揃ったところで話がある
時越え武将
第44回「揃ったところで話がある」始まります。
「ただいまぁ」
「お帰りなさいませ清美様」
「いいって、いいって、勝手知ったる我が家なんだからさぁ、それより主人居る?」
「リビングに」
「ありがとねぇ」
出迎えた幸夫に清美は手を振りながら笑顔で応え吉伸の所へ向かう。
「吉ただいまぁ」
「清美おかえり」
吉信を見つけた清美は止まることなく右隣に座ると、腕を彼に巻き付けた。
和美はお茶を三人分用意すると、盆に載せ二人の側にやって来て、
机に置き自らは、吉伸の隣に座った。
「揃ったところで話がある」
「なぁに」
「うん」
二人は彼の顔を見た。
「信繁叔父さんの事だ」
彼は茶を一口飲んだ。
「昨日解った事だが、叔父さんではなかった」
「じゃ誰なの、信基さん?」
「信廉さん?」
信繁、信廉、信基は晴信の影武者として、遠目から見るとよく似ている。
なかでも信繁は、晴信と見間違うほど似ていた。
彼は首を横に振った。
「父上だ」
「えーーーーー」
吉伸の答えに驚愕する二人に、さらなる真相が話される。
「是で解った事がある。当時の俺は、逢う事許されず。謀反を起こしたとして、
幽閉させられた。その意味が」
「そりゃねぇ逢うわけ行かないもんね。逢えばばれるからね」
「親子なんだから」
和美と清美は可能性のある答えを出す。
「その通りだ。だから俺が邪魔になった。
俺の二つ下の弟次郎信親は、幼少の頃失明して海野家なっている。
さらに二つ下の西保信之はもう居ない。
その下の諏訪四郎勝頼は、今一八歳になるが、名の通り諏訪家を継いでいる。
父と俺さえ居なければ、乗っ取れる信玄として」
それを聴いた二人は口に手を当て驚愕する。いち早く我を取り戻した和美が問う。
「でどうするの?」
「俺は、あの家を潰す」
吉伸は手拳を作り怒りを露わにして答える。
「でもさぁ、それって吉のする事なのかなぁ。確かに逢う事も許されず。
幽閉されたとして」
「そうだよね、こっちに戸籍もあるし、
それに、よっしぃはさぁ向こうでは、もう木下家と言う大名だよ。
幾らよっしぃでも勝手は出来ないんだよ。
ここまで広げられたのも大義名分が、あったからだよ。
それはどうするの?今はないんだよ」
清美や和美が吉伸に凭れながら諫める。
「今は義父上の回復を待ちましょ」
清美が吉伸の右拳を両手で包み込むと、和美も同じように左拳を両手で包み込む、
その暖かさが吉伸の身体を駆け巡る。
「ありがとう。もう大丈夫だ。
あっちには俺もいる。完全に俺は別人して存在しているんだよなぁ」
吉伸は両腕を頭上に上げて手を組んで天井を見上げた。
「やるにせよ、やらぬにせよ、どちらにしても計画建てなきゃ、無計画では進まないよ」
清美はお茶を窘めながら、ゆっくりと吉伸を見て話し出す。
「暫く様子を見て決めるよ」
「ならさ、久しぶりに出かけてみない」
「それ、いいわねぇ」
清美の言葉に和美が頷く。
「幸夫さん居る」
「はい、和美お嬢様ここに控えております」
右腕を肘を直角に曲げ腹部に持って行き一礼する。
えっ何時の間に居たのかしら・・・
和美は首を傾げながら声掛けた。
「ちょうどよかった私たち出掛けるから、護衛として響子連れて行くので呼んで」
「畏まりました。少々お待ちください」
幸夫は、一礼し部屋を出て行った。
暫くして急ぎ足で響子がやって来る。
「響子、今日も似合っているね」
「お世辞はいらないよぉー、動きやすさぁ重視したからねぇー何時もと変わんないわよ。
でさぁ、和美達も着替えたらぁ、それとも一人で出来なくなったとか、
ウフフ 手伝いましょうかお嬢様?」
響子は獲物を見つけた時のような目をして和美を見ていた。
長らくお待たせしてすみませんm(__)m
インフルにかかり寝癖がついてしまいました。 今後ともよろしくお願いします。
次回 時越え武将「親だしな」 お楽しみください。