008
私達はパーティー会場に戻り、お父様のいる所へ行った。
私達が会場にいなかったことで、怒られるかと思ったらすごく心配されて逆に申し訳なく思った。次からはどこに行くか言ってから抜け出そうと思った。報連相って大事だよね。あとはダンのことはしっかり言っておいた。
「おとう様ダンは嫌な感じがします」
「おとう様ダンとはお友達にはなれなさそうです」
「二人とも無理に友達は作らなくてもいいよ。カイト君もいるしね」
お父様は私たちの頭を撫でながら言ってくれた。
「リュシアン王子殿下、オレリアン王子殿下この度はうちの息子のことでご迷惑をおかけしました」
「ううん、迷惑じゃないよ!」
「そうだよ、友達だからね」
「それではお礼をしなければいけませんね。本日は息子の瞳のことで、噂が出鱈目だと言っていただきありがとうございました。私では何もしてやらなくて……。ただ、情けなく思います。息子を救っていただき、ありがとう……ございました」
宰相に頭を下げられたが、今度は何も言えなかった。それは宰相が泣いていたような気がしたからだ。宰相は顔に手を当て、頭を上げるといつもと同じ顔をしていた。だが瞳が潤んでいたのでもしかしたら――――
「感謝の気持ち、受け取りました!」
「これからもよろしく」
「はい、息子ともどもよろしくお願いいたします」
「話は終わったか? ……リュシアンにオレリアン、君たちはそろそろ下がったほうがいい。夜遅くだし早く寝なさい」
「「はい、おとう様!それでは失礼いたします!」」
「カイトもまたね!」
「ちゃんと約束忘れないでよ!」
「は、はい!」
双子達は手を振りながらパーティー会場を後にした。
◇
生誕祭から一週間が経ち、今日はいよいよ授業が始まる。リュシアンとオレリアンは授業が始まることが嬉しくて、鼻歌交じりに聖獣達と遊んでいた。あのパーティの次の日に王国全土に聖獣が生まれた事を発表したが、どんな種族が生まれたのかは発表しなかった。
リュシアンとオレリアンが聖獣と戯れている姿を見守っている侍女達は至福の時間を過ごしていた。
しばらくすると、ドアがノックされ――
「失礼いたします。フェデリー先生をお連れいたしました」
「ちょっと、待ってねー!」
「じゃあキースとルキは影に入っててね」
「わかったー!」
「了解したぞ」
キースとルキを影に入れ、入室の許可を出す。
「「どうぞー!」」
「失礼いたします。本日から、歴史と魔法を教えることになりましたフェデリー・フロンティアでございます。よろしくお願いいたします」
「「よろしくお願いします!」」
「早速ですが殿下達のことはなんとお呼びいたしましょう?」
「私はリン!」
「僕はレン、って呼んでください」
「かしこまりました。リン様とレン様ですね」
「ううん、違うよ。リンとレンですよ! あと先生だからもっとラフな口調で大丈夫です!」
「僕たちにいろいろな事を教えてくれる先生ですから」
「そ、それではリン君とレン君とお呼びします。言葉遣いは癖なので諦めてください」
「「はい!」」
「では早速、この国の歴史や神様達についてから学びましょうか?」
「「はい!」」
「それでは始めます。まず初めに神様達は七柱いますが名前はわかりますか?」
「うーん、ルナ様と……」
「ステラ様! そのほかの神様はわからないです……」
「そうですね。双生神様の他に、あと五柱います。一柱目が鍛治の神ラーリウス様、二柱目が学問の神メーティス様、三柱目が豊穣の神リベラ様、四柱目が工芸の神ヴィカル様、五柱目が時の神クロノス様です」
「先生、ステラ様とルナ様はなんの神様ですか⁉︎」
「ステラ様は戦争の神で、ルナ様が魔法の神となります。双生神様は七柱の中で特に強い力を持っていますが、今までに愛し子の存在は確認されておらず加護だけが確認されていました。ですが、お二人が生まれて来てくださいましたので、お二人は双生神様の初めての愛し子様となります」
「へぇ、ルナ様もステラ様も強いんだね〜」
「そうだね、それにしても戦争と魔法?」
「戦争の神ステラ様は簡単に言ってしまえば物理攻撃が優れており、他にも指揮管理能力を得意としています。反対に魔法の神ルナ様は魔法攻撃を得意としており、ルナ様に限り神様達の中で全属性魔法を扱うことができます。ほかの神々は全属性魔法を扱うことができません。ステラ様とルナ様は二柱で一柱と考えると神々の中で敵う神はいないと思います」
「「お二人ともすごい!」」
「そうですよ。そして私達が住んでいるこのベネディクト王国は双生神様を祀っています。ほかの国々では自国にあった神様を一柱祀っていますが、聖魔法教皇国は全ての神様を祀っています。反対に魔王が住むゲネシス大陸と竜人の住むリナルド王国では神様を祀っていません。リナルド王国では竜神を祀っています。基本的な神様のお話はこんな感じですが質問はありますか?」
「大丈夫です!」
「僕もー」
「それでは次に国についてお話しします」
「「はい!」」
「まずこの世界には十の国家が存在しています。
一つ目の国は私達が住んでいる、大陸の中心にあるベネディクト王国です。
二つ目の国はここより東に行った最も東に位置する国、オルトゥス帝国です。この国は人族が治める国であり、一つの国が周辺国を従属国にして一個の大きな国にしています。
三つ目の国は反対の西側に位置する国でランシー王国と呼ばれ、この国もまた人族が治める国となっています。
四つ目の国はオルトゥス帝国とベネディクト王国の間に位置する国でオルランド共和国といって、六種の獣人族が代表制で治める国になっています。
五つ目の国がベネディクト王国とランシー王国の間にある、聖魔法教皇国のアンセルモと呼ばれ、この国は教皇が治めています。
六つ目の国がベネディクト王国の上側に位置する職人の国ルティフェクス王国で、この国はドワーフ族が治めています。
七つ目の国はベネディクト王国の下に位置する国で豊穣の国シルヴェストロ王国で、この国はエルフ族が治めています。
八つ目の国はベネディクト王国とオルランド共和国の下に位置し、シルヴェストロ王国の隣にある国、リナルド王国です。
この国は小国で竜人族が治めています。
九つ目の国がベネディクト王国の隣に位置する、学園都市国家エデュケアと呼ばれ、こちらは学園長が治めているためどの国にも属しません。
十の国がこの大陸とは少し離れたところにある、魔王が治める国ゲネシスです。
少し長くなりましたが覚えられましたか?」
「大丈夫そうです!」
「先生、学園都市には学園がいくつあるんですか?」
「学園は全てで三つあります。
一つ目は魔法学園です。こちらには魔法の実技や研究など魔法に関することのみを学ぶ場所です。
二つ目に士官学園です。こちらは剣術や柔術、戦術などの騎士に関することのみを学ぶ場所です。
三つ目は私が卒業した王立学園です。こちらは魔法から剣術、柔術などの武術、教養など幅広く学ぶことができます。しかし、こちらの王立学園は十二歳までに入れなければ受験する資格を永久的に失います。
最初に話した二つの学園、魔法学園と士官学園は十五歳までに入らなければ永久的に受験する資格を失います。ただし、受験をしてしまえば試験は簡単なので誰でも入ることができます。
王立学園は毎年人気で倍率が非常に高いものとなっていますが、最近は入学する子達の質が落ちている気がします。王立学園に入るからには優秀ではないといけないんですけどねぇ」
「そうなんですね」
「僕たちも王立学園目指すよね⁉︎」
「あぁ、リンくんとレンくんは難しいかもしれません」
「えぇ、どうしてですか⁉︎」
「僕たちも学園行きたいです!」
「まぁ、その愛し子様なので……」
「「えっ、そんなところに弊害が出るの……」」
「陛下に頼まれてはいかがですか?」
「そうしてみます!」
「リン、絶対行くよ!」
「うん!!」
「それでは、休憩にしますね、また一時間後にこちらに来て下さい。次は魔法について授業をしましょう」
「「先生、ありがとうございました!」」
休憩になり私達はお父様の部屋に突撃訪問した。学園に行きたいと頼み込み、最初はダメだの一点張りだったけど、私達が悲しそうな顔をしたら慌て出した。 もう一押しだと思った私達は、泣いてみた。そうしたら、条件付きで許可をくれた。
条件は三つあって
一つ目は三年後に試験を受けること、それに合格できなければ諦めること。
二つ目は合格したら絶対に愛し子だとバレないように変装する事。ただし学園長には話すらしい。みんなにバレたら即刻戻って来てもらうって言われた。
最後の三つ目は、絶対にカイトを連れて行く事だって。
カイトが合格できなかったら私達は学園に行けないって事。
そうしたらカイトも試験勉強しなきゃだよね? 私たちと一緒に勉強するしかないよね? お父様に言ってカイトにも王宮に来てもらうか。
学園行きの許可もらったし、試験に向けて頑張らなくちゃね。……というか、身体の年齢に精神が引っ張られている気がする。まぁ、それはそれでいい事だよね? 二度目の人生楽しんでなんぼだよね!




