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3話 ズレた写真

引っ越してから、なんだかんだで3年が経っていた。

私は小学3年生、妹の門音は保育園に通う年長さんになっていた。


「お姉ちゃん、おままごとしよう!」


門音は笑顔で私を誘ってくる。


「えー、またやるの? 一人でやってよ」

「やだ! 早くー!」


私はため息をつきながら、妹のおままごとに付き合っていた。


——そんな風に、毎日を普通に過ごしていた。

たぶん、私が気づいていなかっただけで、何かはもう起きていたのかもしれない。

でも、そのときはまだ、私たちの日常は“普通”に見えていた。


ただ一つ、不気味だったのは——

家の中で写真を撮ると、決まって白い玉が数個、写り込んでいたこと。

家族みんなで、少し気味悪がっていた。


それから、門音が寝言を言うようになった。


「……お腹が痛い……くるしい……」


心配になって、私と両親で起こすと、

妹はけろっとした顔で起きて、「痛くないよ」と笑っていた。

3人で不思議がるだけで、そのときは深く考えていなかった。


「門音、大丈夫かな……お父さん」

「最近、お腹の調子悪いみたいだし、一度病院に連れてくか。いいよな?母さん」

「……そう言って、病院に連れて行くのは私なんですよね?」

「頼むよ、母さん〜!」


——いつもの光景だった。

お父さんがお母さんに頭を下げる姿。

思い出すと、ふふっと笑ってしまう。懐かしいなぁ。


その後、門音は小児科に連れて行かれたが、診断はただの消化不良。

特に異常もなく、すぐに帰ってきた。


「お父さん、特に問題ないみたいでしたよ?」

「そっか〜! よかった、よかった!」


「明日は鈴の誕生日だし、ケーキでも買ってくるか!」

「ケーキ! チョコがいい!」

「お姉ちゃんばっかりずるい! 私は白いやつがいい!」

「だめ! 明日は私の誕生日なんだから、チョコケーキ!」


「こらこら、二人ともケンカしない!

お父さん、お金渡すので、2つ買ってきてください」


母が財布からお金を出し、父に渡した。


「ああ、分かった! 美味しいところから買ってくるよ!」


——そして、私の誕生日がやってきた。


『ハッピーバースデー! 鈴、お姉ちゃん、おめでとう!』


その声と共に、私は蝋燭の火をふっと吹き消した。


「2人とも、あっという間に大きくなっていくなあ」

「本当に。子どもの成長って早いですよね。門音なんて、この前まで喋れなかったのに」

「そんなことない! ずっと喋れた!」


妹は、父と母の会話に少し拗ねていた。


「そうですね、みんなで写真撮りましょう?

誕生日祝いにぴったりですよね、お父さん?」


「よーし、せっかくだ! みんなで撮るぞー!」


父の声に、門音は少しむくれながらも頷いた。



「ほら、テレビの前に集まって! 撮るぞー!」


「はい! チーズ!」


——カシャ。


「よし、撮れたな! 明日、カメラ屋に現像しに行くから楽しみにしてろよ!」


妹も私も、うん!とうなずいた。


——そして翌日。


父が帰ってくると、私は昨日の写真のことを聞いた。


「お父さん、昨日の写真、見せて!」

「……あー……それなんだけど、撮れてなくてな……ごめんな」


「えー、うそでしょ!? ちゃんと撮ってたじゃん!」


後になって、私は父に聞いた。

——あの写真には、大量の白い玉と、

門音の顔が割れてズレて写っていたらしい。


……たぶん。

ここから、あの家での怪異現象は加速していったのだと思う。



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