2.生まれ故郷の孤児院を訪問した私は、虐待されボロボロになった少女と出会う。彼女は私の姪っ子でした。
それから月日は流れ……
私は今、外交で生まれ故郷のリーン王国に帰って来ています。
結婚してから初の帰国だから、結構緊張したけど。
とは言え、仕事はもう終わり。
今、私はリーン王国の王都にある、国営の孤児院に来ている。
ここで子供達と交流した後、帰国する予定だ。
事前に見た資料によると、子供の数は二十五人。
結構な数だ。
「はい、皆さん。今日はアルテリア王国の、アイナ王妃陛下が会いに来てくれました。皆、挨拶してね」
「はーい!」
院長の言葉に、子供達が元気に挨拶する。
「皆、初めまして。アイナ・アルテリアです。皆の名前、教えてくれるかなー?」
「わたし、ミーナ!」
「ばくはガイウス!」
……
子供達が次から次へと自己紹介する。
全員の名前を聞き終わった後……
「あれ?」
「アイナ様、どうかなさいましたか?」
「子供の人数ですが、二十四人でしたよね。確か資料では、二十五人でしたが」
「え、えーっと……それは…………そ、そう。感染する病気にかかったので隔離しているんです」
怪しい。
明らかに目が泳いでいる。
「嘘ですね」
「……も、申し訳ありません。ですが……これはその…………」
「連れて来なさい」
私は強い口調で言う。
「し、しかし……」
「連れて来なさい!そう言っているのです!」
「わ、分かりました……」
再度強い口調で言うと、ようやく了承してくれた。
「で、ですが。その、問題が起こる可能性がありまして……」
「もし問題が起きても、決してあなたを責めない事を約束しましょう」
「あ、ありがとうございます」
私の言葉を聞いた院長は駆け出し、数分後、一人の女の子を連れて来た。
「な……」
私は、思わず絶句した。
連れて来られた女の子は、痩せてボロボロだった。
この孤児院の子供は、確かに裕福ではない。
でも、きちんと食べているし、服だって直した後はあるけれどちゃんと着ている。
怪我している子供もいるけど、ちゃんと治療されている。
でも、この子は違う。
髪はボサボサで服はボロボロ。
体は痩せ細り、顔、そして服の隙間から見える体や足には痣がある。
さらに、左手は折れているのか、ブラーンと垂れ下がっている。
しかも、治療を受けているようにも見えない。
つまり、どこからどう見ても虐待されている。
「これはどういう事ですか!」
「これは……その…………理由がありまして」
「どういった理由ですか!子供を虐待していい理由などありません!」
「いえ、この子はその……」
「言いなさい!」
「じ……実は……その……この子は…………」
院長がなかなか口を割らないでいると、ボロボロの女の子が近づいてきた。
「き、危険です!」
「大丈夫よ」
院長の忠告を聞かず、私はその子に聞かづくと、目線を合わせる為にしゃがんで笑顔で話しかける。
「初めまして。私は、アイナ・アルテリアよ」
「アイナ……」
「そうよ。よろしくね」
「アルテリア王国の、王妃様?」
「ええ」
「この国の公爵令嬢だった人?」
「ええ、そうよ。よく知ってるわね」
私がそう肯定した瞬間、
「殺してやる!」
そう言って彼女は私に殴りかかって来た。
とは言え、所詮は傷だらけの子供。
殴られた私は大した痛みもなく、彼女はすぐに私の護衛騎士に取り押さえられた。
でも、そのあまりの気迫に、私は思わず倒れてお尻を打ってしまった。
「離せ!その女を殺してやる!殺してやるんだ!!」
彼女は取り押さえられてもまだ狂ったように絶叫している。
「王妃様、大丈夫ですか!?」
「ええ。ですが、あの子は一体……」
彼女を改めてじっくり見る。
彼女の眼は美しい金色で、ボサボサの髪はよく見ると愛らしいピンク色なのが分かる。
もし彼女の全身を綺麗に手入れすれば、それはそれは美しく愛らしい美少女になるだろう。
「ん?」
私は、彼女をどこかで見たような気がした。
どこだろう……
そう考えていると……
「離せ!その女が全部悪いんだ!その女のせいで私はこんな目にあっているんだ!!殺してやる!!!」
「わ、私のせい?」
思わず聞き返した。
この子に会った事もなければ、恨まれる覚えもないからだ。
でも、彼女の憎悪の目は、間違いなく私の方を見ている。
「そうだ!お前のせいでお父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも貴族じゃなくなった!飢えて死んだ!!こんな所で私が毎日殴られるのも、全部、ぜーんぶお前のせいだ!!殺してやる」
「!!!!」
私は、彼女の言葉を聞いて、思わず倒れこんでしまった。
ああ、何で気づかなかったんだろう。
この子は……
私を陥れた王子と義妹の子供だ。
前の話をちょっとだけ修正しました。
生まれ故郷の国名とか。
この後の話も書いてあるので、投稿を楽しみにしてください。