7.私の娘は姪っ子と仲良くなりたい。でも、姪っ子はそうではないようで……私は二人に仲良くなってもらいたい。
コンコン。
扉を叩く音が聞こえた。
「入っていいわよ」
私がそう言うと、扉から一人の少女が先ほどの騎士に連れてこられて入って来た。
少女の名前はミリア。
八歳。
彼女は私と同じ銀色の髪、同じ藍色の目をしている
また、髪をツインテールにして、リボンを付けている。
背はフィリアよりちょっと低い。
「ミリア。彼女はフィリア。仲良くしてね」
「わ、分かりました。お母様」
少し人見知りのミリアは、少し緊張しながら挨拶した。
「フィリア。この娘は私の娘のミリア。仲良くしてね」
「よ、よろしくね、フィリアさん」
「……」
美しいカーテシーをしながら挨拶するミリアを笑顔で見ながら、横目でフィリアを見ると、
「よろしくお願いいたします。ミリア様」
彼女はそう言って土下座した。
そして、
「フ、フィリア!靴を舐めないでいいのよ!」
フィリアはミリアの靴を舐めようとしたのだ。
「挨拶する時は相手の靴を舐めるのが当たり前なので」
「そんな当たり前はありません!」
「ですが、私はそう教わりました。今まで断られた事も有りません」
ああ、何と言う事だろう。
彼女は、人の靴を舐める生活を送って来たのだ。
それを当たり前とし、周囲の人もそれを当然としてしていたのだ。
ふと、そう言えば私は舐められた事は無かったなと思ったが、考えれば私が挨拶した時は殺意が勝っていたのだろう。
「あの、フィリアさん」
「ミリア様。私は奴隷です。呼び捨てでお願い致します。それに、そんな丁寧に喋らなくても結構です」
「え、でも」
「ミリア。呼び捨てで呼んであげて」
「わかりました。よろしくね、フィリア」
私が助け船を出し、ミリアはフィリアの事を呼び捨てで呼んだ。
ミリアが嬉しそうに笑っているので、本音では呼び捨てにしたかったのだろう。
すると、ミリアはツインテールの両方の付け根についているリボンのうち、左側に着けていた青い方を外すと……
「これ、あげるね。お揃いにしよ」
そう笑って言った。
ちにみに、ミリアのリボンは赤と青のペアだ。
そう言えばミリアは友達とお揃いの服とかしたいって言ってたっけ……
今まで同年代の友人と言えば高位の貴族ばかり。
そう言えば貴族じゃない同年代の知り合いなんてフィリアが初めてだろう。
「ありがとうございます。ですが、それは頂けません」
「え?」
断られるなんて意外だったんだろう。
ミリアは思わず固まっている。
「フィリア。もらっても構いませんよ」
思わず助け船を出す。
しかし、フィリアは首を振り、
「私は奴隷です。恐れ多くも王女様から物を頂くなどできません」
「フィリア、大丈夫ですよ。このくらいの事で目くじらを立てるものなどいませんよ」
「そ、そうだよ」
私が再度助け船を出し、ミリアも同意する。
「ありがとうございます。お気持ちは嬉しいのですが、やはりお断りします」
「なぜですか?」
私は思わずそう質問した。
この娘の母親なら、むしろ大喜びでもらうだろう。
というか、あげると言う前に欲しい欲しいと騒ぐ。
そう思った私の疑問に、フィリアは少し震えながら答えた。
「私がそれを頂くと他者から羨ましがられます。妬まれます。妬まれれば殴られます。ですからいりません」
何て事だろう。
フィリアは、まだ十歳なのに人からこんな風に思うなんて。
「安心なさい。そんな人はここにはいないし、私が絶対にそんな事させません」
「ご主人様。どんなに偉い人が注意しても、人は隠れて殴るものです。なぜなら、人は他人を虐める事が大好きだからです。理由が出来れば、人は虐めをするんです」
確かに、私も追放される前は虐められたから、人間の嫌な部分はよく分かっているつもりだ。
だけど、この子の年でそこまで追い詰められるなんて……
「ですが……」
「お母様。大丈夫です。フィリア、欲しいって思ったら、いつでも言ってね」
「かしこまりました」
こうして、フィリアと私の娘ミリアとの出会いは終わった。
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