ep.3 また始まる朝
こんにちは!晴春述です!
更新しましたので、是非ごゆっくり〜〜!
結局、何の整理もつかずに、朝となった。
佐野におはようと声をかけていつもの席に腰を掛ける。
至って普通のホームルームが終わり、一限目が終わり、二限目も終わり……三限目が始まろうとしていた。
英語だった。
教師が隣の席の人と席でペア作れよー、と声を掛ける。今までの復習だ。
佐野と机を合わせ、何から喋ったらいいかわからずまた無言でいると、
「そういえばさ、田村って兄弟いんの?」
全然関係ない話が始まった。
「うん、妹が一人いる」
「ふうん……」
佐野は少し考えていたが、口を開いた。
「じゃあさ――田村に似て可愛いんだろうなーっ」
「はあっ?」それを聞いて俺は怪訝な顔をした。
「えー、例えばひとを助けようとしてるのにすっげー不器用なとことか、感情が露骨に顔に出るところとか」
「エエッ」全く記憶がない。もしそうなのだとしたら自分が今まで考えていたことがもし全てバレていたらと考えると恐ろしい。
「あとは――女子と話すとすぐ顔が赤くなるとことかねーっ♡」
「ヒッ……!」これでは美少女らしき佐野を異性として認識していたも同然ではないか。大敗である。
しばらくの間、俺は両手で顔を覆って赤面を隠していた。自分でも顔が熱いのが分かる。それを見て佐野はいたずらっぽく目を細め、ケタケタ笑っていた。
その後はペアが崩され、かしこまった教師によって授業が続行された。
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給食当番とは大変なものだ。おもたげな食缶を黙して階段を登るのだから。晴人は、それを最後尾でみている『雑巾係』なのだが。
給食をつぎ終わり、回し終わり、各自が席についた。皆しばらく静かに食事をしていたが、佐野が声を潜めて、眉根をひそめてこう言った。
「わたし、昨日お腹壊しちゃったからさ、――――牛乳飲んでくんない?」
と牛乳を差し出してきた。
「いいよ……」と、さっきああ言われたので、自分の顔が赤くなっているとわかるとしどろもどろ、たじたじとなってうまく会話できない。
牛乳にはあらかじめストローが刺さっていた。
「これ、口つけてないよね……?」と訊くと
「うん!つけてない」と返ってきた。本当なのだろう。
俺はそのままその牛乳を飲もうとした。しかし、いくらストローに力を込めても牛乳が吸い上がらない。さっきああいうふうに痴態を晒されたので、見返してやろうと密かに思っていた俺は、ここで間抜けな姿を見せたくなかった。そして、そのためか俺は何を思ったか思いっきりパックを握りつぶし、牛乳を喉に大量に送ろうとした。ぐしゃっと重い音がした。
しかし牛乳はストローから出なかった。かわりに、ストローとパックの間の隙間から思いっきり飛び散ったのである。
「うわあっ!」俺の制服には、豪快に牛乳が飛び散っている。
佐野がキャハハと盛大に笑っている。
あとから聞いたことだが、ストローの中に粘土が詰められていたらしい。
見事ハメられたわけである。
牛乳を拭き終わり、一段落ついたので、今度こそ一泡吹かせようと佐野に向かい合った。
「そういえばさ……佐野さんって兄弟っている?」
「え、まァ、いるけど……」目をそらし、少し恥ずかしそうにそう言った。
「兄?弟?妹?」
「兄ちゃんが、ひとり……」
「へええ」
俺は勝ち誇った顔で頷いた。
「じゃあ、その兄ちゃんは佐野に似て……」とドヤ顔で俺が言いかけると手を少し前に出して、顔を真っ赤っ赤にして顔を歪めていた。「やめてよっ……」
「幸せだろうなあ」
「ええっ」
「おっちょこちょいな妹の世話で暇なときがないだろうから」俺はドヤ顔で少し大きな声でわからせるように言った。
「ひいっ」佐野は顔を真っ赤っ赤にして、もっと赤くなって目をそらして、給湯器みたいな声で唸っていた。
言い負かした……はずなのだがこっちもすごく恥ずかしい。言ったこっちのほうがもっと何杯も恥ずかしいに違いない。だから……。
これは……。
これは……。
これも俺の敗けだ。
どうも、晴春述です!
お読みいただきありがとうございました!
それでは次回もお楽しみに!