:博麗の巫女さんが入室しました。


刹那:【俺、参上!】

博麗の巫女:【どこの仮面ライダーだお前はw】

刹那:【うるせえ! これが俺の入室時の挨拶なんだよ!】

博麗の巫女:【はいはいw】

刹那:【あ、聞いてくれよ! 俺今度の夏休みに東京行く!】

博麗の巫女:【え? マジで?】

刹那:【おう! お前、東京に住んでたよな! 一緒に遊ぼうぜ!】

博麗の巫女:【おう、いいぜ】


システム:ジノさんが入室しました


ジノ:【こんにちはー】

刹那:【よー】

博麗の巫女:【よっす】

ジノ:【刹那さん東京来るんですか?】

刹那:【おう! ジノは確か博麗と同じ学校だったっけ?】

ジノ:【はい♪ 私も行っていいですかね……?】

博麗の巫女:【お前も来るのか!? しょーがねー奴だな】

刹那:【そう言うなよw】

刹那:【なら東京着いたらまたチャットに来るか、メールするからなー】

刹那:【サラダバー】


システム:刹那さんが退室しました。


ジノ:【お疲れ様ですー】

博麗の巫女:【乙ー】

ジノ:【あ、私も塾あるから落ちるね】

博麗の巫女:【ほーい じゃ俺も落ちるわ】


システム:ジノさんが退室しました。

システム:博麗の巫女さんが退室しました。


 俺はパソコンをシャットダウンさせた。

 暗い部屋で唯一の光源が、フッと消え失せると部屋は一瞬にして何も見えない暗闇の世界と化した。

 

 そのまま机の椅子から降りて、真横のベッドに向かった。

 ボフッとベッドに飛び乗り、そのまま横になる。

 明後日から夏休みだ。

 今までネット上の友人と会った事は数回しかない。まあ、あるだけ俺は異質なのだが。

 

 あいつらはどんな顔をしているんだろう。

 どんな服を着ているんだろう。

 

 そんな事ばかりが頭の中で渦巻く。ああ、今日は興奮して寝られそうにない。

 ベッドから降り、再びパソコンへ向かい合う。

 電源を入れ、四色の旗のマークがディスプレイに現れる。独特の起動音と共に初期設定のままのデスクトップが画面に表示された。


 マウスカーソルをデスクトップのショートカットアイコンの一つ、これまた四色の円のアイコンをダブルクリックした。

 すぐに、画面がとある大手検索エンジンの検索画面に切り替わる。

 キーボードに手を重ね合わせ、よくやるネットゲームの名前を打ち込んだ。


 今日は徹夜でゲームだ。どうせ、明日も授業は少ない。

 俺は、深く伸びをしてゲームに取り掛かった。



 第一話 極めてテンプレ的な流れで(ry



 暑い。とにかく暑い。

 東京の夏はこんなにも暑いのか。


 俺はさっき自動販売機で買った炭酸飲料をグッと飲む。

 渇いた喉を、炭酸がシュワーッと駆け抜けていく感じに、俺は思わず唸った。

 こぼれないように蓋をして、また歩き出す。


 俺は夏休みの間泊めてもらう叔父さんの家がある千代田区水道橋から電車で秋葉原に来ていた。

 そこから歩いて秋葉原のドンキホーテの前で待ち合わせている、チャット仲間の博麗の巫女(男)と、ジノ(女)に出会う予定だ。

 

 東京に来て思った事は、暑い・人が多い。

 どうやら今日は歩行者天国があるようで、道路にはおびただしい数の人で溢れている。

 俺はそんな人の波をかき分けかき分け歩いていく。

 しばらくすると、目的のドンキホーテが見えた。俺は、高鳴る心臓の鼓動を精一杯抑える。

 そして、とうとうドンキホーテの前に着いた。キョロキョロする俺だが、いきなり後ろからポンっと肩を叩かれる。


 ヤバいヤバいヤバい不良ですかカツアゲですかと後ろを恐る恐る振り返る。


「よっす、刹那」

「こ、こんにちわ刹那さん」


 そこにはチャラい格好で茶髪のイケメンと、同じくちょっと色素が薄いのか、透けて茶色に見える髪の色をした短めのツインテールの可愛い女の子が居た。

 俺は二人のセリフと、二人の格好を見る。

 チャラい方は濃い茶色の何やら色々プリントされた薄手のシャツの上に、これまた薄い茶色の半袖ジャンパーを着て、女の子の方は白い長袖シャツを捲り、その上から前の開いた黒いカジュアルベストを着ている。

 この特徴は、事前にチャットで言われていた服装と同じ。と言う事は……


「ジノに、博麗か?」

「おお、やっぱ刹那か!」

「良かった、刹那さんじゃないかと内心びくびくしてました」


 どうやら二人も俺の格好で判断したらしい。

 俺は黒い中袖の、肩の部分が小さいベルトで留められているTシャツを着ていた。そして、首に白いヘッドフォンを付けている。それもチャットで言ってあるから、分かったのだろう。

 

 俺もジノも博麗も、何だか固まって声が出なかったが、博麗がその状況に耐え切れずに吹き出した。

 それに釣られ、俺もジノも笑い出す。

 何だか、ちょっと幸せな気持ちになった。


 俺達が会うのが、これで最後だと言う事も知らないで。


 突然、後ろでキャーッと言う悲鳴が聞こえた。

 博麗が何事かと道路に出る。俺とジノも、それを追った。

 その時、俺が見たのは歩行者天国にも関わらず突っ込んでくるトラックだった。


「うおっ!? 何で歩行者天国なのに突っ込んできやがる!」


 トラックはそのまま歩行者の中へ突っ込んだ。数人が宙を舞う。

 そして、お構いなしと反対車線に居た数台のタクシーと衝突して、停まった。


 ように見えた。

 次の瞬間、数台のタクシーに当たって弾かれたトラックが方向を変え、こちらに突っ込んできた。

 それもさっきよりも更に早い速度で、車線上の通行人を跳ね飛ばしながら。


「危ねえ、避けろ!」


 と言う声を出す間もなく、キョトンとしていた博麗がまずトラックの下敷きになった。

 横を見ると、ジノが茫然としていた。俺は思い切り後ろに引っ張って回避させた。しかし、気が付くとトラックは俺の目の前へ向かっていた。

 人を引っ張れば当然、反作用が働く。

 前に出た俺の体はトラックのフロントガラスに思い切りぶつかって、くの字に折れ曲がる。


「カハッ……!」


 口から肺の中の空気が強制的に絞り出される。ああ、肋骨逝ったな。

 そして俺の軽い体はドンキホーテの店の壁に思い切りぶち当たった。

 横を見ると、まだ逃げていないジノの姿があった。

 涙を流し、足がガクガクと小刻みに震えている。


「ジノ……ッ、早く逃げ」


 俺がジノに何かを喋る前にジノは視界から消えた。

 その代わりに、俺の目の前には巨大なトラックと、壁に付いた血飛沫が俺の視界を埋め尽くしていた。


 愕然とする俺の耳にバタン、と言う音が聞こえた。

 トラックから、デブで髭の生えた作業着を着たオッサンが降りてきた。


「チッ……リア充はさっさと死ね!」


 次の瞬間、オッサンは背後から取り出したナイフで俺の腹を刺した。

 そのまま壁にグッ、グッと押し付けられる。

 俺は血の塊を吐き出した。肺に詰まったものの様だ。


 オッサンはそれに満足したのか俺を置いて、道路に居る通行人を刺しにかかった。

 ああ、意識が薄くなってくる。

 持ってきたデビサバ、まだクリアしてねえのになあ……。

 ……もっと、……やりた、い……事とか……あったのに、……なあ……。


 俺の意識はそこで事切れた。


 その事件は秋葉原無差別殺傷事件と言う名で全国に報道された。

 死傷者数、実に30名を超える戦後最悪の通り魔事件となった。

 テレビで報道された死者の中には、『黒峰真也』、『紀田昇』、『東雲未来』と言う若干15歳の少年少女の名もあった。

 彼らは、刹那こと黒峰真也、博麗の巫女こと紀田昇、ジノこと東雲未来の事だった……。

 

 

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