033
あれから一週間が過ぎテスト週間になる。ほとんどの生徒が真面目に勉強しテストに臨む中、レオンとサラは勉強せずにテストに挑んだ。
「今回のテストも簡単だったね」
「それな。余裕だったわ」
「そうですね、思ったよりもできました」
「おいおい、嘘だろ。確かに前回よりはできたけどよ……」
「さすが、歩く非常識達……」
「そんな事言わないでよ、ひどいなぁ」
「できたんだから、仕方ないでしょ」
「でも、さすがレン様ですね。結果が楽しみです」
「……次は実技だよ」
「じゃ! 俺、剣だから行くわ!」
「がんばって!」
「頑張れ〜」
「気をつけてくださいね」
「頑張るんだぞ!」
「おう!」
実技テストが終わり、結果は休み明けに貼り出されるため、その日は昼頃寮に帰りみんなでギルドへ行った。
休み中もギルドに行って討伐して、お金を稼いでポイントもとってランクを上げるために頑張る。
◇
「さて、今日はテストの結果だね!」
「どうせまた首席取るんじゃないの? 実技も誤魔化しが効かなかったでしょ? 僕も誤魔化せなかったし……」
「……そうですね。《入学洗礼の儀》でそれはもう、やっちゃいましたからね」
「三人は余裕そうでいいな‼︎ 俺は心臓がバクバク言ってるぜ!」
「僕も、そんな余裕でいられないよ。確かに手応えはあったけどさ……」
「ほら、着いたよ」
そこには人だかりができており、ざわざわとしていた。誰かがこちらに気がつくと、みんなが一斉にこちらを振り向き道を開けてくれる。
「どうしたんだろう?」
「モーセの海割りみたい」
「なんですか、それ?」
「なんでもない」
「とにかく見てみようぜ!」
「そうだよ、見てみよう」
「どれどれ〜」
「僕達は、っと」
「ありましたよ、あそこに」
「あぁ〜」
「……やっぱりね」
首席 リアン・ウェスティス 700/700
レオン・ウェスティス 700/700
三席 カイト・ヴァルター 698/700
四位 アホルト・オルトゥス 690/700
五位 ルシア・ラルティス 686/700
六位 ハルト 662/700
七位 エルドリック・リヴァリス 660/700
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「みんな上の方に名前があってよかったね!」
「そうだね、みんな上位二十名に入ってんじゃん」
「いやぁ、相変わらず凄いですね。私は凡ミスをしたみたいです」
「いやいや、カイトも十分凄いぞ……。リアンとレオンがいなかったらお前が首席だからな?」
「そうだよ! なんでそんなに点数が高いのさ!」
「……勉強したら、できただけだよ?」
「リン、みんなのこと煽らないようにね? 勉強してもできない人だっているんだよ?」
「レン様もやめましょうね? ほら、教室に戻りますよ」
「「はーい」」
「もう、こいつらやだぁ……」
「ハルト、僕も同じ気持ちだよ……」
◇
教室の扉を開けたら騒がしかった室内が静まり返った。
「え、なになに? なにかした?」
「さぁね、あれじゃない? テスト結果でしょ」
「あぁ……」
納得しているとアホルト君が向かってきた。
「リアンとレオン‼︎ またお前らに負けた! しかも今回はカイトにも負けた‼︎ お前らはなんでできるんだよ‼︎ 秘訣はなんだ!」
「うーん、勉強しただけだよ? あ、あと凡ミスがないように一回書いたのを見直して、見直したのをもう一回見直すと点数が取れたよ?」
「僕もリンと同じ」
「私もそうですけど、今回凡ミスしたみたいです。お恥ずかしや……」
「「……」」
「……わかった! 次は負けないからな‼︎ じゃあな‼︎」
言うだけ言ってアホルト君は友達のところに戻ってしまった。次にサラ・ハーヴィングさんがきた。近づきたくないなぁ、それにしても今日はお客さんが多い……。
「ちょっと‼︎ なんであんた達が首席取ってんのよ!! そこは違うでしょ! ちゃんとシナリオ通りに動きなさいよ‼︎ モブはモブらしく大人しくしなさいよ‼︎ なんで私が39位なわけ! 私はヒロインよ‼︎ こんなの違うわ‼︎」
やばいのがきちゃった……。でも防音魔法張ってて良かった。みんなには聞こえてないよね?
「「……」」
「何か言いなさいよ‼︎ そもそもあんた達はゲームに出て来ない存在でしょ‼︎ ちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃないわよ‼︎」
「……言いたいことはそれだけ?」
「僕ら、何言っているのかわからないんだけど?」
「そもそも、しなりお? とか、もぶ? とか、ひろいん? って何それ」
「あんたら、そんなのもわからないの? ほんとバカなんじゃない? なのになんであんたらが首席で私が39位なのさ! おかしいんじゃない? バグよバグ‼︎ あんた達のせいでシナリオが進まないから消えてくれない?」
「はぁ……。君さ、今どうゆう状況かわかってる? 訳のわからないことを叫んでさぁ。でも、よかったね? 親切な私が防音魔法を張ってあげたからみんなは君が何を言ったかわからないよ。ただ、他の人から姿は見えているからね。だからほら、私達の友人達が心配してる……ね?」
「サラ・ハーヴィング、これ以上僕らに関わるな。これは脅しではなく警告だ。関わった時にはお前は破滅するからな、僕は言ったぞ?」
「なによ、爵位は同じ伯爵位じゃない⁉︎ 王族や愛し子でもなんでもないんだから偉そうにしないでよ‼︎ 私が聖女に覚醒したらあんたらのことなんか消してやる‼︎」
そう言うとサラ・ハーヴィングさんは怒りながら席に戻って行った。ハーヴィングさんが通るところだけ穴を開けて通った後は塞いでおき、防音魔法はまだ継続させておく……一応ね。
「リン様、レン様‼︎ 大丈夫ですか⁉︎ どうして私達を追い出したんですか⁉︎」
「大丈夫だよ、ごめんね」
「咄嗟の判断でさ、僕とリンだけになってたみたい」
「そんな訳ないでしょう⁉︎ あなた達のコントロールなら咄嗟の判断でもっ「カイト‼︎ 僕らが大丈夫っていったんだよ!? 言わせないでよ‼︎‼︎」……っ申し訳、ありません。出過ぎた真似を……」
「いや、こちらこそごめん……。気が立ってたみたい……」
「……っ本当にごめんね。寮に戻ったら話すよ……。それまではさ二人だけにしてくれるかな? 多分、今日は一緒に行動しない方がいいと思うからさ、三人で行動してくれる? 私達は早退するよ、ちょっとレンと話し合いたいからさ、授業が終わったら部屋に来てくれる?」
「……わかりました。寮に戻ったら絶対に話を聞きますから!」
「うん。話せるようにしとくね……」
「……俺らもそれ聞いていい話なの?」
「……っそうだよ。僕らもいた方がいい?」
「うん。聞かなくてもいいけど……できれば聞いて欲しい。親にも言ってないことなんだ……」
「「「………っ‼︎‼︎」」」
「ただ今回の話はさ、私達の秘密から話さないと話せないからさ……。一旦レンと話させて?」
「……無理なら、話さなくてもいいですよ……。話せる時が来たらでいいです……」
「ううん。今がその時なんだと思う……。私達もさ、隠し事しているのは辛いからさ……」
「……わかりました」
「俺も聞くよ」
「うん、僕も」
「そう、身構えなくていいからね、じゃあ後はよろしく……」
私とレンは学園を早退し、寮に戻った。
◇
寮に戻り二時間が経過した――
「レン、私達の前世を話すしかないよ……」
「………いいよ」
「っ!……いいの⁉︎ 本当に!?」
「リンが言ったんじゃん……」
「そうだけどさ‼︎ ただ、全部話す?」
「この際だから、全部話そうよ。隠している意味もないし……」
「……っそうだよね!」
「あいつらなら受け止めてくれるよ……たぶん。無理だったらさ、双生神様にお願いしてどうにかしてもらおう?」
「だね! 気分はもう落ち着いた?」
「……うん。それにしても、あいつやっぱり転生者だった……」
「うん? やっぱりって、何かあったの?」
「仮説を立てていたんだ、前に色々思うことがあったから……」
「実は私も……。学園が終わってるのに放課後ウロチョロしているハーヴィングさんがいて避けたんだよね。だっておかしいでしょ? 用がないのに突っ立っているなんてさ……」
「……ここは、乙女ゲームの世界だと思う。攻略対象はたぶんだけど、アホルトとカイト、ハルト、リックにダンだと思う。それに加えて隠しキャラが二人いるらしくて、その二人は一緒にいるっぽい」
「……ダンって?」
「ほら、前にカイトをいじめていたやつだよ。学年委員会にいたんじゃないの?」
「…………あぁ、いた! ごめんごめん、忘れかけてた。で? 隠しキャラはわからないんだね?」
「うん……」
「ふーん。でも二人一緒にいるんだよね? てことはさ、二人組か双子じゃない?」
「先生達? それにしては年齢が離れているよな? ってことは同じ世代の権力者持ちで隠しキャラになるようなキャラ……。ハーレムルートに入らないと近づけない程の超難関キャラ…………ってまさか…………いやいやいや、いや、え、うそ、いやだ」
「え? どうかした? 何か思いついたの?」
「うーん、いや、いやぁぁぁね、たぶんだよ、たぶんだけどさ、僕達じゃない?」
「えぇぇぇぇ、嘘! そんなわけ、そんな訳ないじゃん‼︎」
「だって考えてみなよ、ヒロインとは同じくらいの年代で僕達は双生神様の初めての愛し子。そしてベネディクト王国の王子で顔も超美形だよ。設定もりもりすぎない? で、ハーレムルートってことは超難関で卒業してからじゃないと側にいけないってことだよ。元々は外の国にいて、かつ高貴な身分。さらには聖女が仕えるような人。そんなのさ愛し子しかいなくね? 聖女より上の存在は愛し子しかいないんだから! それに、ダメ押しでいつも僕達二人一緒にいるじゃん⁉︎」
「うっそ……」
「ほんと……。しかもあいつの最終目標、僕達だよ。庭でつぶやいてたから、絶対そう‼︎」
「イィィィィヤァァァァ‼︎‼︎」
「まぁ、落ち着こうよ。どうする?」
「聖女覚醒阻止で」
「でも、僕らに関係なくない? だっていないじゃん。ベネディクト王国に。たまには帰るだろうけど、ほとんどいないじゃん。冒険者になるんでしょ?」
「……あっ確かに。じゃあどうでもいいね」
「ただし、リンは巻き込まれるんじゃない? 学園編で。今日言われてたじゃん、警告はしたけど絶対に聞かないよ?」
「あーね。まぁなんとかなるでしょ」
「大丈夫、僕が助けてあげるから。最悪さ、不敬罪で捕らえよう! 学園長とかは僕らの本当の身分知ってるから秘密裏にやってくれるよ! 覚醒する前だったらただの伯爵令嬢だからさ!」
「だね。……さて、そろそろ時間かな?」
窓の外を見ると、いつの間にか陽が落ちようとしている。みんな寮に帰る時間だ――




