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急ぎとは何事?

縁側に立つ無人斎に呼ばれた一徳斎が見たものとは、


時越え武将 第38話 「急ぎとは何事」始まります

縁側に立っていた無人斎が眺めている方を見ると、山の向こうに多数の煙が見える。

一徳斎は狼狽した。軍師の感がある事を告げている。謙信が動くと・・・

吉伸の御前に座ると平伏して、


「急の来訪にも拘わらず、膳まで頂きし事ありがとう御座います。

つきましては、急では御座いますれば即急に戻りたく存じます」


「あい、解ったが暫し待たれよ」


吉伸の返答に疑問を感じつつ見ていると、


「清美、行ってくれるか」

「いいよ、あなた」


清美と呼ばれた近江殿の右側にいる。近衛牡丹の羽織を着た女人が返事をしながら、

箸を置くと立ち上がり、目の前で座ると手を差し出し、


「貴方方を送って行くわ、貴方達こっちに来て」


又兵衛は狼狽し、こっちを見ながら合図待ってる。

わしは頷き、此方に来るように即するとわしの横に座り直す。


「私は吉伸の妻の一人で近衛前久の妹、別に食ったりしないから、

身構えなくてよろしくってよ」


近江殿の方に向き返り、又兵衛の方に左手、わしの方に右手を早く、

捕まりなと言わんばかりに差し出された手は、開いたり閉じたりしている。

わしは、またも又兵衛に頷くと二人でその手を掴む。


「では、整いましたので行ってきます」

「気をつけてな」


※シューン


手を掴み暫くすると、その手は逃げるように手を引っ込めたように思えたが、

彼女を見ると平伏している。


「初めまして、木下近江守が妻清美、一徳斎殿が急用があるとの事なので、

送りに来ました。前触れより先に到着した事お許しください」


誰に行っているのかと思い顔を上げると、彼女の前には近江殿でなく御屋形様が居た。


「一徳斎、急ぎとは何事」

「はっ、今宵謙信動く気配有り」

「何うえそう思う」

「はっ されば」

「この夕餉の煙に御座います」


清美が二人に口を挟み気になっていた事を聴く、


「恐れながら申し上げます。今別働隊はいずこに、此処にいるなら吉、道中なら停止させた方が良いでしょう」


御屋形様は彼女を睨んでいるが、彼女は臆せず勘助を一目見て、


「キツツキ戦法失敗です」


彼女はわしの言いたい事、言ってくれているされば・・・


「今何処ぐらいにいますか」


御屋形様は一息つくと、


「十二ヶ瀬辺りかのう」

「では、別働隊には茶臼山にて停止を命じてください。ではわたくしは帰ります。

御義父上ごきげんよう」


※ シューン





突現目の前から消滅した彼女をいや、彼女のいた場所を眺め、

呆然としている信玄に声掛けた。


「御屋形様」


現実世界に戻された信玄は、別働隊の指示を勘助に任せ残った一徳斎に、


「なぁ一徳斎、彼女何者だ」

「そうですなぁ、伊賀の木下近江守吉伸の奥方の一人で、関白近衛前久公の妹君とか」

「忍びか」

「いや、そうでは無いような、歩き方が普通でしたから」


首を傾げ、思い出しながら答えた。


「では、何故消えた」

「解りませぬ、ただあの城にいる者、今は敵でも味方でもないと言う事しか」

「それは」

「近江守が言った言葉です」

「されど、味方ではないのか、御主を此処へ送り込んだりするのだから、」

「それは拙者が早く戻りたいと言ったら、近江守があの娘に指示しただけですので」

「されど、最後にわしの事父と言ったぞ」


二人は考え込んだ。


味方にできないものかのう



タッタッタッ


「ただいま帰りました」


広間では、膳を前に皆で囲みながら話している所、中央では清美が帰ってきて、

まっすぐ吉伸の右手側に行くと、もたれ掛かるようにして抱き付いた。

その様子を見ていた和美は右手で頭を抱えた。


「お帰り、清美」


吉伸は 清美の頭をなでていた。

それも腕の近くに頭があっただけであり、清美にとっては早く逢いたかっただけに

過ぎないのだが、急に抱き換えされ、なでられて周りの視線を感じ、

真っ赤になっていき、


「あわわわ」


なんて心の声が漏れていた。


「殿、お戯れはほどほどに、後でゆるりとしましょうに」


和美の言葉に、



「そうですあとでゆるりとね、和美と、 うふふふ」


真っ赤になった笑顔を和美に目併せて言った。

吉伸は納得しながら、清美に廻した腕を放すと、清美は姿勢を正した。

吉伸は生徒達に、


「今宵は面白き事と成ったがまだまだ夕暮れ、またとない戦国を楽しんでくれ」


楽しんでいます、はい、おーー、解りましたぁ、など生徒達の返答がしているのを聴いて、

吉伸は、また一献傾けた。






次回 時越え武将 39話 「あのたわけが・・」お楽しみに

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