ep.5混合ダブルスの存在意義
こんにちは!晴春述です!
更新しましたので、是非ごゆっくり〜〜!
体育とは普段の学校生活の中での癒やしの一つである。ルールやマナーさえ守れば、一番楽しい授業だ。
今日はバドミントンをするとのことだ。前から授業でやっていた。しかし、今日は少し違った。
「えーと、皆さんには男女ペアをくんで混合ダブルスをしてもらいたいと思います!」体育教師は言った。
それを聞いた途端、クラスでざわめいた。無理もない。年頃の男女には厳しい要求だ。体育教師は、ではペアを作ってくださーい、と手を叩いた。
「そういえばさ」俺は田中に言った。「田中は誰と組みたいとかある?」
「藤木晴かな」あたかも当然かのように田中は答えた。「付き合ってるし」
「え、嘘だろ?」俺は知らなかった。田中はしーっ、と人差し指を口に近づけた。あんまり公にしてないんだから。
「逆に田村は誰と組むわけ?佐野さん?」
「まさか。佐野さんぐらい可愛い人なら誰か別の人と組むんじゃない?」見た目がいいからか性別伴わず友だちが多いのだ。しかしそう言った時には遅かった。佐野が、おーい、とこっちに来ていた。そして、一瞬で表情が赤くなっていた。
どうやら聞こえてしまったらしい。
「…………たた田村は、……だ、誰と組むの?」
「いや、まだ……決まってない」
「私、結構誘われたけど、自分の選んだ人とやりたいの。なんか、男子が、私を誘って玉砕するゲームしてるらしいし」佐野は悲しそうに言った。「だから私とやって、お願い!」
流石にそれはひどい。佐野がアソビに利用されるとは。
「いいよ」
「ありがとっ!」俺たちのコンビネーションが決まった。
しかし、安心していられるのもつかの間だった。
石谷が来た。
「おい、佐野さんおれとやろー」石谷が佐野の右袖を引っ張った。
「え、私田村とやるって決めたから……」
「は?いやいやいや、俺左だから絶対俺とやったほうが強いよ?」
「そういう問題じゃないだろっ!」俺は叫んだ。
何この三角関係…………。
「私、田村と組む」怒ったように佐野は言った。
結局石谷は、先生と組んだ。
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「おーい」と、田中の声がした。予言通り、藤木さんといる。
「試合しようぜ」
「どうする?」俺は佐野に聞いた。
「いいね、やろう」
――――試合が始まった。
一進一退が続いて、1ゲーム目は6―7で1点を譲ったデュースに突入した。
佐野が前衛、俺が後衛だ。田中がサービスをうった。高く遠くシャトルが飛ぶ。
「任せてっ」佐野が後ろに下がった。そして、思いっきりラケットを振り上げた。途端、
「ああっ!」佐野がバランスを崩した。ラケットが空を切り、シャトルが落ちる。
そして、倒れ込み、俺の腹に佐野の頭がぶつかる形でふたりとも倒れ込んだのだ――――。
幸い頭は打たなかったが、うう、お腹がすごく重い。なぜか、それは佐野がそこにいるからだ。
「ううっ…………」佐野はうめいてムクリと起き上がった。
「だ、大丈夫っ?」倒れている俺の目の前に来た。
佐野が手を差し出してきて、つかんだら思い切り引っ張られた。
その勢いで、顔の間隔が十センチメートルほどになり、二人は顔を赤くして、そっぽを向いた。
「…………」
そしてペースは乱れ、結局負けてしまった。
「大丈夫だった?」佐野は教室に戻った途端訊いてきた。
「大丈夫大丈夫!」
「ほんとうに?けがはない?」
本気で心配しているらしい。心配を落ち着けるために、
「……少し重かった」冗談を言った。
「おまえっ……」これはお怒りのご様子。しかし、冗談であることに気がついたのか、しばらくして、佐野はそっぽを向いて、聞こえないように言った。
「誰かさんのために少し痩せたんだけどなあ……」
とか抜かして、本当はこっちを見てニヤニヤしている。ハニートラップじゃないんだから、後悔させる気か?ちょっとからかおうとしただけだぞ。だけどここで謝ったら「なに本気にしてんの」って笑われるだけだ。しかし、気づいたら俺は佐野と同じくらいの大きさで、
「まあっ、ほほほほんとは、いいにおいしたっていうつもりだったんだが?」と言い返していた。馬鹿なのか俺は?
ふたりとも、顔を朱に染めていた。
いいにおいしたっていうのは、本当だ。
どうも、晴春述です!
お読みいただきありがとうございました!
では次回もお楽しみに!