ep.2 面と向かって
こんにちは!晴春述です!
更新しましたので、是非ごゆっくり〜〜!
話し合いといえど、打ち解けの悪い俺にとってはあまりうれしいことではなかった。幸い、あの佐野が近くにいるだけで安心する。全員知らない人よりはマシ、という意味だ。男女各二人のグループ。
皆黙って不穏な空気を察したのか、もうひとりの男子が声を上げた。
「ね、どうする?なんか興味ある?」
と訊いてきた。
「ぬーん……むずかしいなぁ〜」そういって佐野は持ち前の能天気さであくびをしながらぐぐぐっと手を上に上げて伸びをした。
むずかしいなぁ〜、なんて、考えてすらないだろ!絶対!
その返答に少し興ざめしたのかちょっと冷たい声で相槌を打った。その男は石谷という。そしてその男は、一方的に話をし始めた。俺こういうの興味あるんだ、という、話題提示というよりは自慢話である。そして残りの女子二人、男子一人は苦笑してそれを見ていた。
彼はコミュニケーションが得意、なのではないのだろう。会話が得意なのではない。一方的に話すことに特化した、ただのスピーカーである。それに、石谷は俺を見ていない。すなわち、俺は聴衆ではない。ずっと佐野を見ている。少し俺は吐き気を感じた。この男は、女しか見ていない。俺は、石谷の、芝居の小道具でしかない……。
石谷の話でその時間は終わった。何の進展もなく、帰ることになった。
今日は、部活もなく田中 克幸といっしょに帰ることになった。
「俺等のクラスヤバない?」ため息まじりに言った。
「そお?」
「ほらほら……石谷ってやつ」
その名を耳にした途端、田中は全て納得した顔をした。
「班同じだったんだ」
「うわ、まじ最悪やん」
「でしょ……?アイツ女子のことしか見てないし……」
「大丈夫!去年からずっとああだから!学校じゃ『変態』っていうあだ名が付いてるぜ?」
田中は急にニッと笑って答えた。「今日は佐野さんが餌食になってたよな〜」
「ほんと。かわいそ〜」ため息が出た。
「まァ、しょうがないよ。佐野さん可愛いから……」
「エゲッ!」
俺は思わず変な声を出してしまった。
表情を変えず、なんと、なんと田中はそんなことを抜かしやがったのだ。
田中はそれを見て笑って言う。
「なになになに、おまえもしかして……佐野さんのこと好きなわけ?」
「ちがうよ……」俺は目をそらして言った。「『可愛い』って言葉に驚いただけだよ……」
田中は鼻を鳴らして、ほんとか〜?と詰め寄ってくる。いたずらっぽくケタケタ笑っている。「ホントだよッ」と田中の頭を思いっきりはたいた。そして田中はニンマリと笑い、ほくそ笑み、岐路に、じゃーなー!と叫んで帰っていった。「佐野さんのこと好きになっても石谷みたいにはなるなよーッ」と加えて。少しムカついたので、「うるせー!バーカ!」と言い返した。
今日知った共通認識は二つ。
石谷は思いっきり女子としか話さない変態。
佐野さんは……常識的に見て、……可愛い。
あのときの田中の顔を見ると今でもムカつく。
でも、席替えでの、佐野の、「田村!席、となりだ!」といたずらっぽく笑っていた顔が今でも脳裏に浮かぶ。いやいやいやいや。俺も変態になってしまう……。
嘘では、無かったのかもしれない。
お読みいただきありがとうございました!
第三話はどんな構成にしようかと迷っております!では、次回をお楽しみに!