034
コンコン、扉をノックする音が聞こえる。
「リン様、レン様入ってもいいですか?」
「どうぞー」
許可を出し、三人を迎え入れる。
「今日はごめんね。今はもう落ち着いて、大丈夫だから」
「僕もごめんね。今までにないことで怒鳴っちゃった……」
「それはもう大丈夫ですよ、ただお二人が心配でした」
「そうそう、俺も心配したぞ?」
「僕も心配したよ。で、何があったの?」
「うーん、何から話せばいいかな……」
「まぁ、僕達がこの世界に生まれた理由からじゃない?」
「……そうだね」
「僕らはね、一度死んでいるんだ」
「…………え?」
「……は?」
「…………」
「語弊があるね、この世界ではないところで死んで、生まれ変わったんだ」
「「「え、えぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」」」
「そうそう、それで生まれ変わる時に双生神様に会って話してたら気に入られて愛し子になったんだけどね」
「……そんな気軽になれるもんなんですか?」
「ほら、歩く非常識だから……」
「……俺はもう、何を信じたらいいんだ?」
三人とも混乱していたけど、とりあえず落ち着いてもらった。その後は私達が違う世界からやってきた人間だと言うこと。その世界に”ゲーム”と呼ばれるものがあってそこに登場していた人物であろうと言うこと。など最初から最後まで全て話した……。
「ということは、サラ・ハーヴィングはその逆はーれむと言うのを完成させて、お二人に近付くと言うことですか?」
「簡単に言えばそういうこと」
「その中にはカイトや俺、リックもいるんだよな?」
「でも、僕達サラ・ハーヴィングの事はなんとも思ってないよ? その、いべんと? みたいなのに覚えもないし……」
「……あぁ、それは知らず知らずのうちに私がやらかしてるからだよ」
「そういうこと、リンが幼い時にカイトの瞳について誤解を解いているし、ハルトもリンといるから貴族に虐められない。リックもリンが学年委員をやってるからフラグが立たないし、アホルトもたぶんテストの順位で負かしているから、リンの方にフラグが立ったんだろうね。だからみんなシナリオ通りに動かなくて焦ったんじゃない? それで今回のテストでキレ散らかしたんだと思うけど……。あんなに腹が立つ事は中々ないね」
「ただ、後一人ダン、だっけ? そいつはいいの?」
「別にいいんじゃない? どうなろうが私は関与しないよ」
「僕も」
「私も、ですかね」
「リアンが何もしないのは珍しいね、基本的に誰に対しても優しいのに」
「まぁね、ただ私も人の好き嫌いはあるもん……」
「なんの思入れもないしね」
「私が幼い時にいじめられたからですかね? 気にしてませんけど」
「カイトが? なんでまた?」
「黒い瞳をしてたからですよ」
「あぁ、人間達が信じていた噂ね。僕も聞いたことあるよ、最近は聞かなくなったけどね」
「それ私が釘を刺したからだと思うけど? 少なくともベネディクトでは注意したからね」
「そうそう。ほんと、くだらない噂だったよ」
「あの時のお二人はかっこよかったですよ……。なのに今は……」
「「……何か?」」
「ところで、サラ・ハーヴィングには注意しとけばいいってことか?」
「そういうこと」
「でも、リアンは大丈夫なのかい? 絡まれるかもしれないんだろ?」
「まぁ、最悪学園長とか先生に相談するよ」
「僕もいるしね」
「私もいますよ」
「俺もいるぜ!」
「もちろん僕も手伝うよ‼︎」
「みんな、ありがとう。じゃあこの話はここでおしまい! みんな夏休みは何するの?」
「僕達は帰るよね?」
「そうですね、国王様とも約束してますもんね」
「俺はどうしようかな? シスター達に会いに行くぐらいなんだよな」
「僕も一度家に帰るよ、ただする事はないんだけどね」
「じゃあ、二人が良ければ私達と過ごさない? もちろん無理ならいいんだけど……」
「いいのか⁉︎ 俺、行きたい‼︎」
「僕もいいの!? じゃあ実家に帰らない‼︎ 一回くらい帰らなくてもなんも言われないし‼︎」
「いいよ、いいよ‼︎ 遠慮しないできてよ! お父様とお母様に言わなきゃ‼︎」
「うちの家族、張り切らないといいなぁ」
「私は一度実家に顔出しますね」
「うん、わかった! じゃあさ、ダンジョンに行こう‼︎ 夏休みの間に冒険活動したいって思ってたんだよね」
「家まで一週間ちょいで着くと思うから、往復一ヶ月あればすごく余裕で着くよ。大体一ヶ月は遊べるね」
「よーし、じゃあ決定‼︎ みんなで遊ぶぞ‼︎」
「「「おぉぉ‼︎」」」
◇
あれからいくつかの日々が過ぎ去り、なんと夏休みになりました!! 夏休みの課題が出されたけどそれもみんなでやると言う事でお家にお持ち帰りする。必要なものだけ詰めてみんなに声を掛ける。
「みんなー準備できたー?」
「僕はいいよー」
「私も大丈夫です」
「俺も、もういけるぞ!」
「僕は誰よりも準備できてるよ‼︎」
「じゃあ、行こうか‼︎」
馬車に乗り込み、家を目指す。一週間と少し馬車に揺られながらみんなと話をしたり、遊んだりした。
◇
一週間が経ち私たちの家が見えてきた。長いようで短かったな。
「みんな、うちが見えたよ‼︎」
「おぉ、ほんとだ、二ヶ月ぶりくらい?」
「久しぶりに戻ってきましたね」
「………そう言えば、お前ら貴族と王族だったな。忘れてたわ……」
「やば、僕も忘れてた……。手土産とかいるかな……」
「別にいらないよ! みんな気にしないから!」
「そうそう。気にしなくていいよ」
「お二人ともそろそろイヤーカフをお外し下さい。もう間も無く到着しますよ」
「「はーい」」
イヤーカフを外し、本当の姿が現れる。
「久々に元の姿に戻った〜」
「ね〜、リンのその姿見るの懐かしいわ〜」
「リン様とレン様は印象変わりますよねぇ、私はあまり変わらないですけど……」
「いや、そんな事ないぞ? カイトも十分変わるからな?」
「なんか、リアンとレオンは神聖さがプラスされるね、元の姿に戻ると愛し子様ってのも納得できるよ」
「何それ、いつもの姿じゃ愛し子を感じないって言うの⁉︎」
「リックは酷いね! 僕らは正真正銘愛し子なのにさぁ!」
「それだけお二人が紛れ込めているって事ですよ! 安心してください」
「そうだぞ! 黙っていれば愛し子様に見えるぞ‼︎」
「ハルトは余計な一言が多いよ‼︎」
馬車が止まり、王城についたことを知らされる。
「さぁ! みんな着いたよ!」
「ようこそ、僕らのうちへ‼︎」
「「「お邪魔します!」」」
馬車を降りたら家族のみんながいた。
「二人ともぉぉぉぉ‼︎」
「「おかえりぃぃぃぃぃ‼︎」」
父様と兄様が走って、飛びついてきた。私達はそれを避けて、母様と姉様、ソフィアお義姉様に挨拶する。
「お母様、ローナお姉様、ソフィアお義姉様、ただいま帰りました!」
「お父様とお兄様もただいま帰りました」
「「「おかえりなさい! リュシアン、オレリアン」」」
「カイト君も久しぶりね、大きくなったかしら?」
「お久しぶりです。王妃陛下。国王陛下、王太子殿下、王太子妃殿下、王女殿下にご挨拶申し上げます」
「カイト君と我々の仲ではないか、そんな挨拶はいらんよ。いつもリュシアンとオレリアンを見てくれてありがとう。……ところでそちらの二人は?」
「お手紙にも書きましたけど、お父様達にご紹介いたします! 私たちの学友で……」
「右の茶色い髪色をしたのがハルト君で、左の白金色の髪色をしたのがエルドリック・リヴァリス君です! 二人にはいつもお世話になってます!」
「お、お初にお目にかかります、ハルトと申します。お二人にはいつもよくしていただいております」
「お初に、お目にかかります。エルドリック・リヴァリスと申します。この度はお招きいただきありがとうございます」
「ハルト君にエルドリック君ね、いつも二人がお世話になっているわ。二人の母のセレナ・ベネディクトです。これからもよろしくね」
「いつも二人と仲良くしてくれてありがとう。二人の父のアルフォンソ・ベネディクトだ。よろしく頼む」
「私は二人の兄のエヴァラルド・ベネディクトです。いつも二人が世話になっているね」
「私は義姉のソフィア・アンブラントです。よろしくお願いします」
「最後に私だ! 私は二人の姉のベローナ・ベネディクトだ‼︎ どうだ、私と戦おう‼︎」
「と、まぁうちの家族はこんな感じだよ」
「じゃあ部屋に行こう?」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよぉ、リン、レンおかえりのハグは? ね、お父様としよ?」
「お兄様ともしよ?」
二人はウェルカム状態で手を広げるがもちろん行かないで無視をする。お母様やお姉様達は王城の中に戻り始め、私達も二人に移動を促す。
「じゃ、行こうか?」
「そうだね」
「では、私は一度帰らせていただきますね。顔を見せたら戻ってきます。それでは失礼します」
「え? いいのか? 二人の父さんと兄さんだろ?」
「そうだよ、無視していいの?」
「いいの、いいの、あれ毎回やってるから」
「無視していいよ、友達の前は流石に恥ずかしいでしょ」
「二人も大変だな……」
「……」
「「はぁ……」」




