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祝福された双子は私達でした⁉︎ 〜冒険者になるけど許してね?〜  作者: 桜夜
第2章 学園編

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「続きまして、アホルトチームvs5年Sクラスです! 見事エミールチームは四年生に勝って見せましたが果たしてアホルトチームは五年生に勝てるのか⁉︎ 期待が高まりますね‼︎ それでは選手の入場です‼︎」


「みんな、いよいよ本番だ。俺たちは勝つために練習してきた」

「そうね! 絶対に勝てるわ! 頑張ってきたもの!」

「でも相手は五年生だよ。例え一年生の僕達でも油断はしてくれないはず」

「そうだろうな。正直勝てる見込みは少ないが全力を出すしかない」

「私は自分のするべきことをするわ」


 アホルト達は皆、落ち着きを見せていた。


「今日はよろしくな、俺は五年生チームのリーダー、ガルム・レオルフだ」

「私はこのチームのリーダー、アホルト・オルトゥスだ。今日はよろしくお願いする」


「両者位置についたな――試合、開始!」


 ギルバートが合図をし試合が始まる。即座に五年生は光魔法で防壁を作り、体制を整える。


 アホルトが炎を纏った剣を握り締め、前へ踏み出す。その横でレベッカが鋭く切り込み、ノアは影の鎖を足元に伸ばす。シリウスとサラは冷静に光の膜を張り、味方を援護していく。


 一瞬の静寂の後、五年生が動いた。

 ガルムの大剣一振りでアホルトとレベッカが弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。


「くっ…!」


 アホルトが立ち上がろうとするが、力が入らない。


「まだ、いける!」


 レベッカも踏ん張るが、ガルムの次の攻撃に防御を強いられる。


 敵の一人が光魔法で防御しながら、ノアの影の鎖を打ち消す。もう一人の敵が闇魔法で孤立したアホルトを狙い、自由に動けないように拘束していた。


 アホルトが必死に拘束を破り反撃を開始する。


「俺が、前に出る!」


 炎の剣を振り、レベッカも一緒に追撃する。ノアは影の鎖で相手を拘束しようとするが読まれていたようで全て阻まれる。シリウスやサラも援護をしているが攻撃の手が追いつかない。


 戦況は一方的だった。

 攻撃は次々と弾かれており、孤立した仲間が押し返される。陣形は崩れ、努力と連携だけでは今の五年生との実力の差は埋まらなかった――。


「勝者、5年Sクラス!」


「もう少し苦戦すると思ったんだけどなぁ」

「期待外れだったな! これならエミールチームの方が良い試合したんじゃねぇか?」

「俺らの相手はハズレだったな……」


 観客からは拍手とどよめきが混ざる。


 例年ならば当たり前なのだが、今年はこれまでの試合結果でそうはさせてくれなかった。他のクラスメイトが活躍し良い試合をしていたからだ。みんな期待していたのだ、今年は違うのかもしれない、と……。


 アホルトは地面に拳を打ちつけ、レベッカは悔しそうに肩を落とす。ノアやシリウスは仲間を見回してため息をつき、サラはブツブツと言葉をこぼしている。


「なんで、なんでよ! シナリオと違うじゃない。こんなの違う、おかしい……。私が勝つはずでしょ⁉︎ 確かにチームの人間も戦う相手も違ったけど補正するもんでしょ?! どうして、どうして違うの‼︎ ………はっ! あいつのせい、あいつのせいなのね‼︎ あいつが……あいつが、リアン・ウェスティスがいなければ‼︎‼︎ 絶対に………フフフ……フフフ」


 まだ混乱している観客から拍手を受けそれぞれが場内を後にする…………。



「いよいよ最終決戦です! リアンチームvs6年Sクラス‼︎ アホルトチームは残念ながら負けてしまいましたが一年最強のチームは6年生にどこまで通用するでしょうか⁉︎ はたまた私達の予想を遥かに超えてくる結果になるのでしょうか‼︎  実に楽しみです‼︎‼︎ それでは選手が入場します‼︎」


「みんないよいよ、だよ」

「そうだね、やれるだけはやってきた」

「私達自身の力を信じるしかないですね」

「俺たちならできる……」

「僕は精一杯援護するよ」


「それじゃあみんな、楽しんでいこう‼︎」

「「「おぉ‼︎‼︎」」」





「やぁ、リアン君。今日はよろしくね、僕達は君たちと戦えるのを楽しみにしていたんだよ。期待させてね?」


「本日はよろしくお願いいたします。胸をお借りするつもりで全力で戦わせて頂きます‼︎」


「両者位置についたな――試合、開始‼︎」


 開始の合図とともにリアンは剣に水魔法を、レオンは光魔法を纏わせる。ハルトは身体強化を施し、カイトとエルドリックは三人の支援に入る。

 

「それじゃあ、いくよ‼︎‼︎」


 リアンの掛け声とともに三人が一斉に飛び出す。六年生の三人が同時に炎の壁、氷の矢、光球と魔法を繰り広げ、迎撃を行う。

 圧倒的な威力に観客がどよめく。


「任せろ!」


 ハルトが先頭に立ち、炎の壁を剣で叩き割る。爆ぜた火花を抜けてリアンは飛んでくる氷の矢を砕いていき、横からレオンが光球を叩き斬っていく。


「今だよ! 撃って!」

 

 リアンが叫ぶと、後方のカイトとエルドリックが暴風を巻き起こし場内を駆け抜け、六年生の足元を崩していく。


「君ら、やるね……!」


 ユリウスが目を細め、剣から迸る光の斬撃がリアン達の突撃を止める。


「それだけじゃ、届かないよ!」


 ユリウスの後方、二人から詠唱が聞こえる。炎と氷が絡み合い、火炎竜と氷槍の同時攻撃が放たれる。


「止めろぉぉぉ‼︎‼︎」


 レオンが叫びながら前に出て光壁(ライト・ウォール)を展開し、ハルトが砕ける大地(ソルム・フラクタス)の衝撃波で軌道を逸らす。リアンは水流剣舞(アクア・グラディウス)で残りを切り裂いた。


 観客は息を呑む――


 六年生相手に一年生が渡り合えている……と。


 だが、しかし――


「悪くはない。けど、ここからが本当の勝負だよ」


 炎と氷と光。三人の魔力が同調し、圧倒的な波動となって押し寄せる。

 リアン達は必死に応じる。水と光と土魔法で前線を支え、風魔法で後方から嵐を巻き起こす。


 轟音と閃光の中、刃と魔法がぶつかり合い誰が勝つか観客にはわからないほどの戦いが続いた。


 ――だが、一瞬。


 ハルトの腕が痺れ、剣が僅かに逸れる。そこをつくように炎と氷の連撃が打ち込まれた。


「ゔっ……!」


 リアンは咄嗟に庇ったが、衝撃が全身を貫き膝をつく。仲間達も次々攻撃され倒れ込む。最後にレオンが剣を支えにしたまま崩れ落ちた――。


「勝者、6年Sクラス!」


 歓声が爆発する。


 ユリウスが剣を収め、リアンを見下ろしながら言った。


「ふぅ……最高に楽しかった。やっぱり、君たちは……強いね! 次戦ったら、負けちゃうかも……。今日は本当にありがとう!」


「……そう、言っていただけて、光栄です、ユリウス先輩」


 リアンの胸の内には敗北する悔しさが込み上げる。涙が出そうになるが今は堪える……。興奮した観客の拍手と歓声は続いており、それを耳にしながら地面に仰向けに倒れ、そっと目元から落ちる涙をバレないように腕で覆った。


「……やっぱり、勝ちたかったなぁ。みんなで、勝ちたかったよ……」


 そっと小さな声が涙と一緒にこぼれていく――。



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