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「本日の『入学洗礼の儀』はこれにて終了いたします! 明日はAクラスからCクラスのトーナメントがございますので是非是非お楽しみください! 本日の戦いはすごく興奮いたしました‼︎ これからの成長がとても楽しみでなりません!! 皆様方のまたのご来場をお待ちしております‼︎ 本日はどうもありがとうございました‼︎」
しばらくすると放送が聞こえ観客達が闘技場を後にしていく。リアンはいまだに寝っ転がっており、太陽の輝く綺麗な青空を眺めていた。
「リン、悔しいのはわかるけど汚れるよ。もう、起きたら?」
レオンがリアンに話しかける。
「うん、わかってる……」
「本当にリンは泣き虫だなぁ」
「うるさいなぁ。みんなで勝ちたかったんだもん。しょうがないじゃん」
「僕も勝ちたかったよ……。でも負けちゃったからね」
「……みんなは?」
「先に戻ってもらったよ。……見られたくないでしょ? 泣いている姿なんて」
「うん……。ありがと……レン」
「どういたしまして、落ち着いたらいこうか?」
「…………うん」
リアンとレオンは10分ほどしたら立ち上がり、顔を洗ってからみんなのところに帰った。
◇
「リン様、レン様おかえりなさい。ささやかですがジューや軽食、お菓子を用意してますよ!」
「おぉそうだぞ! みんなでパーティーしようぜ!」
「そうだよっ……六年生には惜しくも負けちゃったけど、二年生には勝ったしね!」
「……うん、みんなありがと!」
「別に、一番頑張っていたのは君だからね!」
「リックは素直じゃないね……」
「何か言ったかい⁉︎ レオン!」
「何もないよ」
その日は夜遅くまで、みんなで楽しくパーティーをした。
次の日になり制服に身を包む。今日は試合をしないで観戦したり街を散策するだけだからね。
「リン、支度できた?」
「うん、できたけど髪の毛結びたいなって。レンってできるんだっけ?」
「僕が? できると思う?」
「ううん、思わない。でもそろそろ髪の毛邪魔なんだよね。昨日の試合でも思ったんだけど」
「じゃあ今のうちにできるようにすれば? 外に出たらやってくれる人なんていないよ?」
「確かに、そうだよね。自分でやるわ!」
「じゃあ、僕のもやって?」
「うn……って自分でやんなよ! 今、自分で言ったじゃん。やる人いないって!」
「ちぇっ! そう簡単には頷かないか」
「……リン様、レン様何してるんですか?」
「お前ら遊んでないで早くいこうぜ!」
カイトが呆れた様子で声をかけてきた。ハルトは祭りが気になるのか街の方に意識を向けている。首輪をかけないとそのまま走っていきそうだ。
コンコンッと扉の方からノックが聞こえる。ゆっくりと扉が開きリックが顔を覗かせた。
「みんな、準備はできたかい? 早くいくよ」
「うん、今行く! よし、これでいいでしょ!」
「僕もこれでいいや、できてるでしょ。たぶん」
「いや、できてないですよ。はぁ、やり直すんで座り直してください」
「「はーい」」
カイトママが髪型を直してくれ、私はポニーテールにレオンは後ろの下の方で白色の銀糸で刺繍されたリボンが結び直されている。カイトにお礼を言って身支度が終わった。
「それじゃあ、いきますか!」
「まずは街に行く?」
「そうですね」
「早くいこうぜ!」
「どんな感じで出店が出ているんだろうね?」
◇
街に出るとガヤガヤと騒がしく香ばしい匂いがしてくる。
「いらっしゃい! いらっしゃい! 今日は特別に串焼きを焼いてるよ!」
「うちはスライムゼリーを用意しているよー‼︎」
「うちはオーク肉を挟んだケバブを用意してるよー‼︎」
「ねぇねぇ、ケバブ食べたい!」
「いいよ、じゃあ買いに行こ」
「あ、私も行きます」
「あ、俺も食いたい‼︎」
「じゃあ僕も行く」
「お兄さん、ケバブ五つください!」
「おう、毎度あり!……ってあれ!? 坊主達昨日の一年生じゃないか? 確か……リアンチームだったか? やべ、敬語じゃないと!」
「え、そうです。よく分かりましたね……。話し方はそのままでいいですよ」
「おう、ありがとな。でも、あんだけ目立ってたら覚えているぞ! それにしても昨日は惜しかったなぁ。六年生をあそこまで追い詰めたのお前らが初めてじゃないか? あそこまで夢中になって見たのは初めてだったぞ! 凄かったよ!」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあケバブ五個な! 値段はそうだな銅貨5枚でいいぞ! 昨日いいもの見せてもらったからなおまけだ!」
「え、いいんですか? ありがとうございます!」
「お兄さん、ありがとうございます!」
「「「ありがとうございます!」」」
「これからも頑張れよ!」
「「「ありがとうございました!」」」
「ケバブのお兄さん優しいね!」
「熱いうちに食べようよ」
「そうですね」
「じゃあ、もらいー! いただきまーす! うまっ!」
「もうハルト行儀悪いよ!」
「んっ! 本当だ! 美味しい!」
「リン様!」
「お、本当だ。美味しい」
「レン様まで! はぁ……」
「カイト、もう諦めて食べよう……。いただきます! お、美味しい」
「ほらほらカイトも食べてみ! 美味しいから!」
「……いただきます。……‼︎ 美味しい……」
「ほらね!」
「それにしても、リアンとレオンは買い食いするの慣れてるよな? しょっちゅうしてたのか?」
「えっ、したことないけど……」
「ほら、あれだよあれ! 街の人たちはよく買い食いするって聞いてたんだ!」
「そうそう! してみたかったんだよね!」
「ほんと、君たちはたまに貴族らしくないことするよね?」
「えぇ、そんなことないよー! あ、あれ美味しそう! 次はあれ飲もうよ!」
ーーーードンッ
「あ、すみません。お怪我はないですか?」
「リン、大丈夫?」
「リン様大丈夫ですか?」
「大丈夫か?」
「大丈夫?」
「あぁ、うん。こっちは大丈夫。それよりも……」
「すまない。よそ見をしてたらぶつかってしまった。怪我はないだろうか?」
「あ、こちらは大丈夫です。私の方もよそ見をしてしまいぶつかってしまいました。申し訳ありません」
「いや、こちらも悪かったな」
うわぁ……綺麗な人。濡羽鴉色のような長い髪に、吸い込まれそうな切れ長の黒い瞳。鼻筋はスッと通っており、唇が薄めの美青年だ! ってなんか私キモっ! でもでもめっちゃ美青年! 前世だと伝説のアイドル級、いや神様級だよ!
「……どこかいたむのか?」
「あ、いえいえ本当にすみませんでした! なんともないです!」
「それならよかった。じゃあ急ぐから、またな」
「はい、ほんとすみませんでした!」
謎の美青年は手を振りながら去ってしまった。
「今の人めっちゃかっこよかった!」
「リン、一瞬見惚れてたでしょ」
「えへへ、バレた?」
「まぁ、確かにかっこよかった」
「でも、今の人またなって言ってましたよ?」
「それ、俺も聞いた」
「どこかで会うっけ?」
「「「うーん?」」」
◇
あの後、街を堪能してから学園に戻りトーナメント戦を観戦する。Aクラスの優勝者は6年生の人でなんと、獣人だった! 学園で見かけなかったからいないのかと思った。いつか触らせてくれないかな? BクラスからCクラスもやっぱり6年生の人が優勝していた。
こうして今年の『入学洗礼の儀』は終了した。
明日から二日間臨時で学園がお休みになる。みんなとギルドに行く予定だから今日は早めに休もうかな――




