空が堕ちてくる
ああ、空よ
貴方はそこに漂い静かに揺蕩う
ああ、私の空よ
ここに来て私を抱きしめて離さないで
空よ
空よ
地上に這う私に貴方の愛は届かないの
私は願う
共にあることを
堕ちてきて
ああ、だめよ
月は連れてこないで
貴方は夜、星々を抱いて眠る
貴方が眠る間、私は夢を見る
ああ、だめよ
太陽は連れてこないで
貴方は昼に太陽と遊び肌を焼く
貴方が遊ぶ間、私は文字をなぞる
ああ、だめよ
宇宙は連れてこないで
貴方はいつも宇宙に包まれて過ごす
貴方が包まれている間、私はひとり
堕ちてきて
ねえ
ここに来ていいのは貴方だけ
空よ
空よ
空よ
堕ちてきて
青を抱いて
白を呑み込んで
光を放って
空よ
空よ
空よ
七色の瞳
七色の声
七色の香り
貴方はまるで透明で
全ての色に染まる
無垢な赤子のようでいて妖しい老人のようでもある
貴方は何者なの
私は貴方を知っているつもりで何も知らない
ずっと前からそこにあって私を見守っている
ねえ
教えて
貴方を教えて
その全てを教えて
私の髪
梳かせてあげる
私の奥
覗かせてあげる
私の心
触れさせてあげる
堕ちてきて
貴方の全てを捨てて
貴方の在り方を定めて
貴方の隣を埋めて
堕ちてきて
貴方が眠っている間に
その指にリングを通したわ
その首に印を残したわ
その唇に魔法をかけたわ
貴方が遊んでいる間に
その輪郭を言葉にしたわ
その指先を詩にしたわ
その背中を歌にしたわ
貴方が包まれている間に
その幸せを願うわ
その安堵を怒るわ
その馬鹿さを笑うわ
堕ちてきて
私は時々、貴方が嫌になる
そういう時、海に潜るの
深く
深く
深く
そうしていると息が苦しくなって
また貴方を求めてる
堕ちてきて
私は貴方を星々のように抱いて眠れない
私は貴方を太陽の明るさで照らせない
私は貴方を宇宙のように包みこめない
私はもう
私はもう
私はもう
ここで待ってる
いつまでも待ってる
だから
堕ちてきて
「「例えば貴方を空に喩えます」」
「「そうしたら貴方は私を」」
「「愛してくれますか」」
私は月になる
私は太陽になる
私は宇宙になる
そうやって貴方と過ごす
貴方が空で
私も空
そうやって貴方と過ごす
過ごす
過ごす
過ごす
疲れた
少し疲れた
離れていく
貴方が離れていく
月を返します
星々を抱いて眠って
太陽を返します
遊び肌を焼いて
宇宙を返します
いつまでも包まれていて
私は風になる
貴方が海に潜る時
貴方は誰を想っているの
私は海には潜らない
私は風だから
気ままに吹いて
空を仰ぐ貴方の頬を静かに撫でる
ねぇ
この気持ちを教えて
ねぇ
貴方の気持ちを教えて
貴方が離れたの
私から離れたの
理由もなく
感情もなく
時間もなく
ふたりは離れたの
ただひとり
ひとりの空を待つ
だから
堕ちてきて
「「ただひとり」」
「「ひとりの空を待つ」」




