006
「国王陛下、王妃陛下、エヴェラルド王太子殿下、ベローナ王女殿下、リュシアン王子殿下、オレリアン王子殿下がご到着いたしました」
「王家御一行様がご入場いたします!」
重厚な扉が開き、足元を見ると赤い絨毯、天井を見ると煌びやかな世界だった。
豪華な服に身を包んだ人たちは頭を下げており、そのなかお父様とお母様が先頭を歩き、その後にお兄様とお姉様、私達が続く。
壇上に上がり、少し置いたらお父様が挨拶を始めた。
「皆の者面をあげよ! 今宵はリュシアンとオレリアンの生誕祭パーティーに集い、感謝する! それではリュシアンとオレリアンから挨拶をしてもらう」
「本日は私達の生誕祭パーティーに集まり、ありがとうございます。皆様方、今宵は是非お楽しみください」
「私からも本日は私達の生誕祭パーティーに集まり感謝いたします。無事に5歳という節目を迎える事ができました。皆様方、今宵はお楽しみください」
リュシアン、オレリアンという順番に挨拶をした。
「それではリュシアンとオレリアンの生誕を祝って乾杯!」
「「「乾杯!」」」
それからパーティが始まり各々が列に並ぶ人、まだ端によって話をする人に分かれた。私達は、というと挨拶にくる貴族が多数いるのである程度は顔を出さなければいけなく、お父様の側にいる事になった。
「国王陛下、リュシアン王子殿下、オレリアン王子殿下、本日はおめでとうございます。
私はシュバルツ公爵家が当主アンリ・シュバルツでございます。リュシアン王子殿下、オレリアン王子殿下きちんとご挨拶するのは初めてですが、陛下より宰相の役職を承っております。王宮では何度かお見かけたことはございましたが、なかなかご挨拶ができず申し訳ありませんでした。
こちらにいるのは息子のカイト・シュバルツと申します」
「わ……私はシュバルツ公爵家が三男……カイト・シュバルツと申します……。今宵は両殿下にお会いでき、光栄です……」
この美青年をどこかで見たことのある人だと思ったらお父様の側で仕えている人か……。宰相だったんだ!
あと息子さんね、緊張しているのかな?
「ご挨拶をありがとうございます。私はリュシアン・ベネディクトと申します」
「私はオレリアン・ベネディクトと申します。今宵はお会いでき光栄です」
「息子は8歳で、年頃も近いので良き友になれるかもしれません」
「その時はよろしくお願いします」
私達がそう応えた後にお父様達が話しているのでその間に宰相達を観察する。アンリ公爵は黒髪で灰色の瞳をした30代くらいの美青年。息子のカイトは黒髪に黒い瞳をしていたが前髪が長く俯いているため顔の造形はあまりわからない。
(レン、この子どう?)
(普通じゃない?)
(でも、この子緊張というよりは怯えていない?)
(うーん、確かに? 言われてみれば、そうかもね)
(この子、友達になってくれるかな?)
(神眼してみれば分かるんじゃね?)
(やっぱり? 私もそう思ってたんだ!)
(《神眼》!)
【カイト・シュバルツ】(8)
状態:健康
魂の色:白
この者は黒い瞳の噂から周囲に不吉な子と呼ばれ、公爵家の子供だが、仲良くなるような者はいなかった。家族は皆、普通に接してくれるが一部の使用人には遠ざけられている。この事を公爵は知らない。周囲から言われもない言葉をぶつけられていくうちに人との関わりが怖くなってしまった。
(ていうか黒い瞳の噂って何?)
【黒い瞳の噂】
特別な色の瞳で魔力量がものすごく多く制御が難しい。全属性魔法に適性があるため魔法を使う者にとっては最適な瞳を持つ。大昔に黒い瞳を持ったもの達が魔力を暴走させてしまい街をいくつか消し飛ばしたことから不吉と噂されていた――――
ただし、この噂はベネディクト王国と数カ国での噂であり一部の国では黒い瞳は最上級の瞳だと言われている。
(なるほどね……。レン~)
(なに?)
(この子と友達になりたい!)
(神眼で何を見たのさ……
(この子ね、全属性の魔法が使えるよ。しかも良い子!)
(へぇ、どのくらい?)
(ちゃんと学べば私達以上かも!)
(はぁ? それ本当に?)
(ほんと、ほんと! 神眼で見てみなよ!)
(……わかった)
(ほら、私の言った通りでしょ!)
(確かに……)
(ね、友達になりたい!)
(まぁいいよ…。相手がいいって言えばね……)
(じゃあこの挨拶が終わったらお父様に言ってカイト君に言いに行こう!)
(わかった)
「国王陛下長々と申し訳ありません。つい仕事のお話をしてしまい……。これにて下がらせていただきます」
「こちらこそ引き留めて悪いな、カイト君も悪かったね」
「い……いえとんでもございません」
「それでは失礼いたします」
「リュシアンにオレリアン、疲れていないか?」
「はい、だいじょうぶです!」
「おとう様、お願いがあるのですが……」
「なんだい?」
「カイト君と――」
「お友達に――」
「「なってもいいですか?」」
「……大丈夫だよ。でも他の人もいるからもう少し待っててくれるかい? あと、2人は自分たちの目で見たものだけを信じなさい」
お父様は私達のおねだりが効いたのか胸を一瞬間抑えた。
「「はい、ありがとうございます!」」
話がちょうど終わったところで、次の人達が歩いてきた。髪が真紅色の薄い緑の瞳を持った女性と、同じく真紅の髪色で薄いピンク色の瞳を持った少年だった。2人とも豪華な服装をしているのでとても動きづらそうだ。
「国王陛下、リュシアン王子殿下、オレリアン王子殿下本日はおめでとうございます。スカーレット公爵家が当主の妻リーナ・スカーレットと申します。隣のは息子のダン・スカーレットと申します――ダン、ご挨拶を」
「ただいまご紹介に預かりました、スカーレット公爵家が長男ダン・スカーレットと申します。年齢は今年で8歳となります。どうぞよろしくお願いします」
「ご紹介いただきありがとうございます。私はリュシアン・ベネディクトと申します」
「私はオレリアン・ベネディクトと申します。今宵はお会いできて光栄です」
「突然で無礼だとは思いますが、私を殿下方のお友達にしてはいただけませんか?」
「私達の一存では決めかねますのでもうしわけありませんが……」
「打診をするならば私達のおとう様にお願いいたします」
「その件については後ほど考えよう」
「ご思案いただきありがとうございます。私共はこれにて下がらせていただきます。失礼いたします」
「失礼いたします」
「「ふぅ……」」
「2人ともあと1組だけいいか?」
「あ、はい……。だいじょうぶです」
「僕もだいじょうぶです」
(リン……。ダンのことなんだけど僕は無理……)
(私も無理……。なんか嫌な感じがする……)
(じゃあダンは無しで!!)
お父様には後で言っておこう。ダンは嫌だっ! てね。次の人達が終わったらカイト君のところに行こうかな……。
最後の2人はどんな人達かな?
1人は髪色が白金色で、瞳の色がエメラルドグリーンのような青みがかった緑色のスラッとした細身の美青年と、同じく髪色が白金色で瞳の色がタンザナイトのような青紫色をした細身の美青年が歩いてきた。
「失礼いたします。本日は御生誕おめでとうございます。私は侯爵家が当主の夫ラザロ・フロンティアと申します。隣におりますのが息子のフェデリー・フロンティアでございます」
「ただいまご紹介に預かりました。私は侯爵家が次男フェデリー・フロンティアと申します。以後お見知りおき下さい」
「本日はお越しくださりありがとうございます。私はリュシアン・ベネディクトと申します」
「私はオレリアン・ベネディクトと申します。本日はありがとうございます」
……この2人の外見の年齢、おかしくない⁉︎ 比べて見ても兄弟くらいにしか見えないんだけど、どうなってんの⁉︎
【ラザロ・フロンティア】 (85)
この者はエルフと人間の間に生まれた子であり、ハーフエルフである。ハーフエルフのため、純粋なエルフと比べて寿命が半分ほどしかないが、基本的に250歳前後は生きる。しかし魔力量にもより、純粋なエルフ並に生きる者もいる。エルフはある一定の年齢までいくと緩やかに歳を取るためそれまでは、若々しく見える。ラザロは侯爵家には婿入りし、当主は妻である。
【フェデリー・フロンティア】(23)
この者はハーフエルフと人間の間に生まれた子であり、エルフのクウォーターである。寿命は基本的に125歳前後まで生きられるが魔力量によりそれ以上に生きる。ある一定の年齢に到達すると緩やかに歳をとる。
「え……。エルフなの?」
私は思わず小さな声が出てしまった。
「リュシアン殿下、なぜ私達がエルフだと? 見た目は人族ですが?」
「失礼いたしました、なんとなくそう思っただけです」
本当は疑問に思っていたら、神眼が勝手に発動しちゃっただけなんだけど……。
「隠していることではありませんが……」
「初めてお会いした方に見破られたのは初めてですね」
「愛し子様達は興味深いですね……」
「まぁラザロ達、その辺にしといてやってくれないか息子達も困っている。
リュシアン、オレリアン今日はな、君たちに先生を紹介しようと思ったんだよ。フェデリーはまだ若いが王立学園を首席で卒業した優秀な生徒だったんだ。それに私の信頼するラザロの息子だった事から、君たちの先生になってもらおうと思ったんだけど、どうかな?」
「「先生……、ですか?」」
「あぁ……。この国の歴史や魔法について教えてくれる先生だ。武術についてはフェデリーに伝手があり、紹介してもらったが、今この場には来れないようだったので、初回の授業で自己紹介をしてもらおうかと思う。……どうかな?」
「「良いですよ!」」
「フェデリー先生、これからよろしくお願いします!」
「たくさんのことを教えて下さいね!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
こうしてフェデリーはリュシアンとオレリアンの教師になる事が決定した。この後はアルフォンソから疲れただろうから会場内なら自由にしてきていいと言われたため、カイトのところへ行くことにした。




