039
「リン様、レン様!」
「「リアン、レオン‼︎」」
転移をした私達はカイト達の声が聞こえ、閉じていた瞼を開けた。
「無事でしたか⁉︎」
「うん、ただいま‼︎」
「そんなに心配しないでよ、僕たちは無事だって言ったし聞いてたでしょ?」
「そうだが、心配なものは心配だぞ」
「そうだよ、急に僕らの前から姿を消すからびっくりしたじゃないか⁉︎」
「とにかく、本当に無事でよかったです……」
カイト達は涙目になっており、本当に心配してくれていたのだとわかった。
「そういえば、あの飛ばされた後の話をしなきゃなんだけど今ここでは言いづらいから違うところで話すよ」
「そうだね、あの後の話は帰ってから話すよ」
「わかりました、それでは急いで戻りましょう」
「なんだか、よくわからねぇけどやばそうな話だな」
「そうだね、なんか聞きたいような聞きたくないような……」
「もちろん、みんな聞いてくれるよね?」
「仲間、だもんね? 僕達を見捨てないよね?」
「もちろんです、私は一緒にいると決めましたからね」
「俺もだぜ! どんな話でもどんとこいって感じだな‼︎」
「……あとはリックだけ、だけど――」
「っ、もちろん僕も聞くよ‼︎ 仲間だもん!!」
「うん! ありがとう‼︎」
「じゃあ、帰ろうか」
◇
私達は王城に戻り、父様達に挨拶をして疲れているからと自室に戻った。その後は防音魔法を張ってからカイト達に転移した後の話をし始めた――
「……ってことがあったんだけど」
「それで、これが龍の卵だよ」
私は無限倉庫から龍の卵を取り出しみんなの前に出す。
「白くて鱗に覆われているんですね」
「しかもでけぇな」
「……この卵、話しかけてくるよ」
「えっ? 私は聞こえないけど……」
「僕も聞こえないよ」
「私もですね」
「俺も、ってことはリックだけが聞こえるのか? なんでだ?」
「リックだけ聞こえるのって……精霊視が原因かな?」
「多分ね、龍も精霊みたいなものなのかもね」
「それで、卵はなんて言っているんですか?」
「あー、魔力をくれって言ってるよ。お腹が空いたって……」
「誰のでもいいの?」
「……いや、リオンとレオンのが欲しいみたいだ」
「……まぁ俺の魔力少ねぇしな」
「私も神の御使ってわけでもないので……」
「なんで私たちな訳?」
「……1番美味しそうだからだって」
「あげてもいいけど、どうやってあげるの?」
「……卵に触ってくれれば良いらしい。1日に1回どちらでもいいから欲しいみたいだよ」
「「……わかった」」
「じゃあ、今やってみるか?」
「そうだね、リンからやりなよ」
「わかった。じゃあ、いくよ?」
私は卵に手を乗せた。
「……っ! 魔力が結構減るね、どのくらい減ったんだろ……」
(リン様、魔力が2万ほど持って行かれています)
(うっそ、そんなに持ってかれたの⁉︎)
(はい、ただし毎回ここまで持ってかれることは少ないかと……。今回は久々の魔力供給だったのではないでしょうか?)
(そっか、教えてくれてありがとう!)
(はい! またわからないことがあればお教えしますよ!)
(はーい)
「魔力が2万くらい持ってかれてたよ!」
「「「に、2万‼︎」」」
「結構持ってかれたね、僕らじゃないと確かに厳しいね……」
「でも、今回は久々の魔力供給だったからでは? だって言ってたよ」
「では、普段はもう少し少ないんですね」
「だと思うよ」
「俺、全然足りねぇじゃん‼︎ しょうがねぇけど。ハハッ」
「僕も足りないね、カイトでやっと足りるんじゃない?」
「そうですね。私は足りますけど、選ばれませんでしたから。ハハッ」
「ねぇねぇ、卵の色少し変わってない?」
「「「え?」」」
「本当だ!」
「確かに……若干黄色くなりましたか?」
「黄色というよりクリーム色になったような?」
「いや、薄紫に見えないかな?」
「まぁ、とりあえず魔力供給ができたわけだし、これを他の大人達に伝えるかどうかだよね」
「うーん、正直難しくない?」
「国際問題に発展するよね?」
「いくら巫女様に伝えてるって言っても限度がありますよね」
「しかもこの卵がどんな龍の卵かも分からねぇんだろ?」
「うん、鑑定には卵としか出ないよ。説明書きの所は全部文字化けしていて読めそうにないんだ」
「私達の方もダメだね。何もわからないみたい」
「僕らでもわからないってことは本格的にやばい卵なのかもね」
「……やはり、バレないようにリナルド王国に行き卵を渡してしまいましょう」
「そうだね、大事にするとまずい予感がするし卒業後にささっと行っちゃおう」
「じゃあ卒業するまでは寮の中で育てるのか?」
「うーん、僕らがいる時は出してもいいけどいない時は亜空間に入れるしかないかな。ルキ達に頼んでみようかな」
「じゃあ、キース呼ぶ?」
「そうだね呼んでくれる?」
(キース、起きてる?)
(うん)
(出てきてくれる?)
(いいよー)
「おまたせー、僕に何かようかな? その卵のこと?」
「うん、亜空間に入る時にさ、一緒にいてくれる? いつ孵化するかもわからないし……」
「……? その卵は孵化しないよ? 条件が揃わないと生まれないんだよ?」
「えっ! キースはどんな卵なのか知ってるの⁉︎」
「……うん。僕は聖獣だからね。知りたいの?」
「うん。この卵、青龍から託されたんだけど、どんな卵なの?」
「この卵は……
――――竜神になる竜の卵だよ。
と言っても次の世代のだけどね。ついに竜神も代替わりしちゃうんだね、もう竜神はいなくなっちゃったのかぁ。普通に生きていればあと1,000年くらい生きれたのにね」
「「……えっ!」」
「竜神ってリナルド王国の神様だよね⁉︎」
「うん」
「代替わりってするの⁉︎」
「うん、するよ。厳密にいえば神様じゃないしね」
「じゃあ不老不死じゃないってこと⁉︎」
「うん、古龍っていう一万年生きるドラゴンの事だよ。ただのドラゴンとは違ってこの世界を守護する者として神様に送られた存在で、4体いるんだ。ただし……神様っていうのは僕らの知っている7柱の事じゃないよ。始まりの神様、創造主様のことだよ……。
それでなぜ竜神の卵を青龍が残したのかだけど、人間と竜が交わったことで国が生まれたのは知ってるよね?」
「「「うん」」」
「実は、それがこの世界の禁忌だったんだよ。守護者と人間が交わってしまうのは世界の秩序を乱すという理由で禁忌だったんだけど……1体の竜が犯してしまったんだ」
「それが青龍だったんですか?」
「いいや、違うよ。罪を犯した竜はとっくの昔に死んでいて、罰として創造主様によって人間にされて2度と輪廻の輪に乗れないようにされてしまったよ。
青龍は……
――そいつの親友だったんだ」
「親友なら、なぜ罰を受けていたん……ですか」
「創造主に秘密にしていたからだよ。禁忌だと知りながらも竜と人の交わりを見て見ぬ振りをしていたんだ、それで罰としてこの世界の瘴気を一身に受けていたんだ。
さらには親友との約束を守ってずっと竜神として竜の国に君臨し続けて、ついにガタが来たんだろうね。だから死ぬ間際に卵を残して次世代に繋いだってわけ、古龍はね必ず4体いるんだ。だから人間にされてしまった竜の後釜もちゃんといるよ。
でも今後はこの世界は大変だろうね、青龍が一身に受けていた瘴気が世界中に蔓延ることになるから魔物が活性化し始めるよ。瘴気を受け入れる器がなくなったからね」
「えっ、ではこれから魔物が強くなってしまうのですか?」
「さぁね、でも強くなるんじゃない? でもでもリン達には危害を加えないようにするからね? 安心してよ‼︎」
「でも、他の人たちは⁉︎」
「……僕らはリンとレンのために存在する聖獣だよ? リンとレンの仲間や家族は守ってあげてもいいけど他の人間は知らないよ? ……だって、それがその人間達の運命だったんだから……。僕らがその人間達の運命を変えたらそれこそ、この世界の掟に触れてしまうよ」
「……そんな」
「僕ら、高位の生命体は誰でも助けられるわけじゃないんだよ。それは7柱の神様達も同じだ、罰を受けないでそんなことができるのは始まりの神様、創造主様だけ……」




