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「精霊が急に出てきた‼︎ 何で見えるんだ⁉︎」
「……精霊って人には見えないよね?」
「それが、精霊は中級精霊以上だと人の目に映るようになるんです。基本的に自然界にいるものは下級精霊で、下級精霊が人の目に見えることはありません。見えるとしたら、精霊視を持っている方や特別な瞳を持っている方達だけでしょう」
「へぇ、そうなんだ」
私は初めて知る情報に少し驚き、返事をした。
「はい。そして中級精霊以上は精霊の国に住んでいるため、召喚されない限り現れることはありません。私はルシェルが契約者を決める時にルシェルに惹かれたため召喚されましたが、私のような上級精霊が召喚陣から現れるのは稀でしょう。それこそ私の上に君臨する精霊王様は滅多に現れることはありません」
「精霊王様? ……そもそも精霊にも階級があるんだね」
「はい、まず一番上に君臨するのは精霊王様です。二番目に私のような各属性精霊をまとめる長(上級精霊)がいます。三番目に中級精霊と言って、人や動物などの様々な姿で少し力を持つ精霊達です。最後に下級精霊と言って、力が弱い光の玉の状態で、自然界にいます」
「ふーん、じゃあ最初に戻るけど君は何で聖獣がいると思ったの? だってこの場所には居なかったじゃん」
レンがアクシスに対して質問をした。
「それは私が空間を司る精霊だからです。そもそも空間属性とは亜空間を作り出す事に長けていまして、他にも次元と次元を繋ぎ転移することもできます。
ただ時飛ばしなど時間を操ることはクロノス様のみ可能です。人間が時飛ばしを行うと魔法が暴発して使用した人間が爆散します。
私は空間精霊の長という立場から、私のいる空間内限定で亜空間を隠すことはできません。もしできるとしたらクロノス様や精霊王様だけでしょう。
今回はそれを察知することによって、聖獣様の気配が微かにあることに気づきました」
「そうだったんだ。じゃあそれを察知できるのは君だけなの?」
「はい、他の精霊は無理でしょう。権限がありませんから」
「わかった……。確かに私達の側には聖獣がいるよ」
「それでは、貴方様達は双子の愛し子様と噂の――」
ギルドマスターは言葉を言いかけたが最後まで紡ぐことはなかった。
「そうですよ、やっぱり顔が似ていると双子ってバレるね」
「やっぱり僕らは似ているからね」
「でも、秘密ですよ? 自由に外の国々を見るんですから」
「はい、わかりました。それでは手続きをしてきますね」
「よろしくお願いします」
「あ、そうそうアクシス? 精霊に伝えといてよ、私達を見ても気にしないでって。愛し子のことは秘密だからお願いって」
「かしこまりました。そのように伝えときます」
その後、私達はマスターが手続きをして戻ってくるのを待った。
「手続きができたのでギルドカードを渡しますね。こちらがギルドカードになります」
手渡されたのは半透明のカードだった。
「皆さんカードが行き渡りましたね? それではカードに魔力を流してください」
私はマスターに言われた通り、カードに魔力を流した。そうしたら半透明のタブが空気中に現れ、認識完了と文字が出た。項目は名前、魔法属性、戦い方、冒険者ランク、魔物の討伐数が出てきた。
「こちらのカードは魔力を流すと認識が完了して、完全に本人しか使えないカードになります。
更新は魔法で自動更新されるので魔物の討伐数などその場で確認することができますよ。
まずは一番下のランク、Gランクから始めてもらいます。
冒険者のランクはG〜Aが基本的にありまして、Sランクはよっぽどのことがない限り上がることはできません。なのでAランクが最高ランクだと言っても過言ではないでしょう」
「そうなんですね、わかりました!」
「初めのうちは討伐依頼などはなく、薬草集めになると思うので退屈にはなるかもしれません。それとDランクから一人前と認められるようになるので頑張って下さい」
「はい。それでは依頼を受けてきますね!」
「今回の依頼でしたらこちらで受けますよ。薬草関連は回復薬に使用するルーメリア草と、解毒薬に使用するアスクレア草、体力回復薬に使用するメディサンハーブのどれかをとってきて欲しいです。
基本的に薬草は枯渇しているんですが、皆さんやりたくなくて早々にランクを上げてしまうんですよね……」
「その三つの薬草はどこに生えているんですか?」
「薬草はエデュケアを出て、すぐ森がありますがそこに生えていますよ。その森は初心者でも行きやすい森で魔物が出ても弱い魔物しか出ません。なので安心してとってきて下さい!
あ、あと薬草にもランクがありますので、保存状態がいいとその分報酬も少し上がります」
「色々教えてくださりありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
私達はマスターとの話が終わり部屋から出たら、アランさんと偶々会った。
「おう、お前ら受付にいた子供達だな。死ぬんじゃねぇぞ」
その言葉を残すとヒラヒラと手を振りながら歩いて行った。
「なんか言葉を紡ぐ暇すらなかったね」
「そうだね。一言言って行っちゃった」
「そうですね。では私たちも行きましょうか」
「そうだね」
私達は外門を出て十分ぐらい歩いた。すると森があり、森の中に入ると木々の間から差し込む陽光が緑を優しく照らしていてとても明るかった。
私達は横二列でハルトとレオが前列、私、リック、カイトが後列で森の中を歩いた。
「薬草はどこだろう?」
(主、もう少し先に行ったところにありますよ!)
「もう少し先に行ったところにあるね」
リックと知識書から同時に答えが返ってきた。
「あれ? リックはどうしてわかったの?」
「あぁ僕、精霊視で精霊を見るだけじゃなくて、声が聞こえるから教えてもらえるんだよね」
「なにそれ、ずるい!」
私はリックの言葉に思わず返した。
(主も神眼を持っていた時はできましたよ?)
(それ、随分前の話じゃん!)
(今は、私がいるじゃないですか!)
(そりゃあね)
(では、なくても困らないですよね?)
(うん、まぁ……)
「あ、薬草ってあれですかね?」
「お、本当だ。たくさん生えているな!!」
「群生地ですかね?」
「そうだと思うよ」
カイトとハルトが話していた後にリックが答えた。
「みんな気をつけて探してね。ルーメリア草の近くにはナイトシェードと呼ばれるルーメリア草に似た毒草が生えているから、間違えて取らないようにね」
「……リック、薬草に詳しいの?」
私は薬草の近くで足を止めてリックに聞いた。
「あぁ、僕は豊穣の国シルヴェストロ出身だからね。
自然と植物に関して詳しくなったんだ。しかも精霊も教えてくれるしね」
「なるほどぉ。じゃあリックが私達の薬草採取のリーダーだね」
「このパーティで僕以上に詳しい人なんていないでしょ……」
リックは照れたのか少しだけ顔が赤くなっていた。
「じゃあよろしくね!」
「わかったよ、最初にルーメリア草とナイトシェードの見分け方についてね。
ナイトシェードは葉脈が捩れていて、触ると苦い匂いがする。ルーメリア草はその逆で葉脈が真っ直ぐで、触ると甘い匂いがするんだ。
ナイトシェードは煎じない限り触っても大丈夫だけど、匂いを嗅ぎすぎると体調が悪くなる可能性もあるから気をつけて」
「わかった!」
「どうやって採取すればいいのでしょうか⁇」
「それはね、小刀で根から少し上を切るんだよ。まぁ魔法でもいいけど……」
「根から引っこ抜いたらダメなのか?」
「根から抜くと次が生えてこなくなるから少し残しておくんだ。ついでに切ったところから匂いを嗅いで甘ければそれはルーメリア草だと確信できるよ」
「じゃあみんな手分けして採取しよう!」




