ep.9行け!僕たちの林間学校!
こんにちは!晴春述です!
更新しましたので、是非ごゆっくり〜〜!
僕と佐野の仲は険悪だった。かといって仲直りしようと気安く声をかけることすらできなかった。好機が訪れたのは、晩ご飯をキャンプ場で作っていたときだ。佐野を見つけた。そして佐野と目が合った。
何か言おうと思って、佐野に近づいた。
そして、二人はだんだん近づく。佐野が後ずさり、逃げた。そしてしばらく二十メートルほどのところでようやく、佐野を捕まえた。
「佐野…………」
「あんたに呼び捨てされる筋合はないけど」
「佐野さん、ごめん……」
「なにが?」佐野の目は、かなりつり上がっている。
「バスの中で、変なこと言っちゃった。ごめん。あれは本意じゃない。ああ言う話になると、身も蓋もないことを言ってしまうんだ、俺は。だから、許してほしい。もう言わないから、……安心してほしい」俺は佐野の目を見た。
「……っ!ほんとに誓って言える?」
「うん!」
「なら信じるよ?」
「やった!ありがと」
「完全に許したわけじゃないけど、ま、私も安心した」ぷいと向こうを向いて、少しだけ素直じゃない言い方だった。
「あ!あの……」
「こんどはなによ」
「夜九時……噴水で待っていてくれますか?」
「い、いいけど、どうしたの、そんなにかしこまっちゃって……」
ありがとうといい、その言葉にはろくに返事をせず田村は去った。
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わたしは、田村とまた分かれてもとの班に戻ってきた。
「どだった?呼び出されてなに言われた?」咲が早速聞いてきた。
「謝ってきたよ、彼。あまりにもどストレートだったから、ちょっとビビったけど。」
「確かに。そこは田村の良いところでもあり悪いところでもある」藤木さんが納得したように言った。
「あとさ……夜九時に噴水で待っててくれる?って言われた」
そう伝えるなり、同じ班の子たちの顔がぱああっと明るくなり、何かヒソヒソ声で喋っている。わたしにも、なんのことかはだいたい想像がつくが。
結局、そのせいで茄子の半分が焦げた。
そして、夜八時半になった。
「なあ、雪ちん。わたしがこっそり持ってきた化粧道具貸してあげよっか?」
「やめとけ」咲が止めた。「田村がビビったらまずいだろ」「たしかに」
わたしは髪を整え笑顔の練習を鏡に向かってして、涙がこぼれないようにした。
そして時が来た。
「いってきます」
「健闘を祈る」咲と他の子達が言った。
噴水には、先に田村がいた。
「ごめん。抜け出すの難しかった?」
田村が先に訊いた。
「ううん。全然」わたしは田村が座っている噴水の近くのベンチに、隣にちょこんと腰掛けた。
「よかった……」田村は一呼吸おいてこう続けた。
「昨日は……ごめんなさい。非常に申し訳ないことをした。」
わたしは黙って聞いていた。
「こうやって真っ正面から謝れるのは、佐野の良いところを知っているからだ。
たとえば、明るいところ。ちょっと俺がヘマをしても、笑ってごまかしてくれるところ。いたずら好きで、仕掛けられた俺でさえ笑わせてくれるところ。そんな佐野さんはいい人だ。優しい人だ。そんな佐野さんの良いところを見つけられてよかった」
田村は、わたしを見て、思いっきり言った。
「だから、俺は――――――」
「俺は、佐野が好きだ!」
今は夜で少し暑いはずなのに、真夏にプールに思いっきり飛び込んだような爽やかさが感ぜられた。
わたしも、答えなければなるまい。もちろん答えは……
「………………ありがと。……わたしも、好きだよ」
田村の表情が、ぱあっとなった。
「お付き合いしよ?」わたしはそう言っていた。
田村は、「ありがとう」と、真面目な顔で言った。
急に目頭が熱くなってきた。泣かないって決めたのに。準備していた笑顔も、今はどこへやら。
私の頬に、涙が一筋垂れた。
「幸せになろうね」わたしはすすり泣きながら、強い力で田村を抱きしめた。
二人はしばらく、抱きしめ合い、ぬくもりを感じていた。
わたしが帰ったのは、消灯時間ギリギリだった。そして、部屋に入るとみんなが出迎えてくれた。
「よかったね、付き合えて」藤木さんが言った。
「えええーっ、なんで知ってんの?」
「なあ、噴水って、施設の棟からではどこからでも見えるんだよ」
「うわ、まじかー」
「ま、良かったじゃん」
「うん!」
「うわー、うれしそー」咲が笑った。
「よし、もう寝るか」班長が言った。
「ねながら、おい雪ちん、告白文全文抜粋してつたえろ」
「お、覚えている限りね……」
「いうんかい!」
こうして、林間学校最後の夜は幕を閉じた。
どうも、晴春述です!
お読みいただきありがとうございました!
それでは次回もお楽しみに!