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迷える君を 望む場所へと(書き直し前)  作者: 差氏 ミズキ
魅夜編
22/34

幕間 エディ=クラム・メリオス Part2



 あれから数ヶ月が経過した。



 「はぁ……お腹空いた…」



 薄暗い路地の中。ほつれ気味の衣服に見を纏い、石畳の上にゴロンと寝転んでいる少年がいる。




 お金もない。住居もない。食べ物は外に置かれたゴミ箱から漁って入手している。




 時折その店や家の主に見つかって、青痣だらけになるまでボコボコにされたり、ゴミ箱からいい状態のモノを持ち去っても、他の浮浪者達に奪われてしまったり、散々な生活を送っている。




 彼の名はエディ。




 ティリモ村に産まれた人間だ。




 彼が今居るのは、所謂いわゆるスラム街と呼称される地帯である。右も左もホームレスや荒くれ者、犯罪者予備軍に浮浪者。たまに身寄りのない子供。


 エディは身寄りのない子供に分類されるかもしれない。




 エディは天使と別れた後、帝都に無事に侵入することができた。…までは良いものの、彼には何も無かった。何もかもが生きる上で足りていなかった。




 お金も、年齢も、スキルも。



「……そろそろか」



 ムクリと力なく起き上がり、いつもの場所へと歩き始める。




 スラム街の路地を、暗い方へ向かいずんずんと、慣れた足取りで突き進むエディ。そして、ピタリと足を止めてソレに手を伸ばして開いた。




 するとどうしたことか、今日の食料は豊作のようで。



「おお、今日は大量だな…珍しい」



 一つ手にとって口に運ぶ。



「…ッ!」



 突如、鋭い痛みがエディの口の中を襲った。鉄の味が口に広がり、せっかくの食事も台無しである。



「…いってぇ………!」



 口の中に刺さったソレを引き抜いて確認。



「…は?釘…?」


「確保ー!」

「っがぁ…!?」



 扉が勢いよく開かれ、その中からガタイのいいヤクザのような様相の男。この店の主と思われる人物が、扉の奥から飛び出してエディの胸ぐらを力強く掴み上げた。


 お陰でエディのほつれ気味だった衣服は破れてしまっている。



「へっへっへ、やっと捕まえたぞ。いつも俺の商品をただ食いしやがって…」


「ふ、ふててるじゃないあ!」


「えぇ?何だって?口の中でも怪我したか?」



 …と、意地悪な笑みを浮かべる店主。その手には、つい先程にエディがかじりついたモノと同様のモノが握られている。



 ソレをエディの口元に寄せて、



「お腹が空いてるんだってなぁ…?」



 …と、その顔のシワを深くしながら、ただひたすらに悪意のある不気味な笑みを浮かべた顔で言った。




 エディは思わず目を見開いた。




 どう見ても…どう見ても、裁縫に使うような針が、そのタベモノから飛び出ているからだ。グイグイと押し付けられるだけでも、頬に怪我をしてしまっている。



「ほぉ~ら!口を開けなぁ!」


「っぐぐ…!」


「お腹が空いてるのに食べないのかぁ〜?」



 「それとも…」と、貼り付けていた笑顔を脱ぎ捨てて、怒気に満ちた表情へと切り替えながら、



「俺の商品が食えない程不味いって言いてぇのか!!」


「痛い…!!っもが!?」


「ほおら、よお〜〜く味わいなぁ」



 悶絶するエディの顎を掴んで。



「ほら!ちゃんと噛まないと!」


「ーーーーーーーッ!!!!」



 路地裏に悲鳴にならない悲鳴が響く。




 意識が飛びそうになるたびに、同時に痛みで覚醒して、そしてまた気絶しそうになる。




 顎の感覚も無くなってきたというのに、痛みだけは未だに残り続けている。




 いつになったら満足するのか、新しいおもちゃを得た子供のように、エディの口を開いて…閉じて…




 開いて!閉じて!




 開いて!




 閉じて!










 開いて!閉じて!開いて!閉じて!開いて!閉じて!開いて!閉じて!開いて!閉じて!開いて!閉じて!開いて!閉じて!開いて!閉じて!


「がぁははははははァ!!」











 また開いて!閉じ…



「おい若造…いったいコレは、何をしておるのだ…?」



 自身の顎の動きが止まり、それから、かなり年老いたような声が聴こえた。




 どうやら口を動かしてくる腕が止まったのは、この老人が店主の腕を掴んで止めているかららしい。



「…あぁん?……なんだぁ、て……め……?なァッー!?」



 もう殆ど無い意識と感覚の中で、エディは無意識に手を伸ばした。



「…………」


「…あい、解った。儂が助けるから、安心して寝ておれ」



 ニコッと笑顔を浮かべたらしいが、エディにはソレが見えていない。


 だが、その優しい声は鮮明に耳に届いたようで、強張りきった彼の顔からはスゥ…と、まるで寝入るかのように力が抜けていく。



「あ、貴方様は…!!」


「…さて、その子を解放しなさいな。若造よ。今ならば、無益放免にしてやらんこともない」



 あくまで朗らかに語りかける老人。それに店主はドサリと持っていたモノを落として。



「ほ、本t「そんなわけが無かろう!!」


「ハルヴァーッ!?」



 エディの身柄を解放して九死に一生を得たかのような表情を浮かべていた店主だったが、すぐさまその顔はグシャリと歪み、赤く染められる。



「ふん。年に一度のティリオニアスとの食事会帰りでいい気分だったところに……とんだ災難だわい」



 起きたことを説明するならば、


 その〝御老体〟から放たれるには違和感の覚えてしまう程に、軽やかで華麗な〝後ろ回し蹴り〟が、店主の顔面目掛けて炸裂したのだ。



「いや、一番の災難はお主か……可哀想に。顎が崩れておる…」



 この武闘派の老人こそが、エディの人生を大きく変える人物である。



「…ふむ、この子にしなさいと、神は言っておったのだろう。事前に開示されていた外見的特徴と、恐ろしい程に一致しとるわい」



 …と、何やら意味深なことを呟きながら、老人はおもむろに右手を上げて、その指を鳴らした。



















       ▲ 一秒前 ▲



















       ◀ 十秒前 ▶



















       ▼ 百秒前 ▼



















「おお、今日は大量だな…珍しい」



 少し薄暗い、比較的公道に近しい路地の中で、ゴミ箱の中から食べ物を一つ手にとり、そのまま口に運ぼうとしている少年がいる。




 それを、



「これ、少し待たれよ」



 と、少年の細い腕を優しく止める老人風の男が居た。


 どこからともなく、音もなく、少年の隣に初めから居たかのように、やけに質の良い衣服に身を包んでいる老人風の男はそこに立っていた。



「っ!?」


「どぉれ…ちょいと見させておくれ…」



 エディの手に握られたモノをヒョイと取り上げて、その中を確認する謎の老人風の男。そして、その中から複数個の釘を取り出し、怪訝そうな面持ちの少年へ向かいソレを掲げた。



「な…!く、釘!?いったい…どうして…?」


「さて…予想ではそろそろ…」



 腰から下げた懐中時計の針を目で追いながら、何やら意味深なことを呟く老人風の男。そして、お店のドアノブは回り、そのまま勢いよく開かれる

 


「確h「そりゃ」


「ヌガー!?」


「え?…いったいこれは…」



 店から出てきた男の鳩尾みぞおちに、力強く相手を屠る一蹴り…言うなればヤクザキックを決め込んだ。老人風の男曰く、調子に乗っている若造に喝をいれただけとのこと。




 コレが、エディと〝老人〟の出会いだ。




    ▲ それからしばらく ▲




 場所は老人の暮らしている住居。




 心地の良いそよ風に揺られている、日当たりが良く緑に富んだ庭園の、石造りの…それでいて滑らかな腰掛けの上にて。



「さて、ようやっと落ち着けるわい」



 ドカッ…と、大胆に腰を下ろす老人。



「あ、あの…どうして僕をこんな所まで…?」



 腰掛けに座らずに、立った状態のまま問い掛けるエディ。



「なぁに、ただの気まぐれじゃよ。儂のな」


「はぁ…そうですか」


「ほれ、お主も座りなさい。立ったままでは話がやり辛いでな…」


「は、はい、失礼します…」


「まだ歳幼いというのに…可愛げがないのぉ」



 白髪で、赤い……真紅の瞳。


 若々しく映るシワのない肌。


 一切の隙が感じられない立ち振舞。


 腰から下げられた懐中時計。



「なんじゃ?そんなにジロジロしおって…」


「ご、ご氏名を教えて頂けますか?」


「そうかしこまらなくても良い。ラフにいこう。そういうのは性に合わんでな」


「は、はい」



 口調と服装、手に持つ杖からは老人という特徴を覚える。が、それ以外の箇所に視点を置くと、何十歳にも若く見えて不思議な人だ。




 それが、エディが老人に対して抱いた印象である。




 服装を変えて、杖をなくし、無言の状態でいれば、若者と区別はつかないだろう。…と、エディは心の内で呟く。




 それ程までに、この老人は若く見えるのだ。



「儂の名はヴァタル・メリオス。この地の統治を任されている、人呼んで老伯爵じゃ。今年で七十代になってしまう老いぼれじゃ」


「な、七……?」



 困惑の表情を浮かべるエディ。だがすぐに気を取り直し、彼自身もその名を発した。



「エディです。愛称ではなく、ただ姓が無いという名前です」


「…ほう。では、お主で確定というわけだな」


「…?なんの話ですか…?」


「こちらの話じゃよ。子供にはちと難しいモノでなぁ」



 どうやら続きを話す気はないらしい。




 そう見切りをつけてエディは別のことについて問いかける。



「あの、どうして僕をメリオス伯爵領に…さらには、屋敷にまで連れてきたのですか?」


「なぁに、簡単なことよ」



 手に持っている杖をメリオス伯爵は見つめながら。



「儂には跡継ぎがおらぬ。どうすればメリオスの名を後世に残せるのか、ソレを友人に訊いてみたのだ。そして、その解答がエディ。お主じゃ」


「なにを言っているのか…僕にはわかりかねます。そもそも、僕を跡継ぎにしたと仮定して、メリオス…の名を残せるわけではないじゃないですか。……語り継ぐなら話はべつなのですが」


「だから、名を与えるのだ。お主を養子として迎える為にのぉ」



 真紅の瞳をエディの方へと向けて、彼は少年にその名を与える。友人と共に考えたその名を、出会って間もないはずの少年へと授ける。




 その名は、後に人類に希望をもたらすだろう。


 その名は、後に人類史上最強だと語り継がれるだろう。


 その名は、後に誰かの心に大きな影響を与えるだろう。




 黒い髪に黒い瞳の、一見どこにでもいそうな風貌の少年には、メリオス伯爵の友人…当時の世界王、モルディスク・ライトが興味を惹かれるモノが宿っている。




 ソレの正体は不明。世界王の力を持ってしても謎らしい。



「お主の新しい名は」








 クラム・メリオス




 コレが、エディの二つ目の名前である。




 故に彼は、


 エディ=クラム・メリオスなのだ。




    ▲ それから数年が経過した ▲




 メリオス伯爵の屋敷の中庭。




 一面の草が綺麗に刈り取られ…硬く踏みしめられた地面で埋め尽くされている、俗に言う訓練場らしき場所にて。




 すっかり成長して背丈が大幅に伸びたエディが、メリオス伯爵が厳しく見守る中で、剣技や格闘技…ソレラを組み合わせた特殊なステップを踏んでいた。




 未だに十代もなかばだというのに、その動きはかなり洗練されていて、それは最早…一種の舞踊としても愉しむことが可能だろう。




 リズムの安定していない不規則なステップ。



 長い銃身の先に刃渡りが十数センチほどの刃が取り付いている得物。


 コレから撃ち放ち…刃を振るい、その球の軌道を自分で自由に作り変えながら、斜め右前の的に命中させる。



 突然近場に敵が現れた、もしくは空から降り立ってきた、もしくはエディの剣技や砲撃を避けて肉薄してき場合の足取りと、敵の攻撃を受け流す事に徹した格闘術。


 更に加えて後ろ回し蹴りという、もしもの場合にのみ使用するように言われた(体力をごっそりと使うので)一撃必殺に特化した蹴りも練習している。



「っふん…!ほっ!……よし」



 エディは腰から下げた懐中時計に手を伸ばしてカチッとボタンのような部分を押した。



「あちゃぁ〜…」


「一通りの動きを時間通りに達成出来なかったじゃろ?」


「うん。やっぱり爺ちゃんはすぐに解るんだね。数えてなくても、感覚で秒数を…コンマ数秒の世界を掴む。文字だと少ないのに、いつになれば到達出来るかな…」


「何を言っておる。儂の積み重ねてきた十年に、お主は一年で到達しているではないか。二十年間の努力に二年で到達、三十年間の努力には…二年と半年だったかのぉ…?こりゃ、儂の方が自身をなくしそうじゃ」



 エディはただ思う。




 ゼロからイチを生み出すのにどれだけの才能がいるのかを知らなさそうだ。僕はただ、貴方が作り出して研究した〝結果〟を、そのマニュアルをガイド通りに行っているだけなのに。なのに天才かのように扱ってくる。




 本当の天才は貴方ではありませんか。




 自力で〝世界中枢〟に侵入を果たし、そして当然のように〝時を超越出来る力〟を手に入れた。それも、取引の魔神を介さずに。




 どうやったらそこまで行けるのだろう。




 …と、自身の動きに関するアドバイスを聴きながら、黒く鮮やかな瞳を細めてメリオス伯爵を見詰めるエディ。




 メリオス伯爵のお孫さん…というか、帝王陛下…いや、ヅェッツライト大公…?呼び方は未だによく分からないけど、その人もなにやら特殊な力を有しているらしい。




 彼もまた、魔神と取引を行わずにそこまで到達したという。



「僕も…いつか自力で手に入れます」


「…む?何じゃ急に…」


「ああ、いえ。気にせずに」



 手に持っている懐中時計のボタンを再度押し込み、カチッと音を鳴らす。



「アレなんじゃよなぁ…お主は時間に間に合っていないのではなく、早すぎてしまう。…流石は儂の孫よ」


「いえ…」


「かなり力をセーブしてたじゃろ?見ていて動きづらそうでな…」


「…はい…そうです。ランニングが丁度いいのに…両腕と両足を使わずに地面を這っている。…そのように感じてました」


「化物じゃな」


「化物ですか?なら、もう少し頑張らないとですね。僕は化物に勝つために鍛錬をしているので」


「ふむ。儂も、お主が化物の殻を破った後が楽しみじゃわい」



 そしてまた、タイムを定めて一連の動きを始めようとしていたところに、屋敷の鐘が大きく鳴り響いた。



「っあぁ!ヤバい!荷物纏めないと!」


「戻すか?」


「そんなくだらない事に力を使っちゃだめです!お爺ちゃんはもっと長生きしてください!」



 焦りに焦りながらも、冷静な観察眼と軽やかな足取りで、道行く給仕や執事達をハラリと躱しながら自室へと全力疾走。




 部屋の前に辿り着いてから勢いよく扉を開き、思ったよりも強く開き過ぎた!…と、チラリと扉に目を向けて自身の荷物を回収したエディ。



「急げー…!試験に遅れるのはまずい!」



 本日は、ヅェッツライト騎士団への入隊試験が控えている。




 本来ならばかなりの段階を踏んで、それでようやく試験に臨めるのだが、エディはメリオス伯爵の伝手により…諸々の過程をスキップして直に試験に参加出来る。




 エディ本人の意見としては、ズルをしているみたいだから嫌だ。メリオス伯爵の返事としては、圧倒的な得点を稼いで他の参加者のやる気を削ぐわけにはいかんだろう。




 実際、今のエディならば普遍種なんて風前の灯火に過ぎない存在だろう。それも生身で、一糸纏わぬ姿だとしても、普遍種の相手は三桁単位で余裕綽々だろう。



「行って来まーす!」


「本気を出しすぎて、他の参加者の気力を無くさせるんじゃないぞー」



 屋敷の扉を開けて、庭園に身を乗り出す。駆け足に正門へと向かい、門番の使用人が門を開く前に跳躍して飛び越え、もともとエディの為に用意されていた馬車を尻目に見て…自身の足で試験会場まで駆けていった。



「馬車は…ちょっと遅いかな」



 僕の足の速さが馬車の速度を越えた時、メリオス伯爵が驚いた顔をしていたなぁ。懐かしい。




 …どうして僕の身体はこんなにも成長したんだろう。




 ここ最近、エディは自分自身に対して、疑問を抱くことが多かった。驚異的な身体能力について、メリオス伯爵がたまに呟く〝神のお告げ〟のようなモノについて、そして、



「…………う~ん…」



 手鏡を睨みつけ、手櫛で跳ねている髪の毛を梳かしながらソレを確認する。



「黒だよなぁ…?」



 ここ最近、エディは疑問を抱くことが多くなった。




 その中でも一番の疑問は、



「黒…のはずだよなぁ…?」




 自身の瞳の色についてである。




 ソレは、基本的には黒一色。…なのだが、二…三年前辺りから、自身の漆黒の瞳が別の色に輝く現象が度々発生するようになった。




 それは真紅に。


 神ように、お世辞にも人間らしいとは言えない妖しさを持つ真紅の瞳に。


 コレが何なのかは良く解らない。



 …だが、歴史に名を残す武人達や科学者、王様などの偉い立場の人達…その中でも上澄みの、革新的な、圧倒的な業績を後世に遺しているモノは…どの文献史料を読み漁ってもこのように記されている。


 宵闇をも見透す事ができる、美しく…優美な、真に紅い瞳を持っていた。…と記されている。



 …当然、良い人物ばかりだけが紅い瞳を所持していたわけではない。


 それは、史上最悪の大犯罪者と謳われている男。


 それは、この世に神様しかいなかった時代に生まれ落ち…そして神殺しをしたとされているモノ。


 それは、どこかの戦場に突然にして現れて…単独で両軍を殲滅したとされている[自主規制]。名前を呼ぼうにも勝手に脳がそれを拒む。…ので、ソレは「公平の魔神フェア」と呼ばれている。



 他にも複数名。


 彼らの瞳は、深く紅くなっていたとのこと。


 化物のように、獰猛さを…荒々しさを持ち、しかし冷徹にモノを捉える深紅の瞳に。そうなっていたとのこと。



「更に、金色にもなるんだよなぁ…」



 エディの瞳の色の変化は真紅だけではない。




 数年前から、エディの瞳は黄金にも輝き出したことが何度もある。何が起因トリガーなのかは定かではないが、コレも紅い瞳と同様なモノだと思われる。


 違いがあるとすれば、コレは〝人間〟にのみ発現しているということくらいか。



「何なんだろう」



 彼は今、もう少しでメリオス伯爵領を抜けようとしている。コレがもし馬車ならば、まだまだ後ろ側に居たことだろう。




 手鏡をリュックに仕舞い、腰から下げた懐中時計を片手に遥か前方を見据える。




 すると見えてくるのは帝都の城壁と、御城のトンガリ。




「おぉ!よし、馬車なら遅刻しそうだったけど、僕の足なら余裕を持って間に合いそうだ!」



 麒麟児。天才。神童。言い連ねる言葉がどこか物足りなく感じられる程の人間。


 神でさえ目を張る特質な存在。



 エディ=クラム・メリオス。

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